#2

「という事で、俺が最近変だったのはゲームのせいというか……いや、悪いのは俺なんだからゲームは責めて欲しくないけど……とにかく心配かけさせてたみたいでごめん」


 翌日の昼休み、屋上前の踊り場に集まって謝罪会見をしていた。

 場には俺以外に、七家さん、和華、姫ちゃん、寧々音、そして呼んでもないのにオマケでやってきた陸斗がいる。

 ちなみに、謝ったのはいいが、実際に心配していたのは……。


「よ、よかったぁー。あんま心配させんなよ輝夜」


 と言った和華と、昨日の内に話をした七家さんだけだったようで、他のメンバーなんか、


「俺そもそも気が付きもしなかったわ」

「輝兄は年に二回くらいあぁなるから寧々は特に」

「私も寧々音に同じくです」


 残る三名はご覧の通りでした。

 まぁ、俺の謝罪というか、反省はいいとして、実は今回こういう感じで皆を集めたのには理由がある。

 それも、昨日七家さんと特訓をしていた時の事で、寧々音と姫ちゃんと話してみたいという要望があったのだ。

 丁度、寧々音の方も七家さんの事を知りたそうにしていたから丁度良いと思ってこんな場を設けた。


「いやぁ、右も左も女の子……しかも可愛い子ばっかでやばいなぁ。俺、輝夜と友達でいて初めて良かったと思ったかもしれねぇや」


 なんでこいついんの?


「あの……黒岩先輩……」

「どうしたの!? 名古さん!」

「空気が汚染されるので息しないでくれますか?」

「死ねと?」


 姫ちゃんの毒舌は今日も絶好調だなぁ。もっとしてやれ。


「うぅ、名古さんが俺をいじめるぅー。俺を慰めてくれ七家さん、山井さーん」

「「無理」」

「寧々音ちゃーん」

「寧々、今音ゲで忙しい」


 陸斗、相も変わらず哀れな奴……。


「輝夜ぁー」

「見境なしかお前は。仕方がねぇな」

「はっ! 輝夜、お前……」

「男鹿くん呼んでやるから慰めてもらえ」

「堪忍やぁー。お代官様それだけはどうかご承知をぉ」


 男鹿くんとは、陸斗の事が好きで、可愛い文字を書く、一年のである。

 彼によって先日、陸斗のファーストチッスは奪われてしまい、半トラウマ化しているらしい。

 まぁ、あれは正直俺も同情を禁じ得ない。しかし、今ではそれもネタとして扱っている辺りこいつのメンタルはなかなか計り知れないものがある。


「あ、そうだった」


 寧々音が思い出したとばかりにさっきまで音ゲーをしていた携帯を陸斗に向けて、パシャリと写真を撮った。


「寧々音ちゃん! 今俺を撮ったね。もしかして俺の事が……」

「男鹿くんが陸斗の真正面からの写真が欲しいと言っていたからな」

「…………」


 あ、陸斗が隅の方で塞ぎ込んだ。そのうち復活するだろうから放っておこう。


「うわぁ、本当に寧々音ちゃんモチモチー! 輝夜君から聞いてた通りだー」

「にゃむ、にゃめろぉ」


 視線を女子達に移すと、そこには桃源郷が広がっていた。

 七家さんが寧々音を後から抱きしめて、寧々音の柔らかくてよく伸びる頬をムニムニし始め、さらにその隣では、


「輝兄さんは中学の時に、当時寧々音の使っていたピンクの可愛いお弁当箱を間違って持って行き、それを慌てて私と寧々音の教室に持って来た事で約三ヶ月に渡ってショッキングピンク先輩と呼ばれていました」

「ぶふっ、そ、それで……」


 何故か姫ちゃんによる俺の黒歴史暴露が行われていた。うん、やめよ? 俺泣いちゃうよ?


 しかし、この空間はアレだ。男いらんやつだ。女の子の空間……何だかテンションが上がってきた。

 それはそれとして、やっぱり俺は場違いな気がして、隅で体育座りをする陸斗の隣に座る。


「んでよ、いつの間にかこんなハーレムを作っちゃった輝夜は一体どの娘を狙ってるんだ?」

「は?」


 突然何を言い出すのかと思えば、この馬鹿陸斗はハーレムなどと寝言を抜かしやがる。

 確かに一見ハーレムのように見える。しかし、寧々音は妹だし、姫ちゃんは寧々音LOVE。

 和華は確かに懐いてはいるが、それは今まで友達がいなかった反動で俺に依存しちゃってるだけだ。今回、七家さん達と仲良くなって、そのうち俺はお払い箱だろう。

 七家さんは……まず釣り合わん。それを言ったらこの中の誰とも釣り合わないんだけど。七家さんの場合、俺の願望だが、これからきっと力を付けてプロの声優として活躍していくと思う。今は成り行きで友達だけど、言ってる間に遠い存在になるだろう。

 そう、恋人が有名アイドルになって距離が離れてしまう某有名ADVのように。

 藤井、鳴海、伊藤の三大ADVヘタレ神共を俺は許さない。誠死ね。


 まぁ、なんだ。私怨のような物が混じったがとにかく有り得ないという事を伝えたかっただけだ。


「ないよ。ないない。前も言ったけど俺はエロゲで忙しい」

「まぁ、輝夜がいいなら俺は別に構わんが……モタモタしてっと……いや、やっぱりいいや」

「言いかけでやめんなよ」


 何を言い出そうとしたのかは何となく分かったが、モヤッとしたので陸斗の横腹を小突く。

 すると、陸斗も無言でやり返してきて……俺らは互いに小突き合いを……。


「「「「…………」」」」


 女子四名に見つめられてしまった。


 ――パシャパシャパシャパシャ


「あ、続けて?」

「連写すんな寧々音。つーか、撮るな」


 その数日後、物陰から男鹿くんが俺に嫉妬の視線を向けていたのは、ちょっとしたホラーだった。とりあえず寧々音にはお仕置きとして目の前で買ってきたねるねを食べるという拷問をしてやった。

 尚、涙目で謝ってきた模様。ちょっと罪悪感。




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