#21.5
輝夜たちが迷宮へ挑戦している頃。
黒岩陸斗は事件に巻き込まれていた。
「あれ? トイレに行って帰ってきたらみんないないんだけど」
キョロキョロと周りを見渡しても誰もいない。
「あれ? 黒岩先輩じゃないっすか! こんなところで偶然っすね! 一人っすか?」
「お、男鹿……」
陸斗の目の前に現れたのはかつて陸斗のファーストキスを奪った彼であった。
ガタイがよくて、陸斗の方が歳下に見えてしまうくらいだ。
「お、俺は他のやつと来てて……」
「え? でも誰もいないっすよ?」
「そ、それはだな……あ、あいつら迷子なんだよ!」
「えぇ……むしろ黒岩先輩が迷子っすよね? よっしゃ、俺一肌脱ぎますよ」
「ひっ」
一肌脱ぐという言葉に何故か怯える陸斗。
何故なら彼はガチホモ。言葉通りの意味であった時、陸斗の貞操は危険に晒されるのだ。
「いや、遠慮しておくよ!」
「そんな遠慮なんていらないっすよ! だって……俺と、先輩の仲じゃないっすか」
陸斗の背筋にぞわりとした悪寒が走る。
「黒岩先輩と園内まわって探しますっす。あの人っすよね? えっと逢坂先輩」
「お、おう。でも、大丈夫。携帯で呼び出すし!」
急いでスマホで輝夜に電話する。しかし、流れてくるのは……
『おかけになった電話番号は現在、電源が入っていないか、電波の届かないところにあるため……かかりません』
「ちくしょぉぉぉ!」
力いっぱい叫ぶ。そして、力いっぱい抱きとめられた。
「先輩! 俺がいるっす! 俺が先輩をちゃんと逢坂先輩のところに連れて行くっすよ!」
「うわぁぁぁぁ!」
「泣くほど嬉しいんですね! 任せてください!」
陸斗は泣いた。衆人監視の中でムキムキの後輩に抱きしめられたことに対してマジ泣きした。
「さぁ、行くっす」
「放せぇぇ! 俺は一人で大丈夫だぁ」
「放さないっすよ。任せてくだい。全部……俺に」
「ひぃっ!」
男鹿に軽々と担がれ、運ばれる陸斗。
「た、助けてくれ! 輝夜ぁぁぁ!」
「だから、ちゃんと逢坂先輩のところに連れていくって言ってるじゃないすか。えぇ、連れていきますとも。どれだけ時間がかかろうとも、ね」
黒岩陸斗は事件に巻き込まれていた。
被害者として。
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