第1話 異質との遭遇
今朝の事件からちょうど8時間、どうやらぐっすり熟睡中だったようだ。
………………………………………?
………………………………………………………??
――どこだ、ここは。
――少なくとも自分の短い人生では見かけたこともない、
上質だが、材質のわからないベッド。
コスパの悪すぎる、燃料を直接入れて火をともすタイプの暖炉(我が地宙連盟では、宇宙環境保全を含めた、六法全書みたいな量の協定が結ばれている)。こんなの童話でしか見たことない。
古びた元貴族の洋館とも思うが、ここは火星だ。地球なら、こだわりの強い物好きな
富豪が金をかけて残したとも考えられるが、それはない。なぜなら、洋館と言われるような建物が、わざわざ火星に新しく建てられることなど、一部の例外を除き、あるはずがないのだから。
…どうでもいいが、ホワイトハウスを火星に建てるとかいう暴論が火星移住当時の大統領から言われたことを思い出し、例外と言えばあれか、と宇宙史の授業を思い出した。その政治家の信用はガタ落ちだったが、なんやかんやあってホワイトハウスはカルム第1地区にて現存している。
しかしふと見ると、何もなさすぎる。家具がない。ホコリもない。思い入れもない。住んでいた(いる)人の温もりもない。色もない。真っ白…ではない。色がないのだ。だから清潔なわけではない。
不思議な壁で、見てると頭がおかしくなってくる。まるで新品の牢屋みたい。
……落ち着いて、情報を取り入れろ。
…下から音が聞こえてくる。
ここは2階以上か、地下があるのか。単純に考えて、ここがセナたちを連れ去ったやつらの拠点だとするなら、こういう場所の地下は多分いろんなヒミツがあって、防音対策をするもんだと、ミステリー小説とかの経験から
推測した。
……暖炉は屋根につながってるはず。それは探知で範囲ギリギリを見たのでわかっている。てことは、2階建ての地下込み計3階以上か…。
――下から聞こえてくるのは…子供の声?
自分と同じように、捕えられているのか…。自分の能力は危険ではないと見なされたのか…。
ふぅ…とりあえずこの部屋から出よう。
『探知』開始。
透視と超音波を使い、出口を探る。反応した場所を押すと、カラクリ扉のように開く。見回しても、気配はない。
――まあ、気配なんて読んでみた試しがないが。
とりあえず館内地図があったので、階段を探す。この奥を右に曲がり、さらに左折した場所だ。衝撃吸収機能付きシューズの出力をマックスにして、足音を立てないように移動する。曲がり角では『探知』をフル作動させ、安全を確認し、曲がる。
あった。
多分、この扉の先なのだが……ノブが壊れていて、開けようとしたら音を立てかね
ない。警備は……階段の下に一人だけ。できるだけ後退し助走をつけ、できるだけ物を
持ってドアにドロップキックする。
(――運動エネルギーは…質量×速さって習ったもんね!)
ドアを破壊し突き破り、そのままの勢いで下にいる警備員らしき人にキックをかます。
脇腹と顔の側面にクリティカルヒット!大きく吹き飛び、確実に気絶させる。関係ない
人だったら、ゴメンナサイ。多少(かなり)大きい音を立ててしまったが、ま…問題な
いでしょ。
姿勢を低め、気配を消す。
やはりセナがいて、思わず声をあげそうになった。
実験台の様なところに寝かされている…?
不気味な雰囲気だ。
今の時刻はわからないが、「あの事件」にいた奴らと似ている。
肌が…、青みがかっている…?
兎に角、あちら側に探知系の能力保持者がいたらいずれ察知されてしまうので、早めに移動しなければ。
透視で壁の向こうを除いても、監視カメラらしきものは飛んでいない。
探知しても、擬態系のカメラや「人は」いないし…、 地面すれすれで地面と平行に、さっき倒した奴の持っていた缶を投げる。
地面に落ちて音がしたら、そこに注意が惹かれる。そこで敵のところに切り込み、これまた盗んだビーム警棒(ビームの刃が出る伸縮警棒)とスタンガン(拳銃型で発射されるビームに当たると麻痺するまさにスタンガン)
で敵を一気に3人処理する。その隙にベッドのロックを外し、セナを救出する。
そして、「加速」で逃げ切った。…はずだった。
出口には大量の敵と、捕らわれたマシュとラピがいた。
「さすがに、ここまでか…。」
襲い掛かる絶望。
確実に、少し喜びが溢れた。でも、子供の力で何とかできる敵ではなかった。
ぬか喜びさせられた。踊らされた。
そんなことはわかっていた。でも、絶望せずにはいられない。
そんな時、見計らったかのように、金色の彗星が舞い降りる。
まただ。また、私たちを助けてくれた。
そして、敵とともに金色の光は消えた。
一同「ただの………竹?」
本当は、今すぐにでも抱き合い、時間をかみしめ、祝福をしたかった。
でも、この何の変哲もない「ただの竹」への興味のほうが勝ってしまった。
「やあ!元気?じゃないよねぇ?そんなことはどうでもいいの、僕と一緒にいっちょ世界救わない!?」
「しゃぁぁっぁっぁぁああべぇったああああ!!?」
喋った。
声にならない声が出る。さらに、胡散臭いことを言い始めた。
でも、ラピの言葉で正気に戻る。
「それ…、どういうことか、詳しく聞かせてくれない?」
きっと、「嘘」の感情ではないと、読み取ったのだろう。
竹に感情なんて聞いたことがないが、喋ることもできるのであればそりゃああるんだろう。
「うん、話が早くていいね、君は利口な子だ。そんなことはどうでもいいの、今、世界は大変なことになっている。宇宙大戦以降の、いわば第5次世界大戦が起こるだろうね。」
「……!」
「それ、本当!?…、ううん、本当なんだよね。じゃあ、まず君の名前を聞こうかな。」
「うん、僕の名前はね…」
そしてキュラたち一行は謎の竹(?)を仲間に加えた。
これから何か大きなことに巻き込まれるだろうというのは、もうわかっていた。第1陣完
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