第20話 参画メンバーは誰でしょう

「みんな、お久しぶりね」

「お久しぶりです、桜佳先生!」


 口々に明るい声で挨拶する、コアメンバーの隊長3匹。プロジェクトの中心メンバーがいつもの大部屋に集まって、これから計画を練っていく。


 曇天で日は全然見えないけど、やる気が熱量に変わり、この部屋の中は暑かった。

 いや違うな、イフリートのせいか?


「プロジェクトの概要は今説明した通りよ。これから更に、攻勢プロジェクトの開始に向けて話し合いを進めていきましょう」

「はーい!」


「なんだお前達、オーカと会うのがそんなに嬉しいのか」

 楽しそうに返事する3匹に魔王様が訊くと、イフリートのアングリフが答えた。


「ええ、なんたって綺麗ですからね。色気もありますし。これはもうお熱ってやつです、イフリートだけに」

「色んなパターンあるんだな、そのイフリートギャグ……」

 感心半分、呆れ半分の魔王様。俺も同じこと思いました。



「魔王様、俺ぁこの先生の色気とかはよく分かりませんがね」

 ドワーフのアルムが先生に視線を投げる。


「酒が好きってことですから、まあ酒が好きな女は大体綺麗ですよ」

「何その雑な判断基準!」

 テキトーに綺麗扱いされた桜佳がツッコんだ。



「リバイズ、リバイズ!」

「なんだよ、ファンユ」

 防御部隊隊長のコカトリスが頻りに羽を羽ばたかせる。


「他の2人と一緒にしないでくれ。俺は本気で桜佳先生が好きなんだ。彼女のためなら俺は隊長を辞めてもいい」

「分かった分かった。うんうん、すごい覚悟だな」

「でも小隊長くらいには留まりたい」

「覚悟の程度が!」

 もう会議始めるぞ!




「まずは、このケーカク攻勢プロジェクトに参画するメンバーを決めるわ。要は、どのくらいモンスターを投入するかってことね」


 大きな木製のテーブルを全員で囲み、桜佳の話をメモする。ファンユは短い足で、器用に椅子に座っていた。


「まず、今回のケーカク攻勢、帝国軍は全員で戦うわけじゃないわよね?」

 それを聞いた魔王様は、苦笑いしながら首を横に振った。


「いやいや、何を言ってるんだオーカ。全力で臨むんだぞ、全員参加に決まってるだろう。なあ、リバイズ?」

「いや、魔王様。全員が参加してしまうと、万が一その間に他国から攻撃を受けたらすぐに壊滅してしまいますが……」

「うん、そうだな。オーカ、全員で戦うなんてことはしない」

「変わり身が早い!」

 余りにもスムーズな手のひら返し。



「リバイズの言うとおりね。バータリ帝国自体が手薄になり過ぎないようにはしたいわ。そうすると何割くらいが良いのかしら? ファンユ、どうかな?」

「そうですね……もう世界には俺と桜佳先生だけいればい――」

「アングリフはどう?」

 華麗にスルーする。みんなファンユの扱い方マスターしてきたな。


「そうだな……ざっくり、攻撃・防御・調達それぞれ50匹ずつ入れば、大抵の国からの強襲にはしばらく持ちこたえられると思う。多少でも時間が稼げれば、ケーカクを攻めてるヤツらが戻ってこれるからな」

「帝国軍は全体で約500匹だから、全体の3割は待機要員ってことね。他のみんなも、同じような感覚かしら? 7割でケーカクを攻めて、3割は非常事態に備える」


 全員が無言で頷く中、ファンユが「ちょっといいか?」と挙手した。


「先生、防御部隊の仕事って、緊急避難場所作ったり防壁直したり、ケーカクのためだけじゃないものも多いんだ。だから綺麗に『ケーカク攻勢のメンバー』と『待機のメンバー』って分けて仕事を振るのが難しいんだけど、どうすればいいんだ?」


 確かに。武器の鍛造とかなら、ケーカク攻撃用の武器とそれ以外の予備の武器、とかで担当分けたりできるもんな。


 桜佳はその質問に口を結んで笑った。鋭い質問だと感じたのだろう。


「そういう仕事はプロジェクト関係無しに全員でやればいいわよ。ケーカク攻勢に関する仕事だけ参画メンバーが担当するとか、そういう風に調整すればいいだけだから」


 分かったよ、と礼を言うファンユ。そうか、あくまで役割上の区分ってだけなんだな。


「で、桜佳先生よ、その7割ってのはどうやって選ぶんだ?」

「基本的には隊長にお任せするわ。だからアルムが決めても構わない。ただ、小隊の1匹1匹まで分からないこともあると思うの。そういうときは小隊長に協力してもらって。能力とか本人の希望も参考にするといいわ」

「なるほど、分かった」


 そうだよな、隊長じゃ細かい能力や適性まで分からないこともあるもんな。


「それじゃあ、次に招集するときまでに攻勢への参画メンバーを決めておいてね。今日はもう終わりだけど、何か質問あるかしら?」

 すかさず手を挙げるアングリフ。


「今日は桜佳先生を囲んで帝国酒を飲みたい」

 その意見に、ファンユとアルムが「よく言った!」と拍手する。



「そっか、でも今日はそんなに体調良くないから、もう寝ちゃおうと――」

「自分、イフリートなんですぐ熱燗作れます」

「まあ酒は百薬の長って言うからね」

「変わり身が早い!」

 魔王様に負けず劣らずだ!





  

【今回のポイント】

■参画メンバーの決定と専任・兼任

 中心メンバーが決まったら、次はいよいよプロジェクトに参画するメンバーを決めます。本人の能力や希望、育成といった観点から、必要な人材を選んでいきましょう。


 規模が大きい場合、中心メンバーも全員の能力を把握しているわけではないので、関連する部門の部課長に選んでもらうという方法も考えられます。



 メンバー決定における大きなポイントとして、専任なのか、本業と兼任なのか、という点が挙げられます。専任である場合、そのプロジェクトに専念できますが、その人(大抵は優秀な方です)が抜けた部門のパフォーマンスが落ちるリスクがあります。一方、本業と兼任であればそうした心配はないものの、本業もプロジェクトも中途半端になってしまうこともしばしばです。



 一般的には兼業のスタイルが多いですが、「週1回」「週3回の午前中」など、参画の割合や時間をきちんと定義しておき、業務の配分を明確にしましょう。


 また、。「プロジェクトに参加してるから、本業は他の社員に比べて成果が少なかった」などと評価を下げてしまうと、本人のやる気も下がってしまいます。

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