#21
「まぁ、落ち着け。それで、どうして三年生は確率が低いんだ?」
「あ、あぁ。それはだな。昨日と今日の朝、三年生の教室を巡回してきたからだ。もし、俺に恋した歳上可愛い系美少女がいたら何かしら反応があるはず。しかし目を皿にして探したが、それらしい反応は無かった」
それ、判断基準としては微妙過ぎない?
相手が感情を隠すのが上手い人だったらどうする気だよ。
つか、普通に気持ち悪いんだけど。隣に座る和華も顔をしかめている。
「これ、ちょっとクリーム少ない気がする」
全然関係なかった。というか、多分もう話聞いてないねこの人。
「とにかく、それでお前は新入生に的を絞ったと。一年の教室には行ったのか?」
「まだだ。実はこの時間に行くつもりだったんだが、輝夜に呼ばれたから今日は休む事にした。なんせ、三年の教室には行ったら凄い変な目で見られるんだ。この二日間、まじ辛くて」
本当にどうしようもないくらいに馬鹿だなこいつ。俺の周りって結構駄目なやつ多くない? これが類友というやつか? 誰が変なやつだコラ。
しかし、元気が無かった理由は分かった。馬鹿が馬鹿して馬鹿みたいに精神が削られたわけだ。
蓋を開けばいつも通りの結果だったわけですね。
ただ、一つ違うとすれば……こいつに本当に春が来そうという事くらいか。
こんな馬鹿を好きになるなんてよっぽど奇特な方なのだろう。是非ともそのご尊顔を俺も拝んでみたい。出来れば顔面偏差値が圏外な感じだったらなお良し。
「ふむ。じゃあちょっと手を貸してやろう」
「マジか!? 助かる!」
「うむ。その代わり……分かってるな?」
「おう、見つけられたらどのソフトでも買ってやる」
これは良い商談だ。陸斗に一目惚れした生徒を見つけたら、俺は興味の充足とエロゲのソフトが手に入り、陸斗には春がやって来る。
なんとウィン・ウィンの関係何でしょうか。すんばらすぃ!
「輝夜がやるならアタシも手伝ってやるよ。手紙の主を探すんだろ?」
「本当ですか山井さん!? はっ、実はこの手紙の主は実は山井さんだったというラノベ的落ちが!?」
「はっ? きめぇ」
「おふっ」
ナチュラルにぶっ殺しにいったな和華。残念な事に陸斗にはM属性は付与していないので、和華の鋭い蔑んだ目がクリティカルしたようだ。
俺もちょっとビビっちゃった。
「そうなってくると現地に協力者を作ろうか」
「現地の協力者?」
「うむ。ちょっと待ってな」
という事でワンタッチで寧々音の連絡先を出す。昔みたいにピッポッパッの時代じゃなくなって便利になったものだ。
まぁ、家の電話はまだ現役ピッポッパッだけどな。そのうち家電もこんな風になるのだろうか。
考えていると、寧々音が電話に出た。
「あ、寧々音? 俺。俺俺。違う。オレオレ詐欺じゃない。それは始業式の朝にやっただろうが。え? 新しい詐欺を考えた? ホモホモ詐欺? なにそれ汚い。え? 隣のクラスの男鹿君がホモ疑惑? 知らんがな(´・ω・`)」
そして、一連の会話が終了して……電話を切ると、二人と視線が合い……。
あ、呼び出すの忘れてた。
「という事で現地の協力者、寧々音と姫ちゃんに来てもらいました。ハイ拍手」
「うぇー」
「わー」
踊り場に馬鹿とポンコツの拍手が響く。そして、立ち上がった俺の隣には寧々音と姫ちゃんが立っていた。尚、姫ちゃんは姿勢正しいが、寧々音は携帯の画面に目を落としてゲームをしている。
寧々音は使えないけど、本命の姫ちゃんがやって来たので問題ない。
「まぁ、さっき説明した通り。陸斗を好きになったという稀有な人を見つけ出したいわけだけど。協力してくんない?」
「ふむ。つまり、こういう事ですね? 私達の手でその何者かに洗脳されているであろう少女を救いたいと」
「洗脳されてんの!? いや、違うけどまぁ、いいや」
もし、本当に勘違いだったら目を覚まさせてやるのもやぶさかではない。陸斗には悪いが未来ある女の子をこんな馬鹿に汚させてはいけないと思う。
「よくねぇよ! ちゃんと応援してくれって」
「ハイハイ。まぁ、とりあえず見つけるのが先だろ。で、寧々音と姫ちゃんは……」
「私は寧々音が手伝うなら」
「ふむ。ならば見つけ出した暁には魔法のカード主に三……いや五千円分用意して貰おうか?」
指五本を陸斗に向けてニタリと笑う寧々音。何とも悪い顔である。
「お前ら……マジで兄妹だよな」
「なんだ藪からスティックに」
「懐っ。いや、さっきソフト要求してきた時の輝夜の顔も今の寧々音ちゃんと同じ顔だったぞ」
嘘だっ! 俺はこんな悪い顔してない。してないはず……いや、してた?
確認の為に和華を見ると、コクっと頷いて肯定された。
「まぁ、大方の思考が同じ感じだからなぁ」
「ふふふっ、輝兄は我が半身。つまり、輝兄の冷凍庫の一番下に隠してあるアイスも寧々の物と言っても過言ではないという事。輝兄ありがとう。美味しく頂くよ」
「それ食ったら戸棚の奥に隠してあるねるねを練って食う」
「やぁだっ! ごめんなさぃー、ねるねを練られないと寧々は死んじゃぅぅ」
そう、練って食べる某お菓子は寧々音のライフラインと言っても過言ではない。金曜日の夜に練って食べないと寧々音は暴走を始める。一つの中毒である。
暴走と言っても可愛いもので、今みたいにちょっと幼児化するだけなのだが、時折泣き出すので本当に困ったものだ。それで、昔親父に頭殴られたし。ところで、寧々音がねるねを練って食べるって何だか早口言葉みたいじゃない?
「まぁ、冗談はさておき。寧々音達はできる範囲で情報を集めてくれ。俺の見解としては、もし一年だとすれば入学してすぐにラブレターを送れるような行動派と見ている。それに、直接言わないところから、内気だけどたまに行動が大胆みたいな感じの生徒を探してくれないか? 出来たら陸斗に脈がありそうなって条件も付け足しておく」
「ふむ。できる範囲でならわかった。寧々は輝兄と違って、ちゃんとクラスメイトとコミュニケーションをとっているので、だいじょうV」
それ、ほとんど姫ちゃんが間に入ってる気がするのはきっと間違ってはいない。
寧々音はまず自分から話しかけないが、何故か話しかけられる。しかし、その時、大体寧々音はゲームをしているので、塩対応をする。そこで姫ちゃんの出番だ。寧々音が嫌がらない程度に間を取り持って場を円滑に進める。
つまり姫ちゃんはハイスペックという事だな!
自分もそんなに他人と接するのが好きではないくせに寧々音の為に頑張ってくれている。あぁ、超いい子だ。寧々音を嫁に貰ってくれないかなぁ。
そんな思いを込めて姫ちゃんを見つめると、
「あ、輝兄さん。私の事あんまり見ないで下さい。孕みます」
「孕まねぇよ!?」
よく、その口の悪さで仲を取り持てるね! というか、もしかして口が悪くなるのは俺だけ? いや、陸斗にもそうだし、多分気心が許せる相手だけというべきだろう。多分、恐らく……。
「期限は一週間。来週の金曜までに見つけてやるぞ!」
「「「「おー!」」」」
こうして陸斗の恋を面白おかしく応援しよう隊は結成されたのである。
ネーミングセンス皆無とか言って草はやすな。
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