第4話『彼女は笑顔で俺のスカートをまくり上げた』

 女性達に囲まれてしまい生きた心地のしない俺。

 何気なく集団の外へ手を突き出した所、青髪の少女がそれを強く引っ張った。

 彼女について行った先は俺が気になっていたマンホールの中。

 彼女は丁寧な口調でチシロと名乗った。


「チシロ……ちゃん?」


 俺がそう呼ぶと、チシロと名乗る少女はたちまち頬を赤らめる。

 更にはそれを手で隠しクネクネと身をよじり始めた。


「そんなぁ! チシロ『ちゃん』だなんて! わたくしなんか呼び捨てで……いいえ!

 いっそ名前すら使わず『お前』などど粗雑に呼んでくだされば良いのです!

 むしろそれこそが本望! 本望なのですっ!」

「あのー……」

「叩いてください! わたくしめを言葉で叩いてくださいましっ!

 むしろ手でも! 棒や鞭でも結構です!

 なんでもお好きな物でどうぞわたくしめを叩いてくださいましっ!

 それこそが本望!」


 ダメだ、完全に自分の世界に入ってしまっている。

 垂れ流しの妄想から察するに、この少女チシロはマゾなのか。

 異世界だとこんな分かりやすいマゾヒストも居たりするんだな。


「……ちょっと良いかな?」

「はいぃ!」


 チシロが俺を見てピタッと停止した。

 真珠のような眼をキラキラと輝かせ、唇からはヨダレが垂れている。

 走っててたせいもあるんだろうけど息も荒い。


「その、色々と説明してほしいんだけど……」

「わたくしめの性感帯についてですか!?」

「そうじゃなくて。

 ここはどこなのかとか、君はどうして俺を連れ込んだのかとか……」

「強めにつねったり叩いたりしていただければどこでも「だからそうじゃなくて」


 俺に遮られたチシロは泣き顔になり、自身の指を咥えている。


「そっちですね? 焦らす方針なのですね?」

「一旦SMから離れて。

 ここはどこで、君はどういった理由で俺をここに連れ込んだの?」

「……ああ、興奮のあまりすっかり忘れておりました。

 わたくしはあなた様をお助けに参ったのです」

「俺を……助ける?」

「はい。

 まずはわたくしめについて来てくださいまし」


 そう言ってチシロは歩き出した。

 彼女の後を追って進むと、ここが単なる穴の中ではないと分かる。

 土がむき出しの部分も多いがちゃんと木材で補強されていたり、

通路の所々にランプと思しき照明器具が設置されていた。


「ここはイサファガの地下空間にございます。

 人が住めるよう十二分に整備されておりまして、

住民にとっては地上よりむしろこちらが本命なのです」

「なるほど……」


 それで地上の町並みがやたら貧相だったり、人通りが少なかったりしたのか。


「所でAA様。

 お名前はシツ様でお間違えありませんか?」

「シツで合ってるよ」

「承知しました、シツ様」


 様付けされるとなんだかむず痒いな。

 チシロはバリバリの敬語丁寧語だけれど、メイド喫茶もこんな感じなんだろうか。


 やがて、チシロはある扉の前で立ち止まった。

 ボロボロの服の下から鍵を取り出して解錠し中へ入る。

 彼女が内側から手招きし「どうぞこちらへ」と言うので、俺は従った。


「ここは……?」


 部屋を見渡すと、所狭しと積み重ねられた大小様々な木箱、無地の布に包まれた何か、

綺麗な断面の木材などなどが見受けられる。


「宝物庫……と呼ぶのは大袈裟ですが、まあ概ねそのような場所でございます」

「へえ。

 ここで何をするの?」

「しばしお待ちを」


 チシロは腰を折り、木箱と木箱の間に体を突っ込んで何かを探っている。

 彼女の着ているボロボロの服は丈が短く、

前屈姿勢のせいもあって白いショーツがモロ見えになってしまっていた。

 俺は咄嗟に顔を覆い眼をそらす。


「……ふうっ。

 おや、シツ様いかがなさいました?」

「えっ? いや、なんでもないよ。

 それは何?」

「これですか?」


 チシロが持っている透明な瓶を指差した。

 瓶の先端がやけに膨らんでいるのが気になるが、

世界が違うんだから物の形のみならず色々と違っていて当然だろう。

 瓶の中には無色透明の液体が満ちている。


「これは植物の朝露を集めた天然水にございます。

 シツ様に限らずAAの皆様にはこれを飲んでいただく。

 そう決められているのです」

「そうなんだ、初耳だなぁ。

 女王は言ってなかったけど……」

「ささ、どうぞ一気に」


 チシロが瓶を押し付けてくる。

 片手に丁度フィットするサイズのそれを、俺は止むを得ず受け取った。

 が、どうやって開ければいいのか分からない。


「先端の膨らんだ部分を右に回してくださいまし」

「こうかな……あ、取れた」

「流石シツ様、お上手でございます!」


 チシロはウフフと微笑みながら蓋を取り上げた。

 朝露と言うだけあって匂いもほとんど感じない。

 ほんのちょっとだけ青臭い気がするけど、まあ植物由来だからだろう。


「えっと、じゃあいただきます……」

「はい、是非とも一気に!」


 クイっと瓶を傾けた。

 無色透明無味、ほぼ無臭の朝露が俺の喉へと流れ込む。

 思っていたよりも体が水分を欲していたのか、すぐに飲み干してしまった。


「……ごちそう様でした」

「お見事な飲みっぷり。

 これで後は……わたくしの思うがままでございますね」

「何の事……あれ?」


 心臓がおかしい。

 これはメツェンさんに恋をした時と全然違う。

 妙に血行が良くなってる。

 気分がボオッとしてきた。

 立ちくらみまで。


「何だ……?」


 体調の急変に戸惑っていると、背後で『ガチャリ』と音がした。

 目の前にチシロがいない。

 じゃあ後ろか。


「シツ様、大変失礼ながらこのチシロ……あなた様を騙してしまいました。

 シツ様が飲み干したのは朝露などではございません。

 イキリダケエキス、それも原液なのです」


「イキリダケ……?」


 女王も言ってた。

 特産品、精力増強剤だって。


「ほら、もうこんなに硬くなって……」

「ぴゃあ!?」


 突然の刺激に、俺は演技であってもあり得ないような情けない悲鳴を上げてしまう。

 背後のチシロが俺のスカートに手を入れ、両手で股間に触れてきたのだ。


「ほらほら、シツ様はこれをどうしたいですか?」

「あっ、あの、あの……」


 妙に慣れた手付きで股間を弄るチシロ。

 俺は挙手とも喘ぎとも付かない声を連発する。

 下の方から声がしたのは、彼女がしゃがんでいるからか。


「少量を水で割って飲むだけでも効果テキメン。

 そんなイキリダケエキスを原液で飲み干したのですよ?

 所でわたくしめはオンナなのですが、シツ様は何かお考えではありませんか?」


「チシロ……一体何を……うっ!」


 遂にチシロは俺のショーツを下ろし、直接息子を握ってしまった。

 自分でする時よりもずっと大きくギンギンに膨張した息子に、

彼女の細い指が弱く食い込んでいる。

 動かしてほしい、その手を。

 本能がそう囁いているが、恥ずかしくてとても言葉には出せなかった。


「シツ様、正直になられては?たとえ獣の餌がごとく貪られるとしても、

わたくしめは元より覚悟の上。

 むしろ本望なのですから」


「でも……っ」


 くすぐるような加減された快楽に体を震わせつつ、俺は必死に声を絞り出した。

 するとチシロは両手をそのままに立ち上がり、俺の耳元にフーッと息を吹きかける。

 悪寒と快感が入り混じった未知の感覚。

 ゾクゾクする。


「1つだけお約束をしてくださいシツ様。

 たった1つだけです。

 それだけで、わたくしめは他の全てをあなた様に捧げましょう」


 約束?何だろう。


「あっ!」


 チシロが俺の右耳に優しく噛み付いた。

 十分に湿った唇が耳を挟んでヌルヌルと前後し、

時折クチュクチュといやらしい水音を立てている。

 右耳だけではない。

 俺の思考そのものが彼女に犯されていた。


「男性のAAだからと言って、

あのようにただ子を成すためだけの目的で、

多数の女性方に迫られては面倒でございましょう?

 実際シツ様は戸惑われておられましたよね?

 ですから、シツ様のこの劣情……わたくしめが全て受け止めて差し上げます」


 チシロは耳元で囁き続ける。

 右手の指を息子の先端に這わせ、左手で俺の左胸を触った。

不覚にも膨らんでしまっている乳首を服越しに探り当てられ、

 爪の先でカリカリと刺激してくる。


「繰り返しますが、わたくしめの心配など全くもって無用。

 すでに経験済みですし、それにわたくし……乱暴にされる方が好きなんです。

 むしろ……きゃっ!」


 限界だ。

 俺はグルリと反転し背後のチシロを組み倒した。

 小さな両手をこちらの両手で木の床に押さえ付ける。

 彼女は……笑顔で俺のスカートをまくり上げた。


「ようやくその気になってくださいましたね、シツ様。

 チシロは嬉しゅうございます。

 ですがお約束を……あっ!?」


 チシロと互いの秘部を重ね合わせ、体を前後させる。

 本能だ。

 これは動物としての人間の本能。


「ダメですシツ様! そこだけは!」


 抗えない。

 チシロが悪いんだ。

 俺を騙して変な物を飲ませたチシロが悪いんだ。


「シツ様! おやめください!」


 抗えない。

 チシロのショーツがもうベトベトになっている。


「シツ様! シツ様!」


 チシロが何度名を叫んでも、俺は本能に抗えない。

 そのうちチシロは口を閉ざしてしまう。

 俺は前後の運動を続けた。


「……そこはやめろっつってんだろ!」

「ぐへ!」


 突如凶暴化したチシロ。

 彼女の鉄拳制裁を頬に食らい、俺は正気に戻った。

 と思ったら今度は俺が彼女に押し倒された。

 えっ?なんで?

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