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ジョエルside

 ―平成二十四年春―


 北海道知床半島。

 人里離れた山頂に聳え立つ白亜の洋館。


 時刻は午後八時。


「ジョエル様、珍しいものを拾いましたよ」


「珍しいもの?セバスティ、お前は海辺へ降りてはくだらない物ばかり拾ってくる。いい加減ガラクタを拾うのはよせ」


 俺に仕えるセバスティは、俺と年齢はほぼ同じ、かれこれ何百年くらい生きただろうか……。

 

 それすら今となっては定かではない。


 ―この地に来たのは一年前の冬―


 ヨーロッパ、バルカン半島に住んでいた俺達は、十二世紀、吸血鬼狩りと称する民の手により、父や母、沢山の仲間達が人間に殺され、俺とセバスティは心臓に杭を打たれる瞬間、目の前が突如暗黒に包まれ気を失い、気が付いたらこの地に堕ちていた。


 神の悪戯か。

 悪魔の仕業か。

 時空を超えどうしてこの地に堕ちたのか、未だにわからない。


 俺達の住んでいた町や、人種とは明らかに異なる肌色と言語。


 髪の毛の色も瞳の色も異なる。魔術が使えるセバスティのお陰で、俺達はこの地の言葉を理解し、人里離れた山頂に洋館を建てた。


 一夜にして現れた洋館。

 だが、誰も怪しむことはない。セバスティの魔術で記憶すら、操っているのだから。


「何を拾って来た?また腐りかけた流木か?それとも洞窟に住む蝙蝠か?蝙蝠ならこの屋敷に何百匹と住み着いている。もういらないよ」


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