フレンズ
【ジャパリパーク・サファリ空港】園内線旅客ターミナル あくしま行きゲート前
ガヤガヤと人が行きかう出発ロビーの一角。その一角は『改装中のため園内線は現在閉鎖しております。 皆様にはご迷惑をおかけします。セントラルパーク外の他のエリア行かれる場合は園外線のFー11番、Fー12番のゲートをご利用ください』とジャパリパークのマスコット『スタービースト』が申し訳なさそうに「ゴメンね」と謝罪しているポスターが貼られたパネルで封鎖されている。島外から―日本以外にも海外からも来ている―客達がその前を歩き去っていく。
そのパネルの内側には椅子やソファ、小さめのバーカウンターにも似た喫茶店、キオスク、お土産売り場など小さい商店が並んではいるものの客の姿、店員の姿はなく、それどころか商品も並んではいない。シャッターにクローズの札がかけられているものばかりだ。電気まで消灯され、ここは使用されていないと否応なく思い知らされる。パネルの外からやってくるホコリをまた外に戻さないよう、片隅でコツコツと壁にぶつかりながら地べたを清掃している簡素な姿の掃除用ロボットだけが動いている姿が余計にパネルの内側の世界を寒々しいものにしている。
このまま朽ち果てるの待つような殺風景な光景の中、飛行機の発着時間を伝えるモニターに電源が着く。
『園内線 あくしま行き ゲートA-1 出発時刻 9:21 』
内容が表示される。それと同時に空港内の園内線と園外線を隔てているパネルのうちの一つがひっくり返り、ピンクのヌイグルミ…ラッキービーストⅢ型が愛嬌のある足音をさせて朽ち行く施設に滑り込む。だが、掃除用ロボットに『仲間』と認識されなかったのか、ゴツゴツと体当たりをされ排除されようとしている。Ⅲ型は最初こそ意にも介さなかったが、自分に体当たりを仕掛ける掃除用ロボットが5体に増えると、さすがに性能の差があれど分が悪いと判断したのか、目を緑色に点滅させ、掃除用ロボットに指示を出し解散させる。ラッキービーストⅢ型を『上司』と認識し業務を再開させる掃除用ロボットたちを見送ると、Ⅲ型は自分が今入ってきた入口を見返す。
すると、パネルからドヤドヤとヒトが入り込んでくる。Ⅲ型は通行の妨げにならないようにそっと壁によった。
「では皆さん、おはようございます! 本日はあくしま行き調査ツアーにご参加いただきありがとうございます。また、夜行性の方が多い中、朝早くからお集まりくださり、ありがとうございました」
「待って、待って。ミライさん。いきなり説明もなしに私たちを集めてガイドしないで」
赤色と青色の鮮やかな羽根飾りが1対付いているサファリハットをかぶっている翡翠の髪をした女性、ミライが何人かの5人の少女たちに抗議される。
いの一番に飛びかかったのは金茶のボブカットの少女。大きな三角の耳や短く太めの尻尾、前髪に染めたわけでもなくついている斑点が丁度密集してアルファベットの『M』の字に見える。ヒョウ柄に似た斑点のついたスカートやリボンから察するにおそらく野生に生きるネコ科のフレンズなのだろう。ヒョウ柄ではあるものの不思議と豹ほどには大きな猛獣には見えないのは、当人からにじみ出る毒気の無さのせいだろうか。よく言えば親しみやすい。悪く言えばチョロそう。
「そうよ、ガイドさん。サーバルの言う通り、私たち昨日いきなり『明日の朝から長期間の調査に付き合ってください!お願いします! 【報酬として特別な厳選ジャパまんを一か月分用意するので!】』って呼ばれて詳しい話何も聞いてないんだから」
「報酬は…のあたりは何も言っていないのですが、それでしたら調査後でよろしければ2か月分でも3か月分でもそれ相応のジャパリコインでも用意しますよ。今回はそれぐらい切羽詰まっている事情が絡んでるので…」
「えっ本当に⁉ 言ってみるものね…」
「やったあ!じゃあお買い物もし放題ってこと⁉」
「カラカル…逆に不安にならない? それだけの好待遇で私たち何をさせられるんだろう?って」
「わたくしは先に少しだけ事情を聴いてるので、そこまでひどいことにはならないと思いますが…それでも詳しい話が聞きたいのはおなじですわ」
「え、集められた理由、シロサイは知ってるの⁉ ずるい!」
「ズルいと言われましても…」
カラカルと呼ばれた、勝気な顔をした外ハネのショートの赤毛に黒い房飾りのある猫耳が特徴的な少女が長くすらりとした猫の尻尾をくねらせながら言い返す。
「大丈夫よ、トキ。園長がいないんだから、そこまですごい無茶な要求はされないわよ。少なくとも、大人数でも勝てないようなセルリアンと戦うようなことはないんじゃない?」
「それも含めて調査することになりそうなんです。詳しい話は飛行機の中でいいでしょうか。園内線近くにご利用するお客様は来ないとは言え、通らないとは言えないので…。お客様にはまだお知らせできない内容でもあるんです」
「え、頭を使うような難しいこと言われてもできるかどうかわからないよ…?」
「ふっふーん、ルルは結構自信あるよ! 最近改装された遺跡型迷宮アトラクション『パラティウム』を脱出成功したからね!」
「それってラビラビと一緒だったからでしょ。一人でクリアできる~?」
意地悪そうに笑うカラカルの言葉に少女はひるむ。ルルと呼ばれた少女の見た目がろうそく耳を持っていることと二本角のように髪の毛が立っているのでおそらく草食獣のフレンズであることが推測できる。髪に走る模様と色からなにがしかのガゼルのフレンズだろうか。
「うっ…一人だったらちょっと自信ないかも…トキ、手伝ってくれる?」
「それはいいのだけれど、何故、まっさきに私に?」
「えっ? えへへぇ、その、あのー、このメンバーだったら…トキかなぁって…」
「う、なんか言い返したいけど…私もこのメンバーだったらトキ選ぶから何にも言えにゃい」
「うーん、というか他に頭脳面で頼れるメンバーが少なすぎるのよ」
「私としては頭脳より歌唱力で選ばれたいのだけれど」
「それはちょっと…」
「いつかの機会に…わたしのいないときにでも…」
一時的にトキと呼ばれた白い髪の少女に注目が集まる。他の少女たちと違い耳に当たる部分には朱鷺色の鳥のような羽が立っている。時折、羽ばたくように揺れ動く様子が見て取れる。袖口の大きな白いブラウスに赤いプリーツスカートとタイツ。髪にもサイドに一房づつ緋色の髪が揺れている。
紅白の中に金色の目が印象的な少女だ。今は、頭脳よりも評価されたい歌唱力がやんわりと拒絶された悲しみにやや目がうつろ気味だ。いつものことである。
「頭脳面で頼れる…で思い出しましたわ。ギンギツネ様はいらっしゃらないのですか? 話を聞いたときはメンバー内に含まれているように話しておられましたが?」
「そうなの、ミライさん?」
「ええ、その予定だったんですが、昨日、突然のことだったので、私もそのことに関しては大筋しか聞いていなくてちゃんと説明できるかどうか…いえ、説明して見せます。私はパークガイドですからね! どんなことでも調査し解説することが私の使命! 皆さんにもわかりやすく解説して見せます!」
「説明と解説は違うのでは?」
ウェーブのかかったプラチナブロンドを高く結い上げた鎧を着た少女。その姿はさながら女騎士のようであるが、これもサンドスターがその獣の生態をフレンズ化して特性を反映させたからである。サンドスターは特性を映し出すことはあっても時代を合わせると言う配慮はないようだ。中世の騎士鎧が空港のロビーに思いきり浮いている。だがそれもジャパリパークの日常と言われてしまうと何故だか納得してしまうものがあった。現代に現れた中世の女けもの騎士シロサイはミライを呆れたように見つめる。
「はい。それでは、本日の説明させていただきます。今日はこれから、あくしまを目指し、飛行機に搭乗します。機長とガイドは私、ミライが務めさせていただきます。副機長としてラッキービーストⅢ型が搭乗することになっているので、私がついついサーバルさん達のお耳や尻尾に夢中になっていてもフォローしてくれることになっているのでご安心ください」
「オ任セクダサイ」
「ガイドさん、それつかみのギャグのつもりなんだろうけど、シャレになってないから」
「全然笑えないよぉ」
「いざとなったら、トキ様、頼めますか?」
「飛行機一機はちょっと難しいわ」
つかみのギャグで不安にさらされる中、サーバルは桃色のヌイグルミに興味を示す。
「私、Ⅲ型初めて見たよ」
「いつもサーバルさんは外で元気いっぱいに遊ぶかゲームに熱中してますから。この子は屋内作業を主としてるので、外ではあまり見ることができない型なんですよ」
「へー」
サーバルがまじまじと観察しておると羽のついたピンク色のラッキービーストの目が緑色に点滅する。
「機体整備終了。園内線搭乗ゲートA-1前ニテ待機中。コレヨリ皆様ノ搭乗案内ヲサセテイタダキマス」
【ジャパリパーク・サファリ空港】園内線あくしま行き旅客機内
水陸両用飛行艇と言うパイロットが乗るには少しの戸惑いが覚えそうな機体ではあったが、ミライは飛行機の操縦で一番に難しいと言われる離着陸の離陸を難なく済ませ、機体を安定させると傍に控えていた桃色のぬいぐるみに後を任せて、客席の方へ歩いていく。
「では、皆さんには本日の予定…ではなく目的を説明させていただきます」
「はーい!」
飛行機の乗り込んだ少女たちが元気よく返事をする。手には乗り込んだ際にⅢ型が配ったキャンディのようなものとジュースを手にしている。
「うわ、みんなコレ食べない方がいいよ。すっごい口の中ピリピリしてニガニガするー」
「それ言うの遅いよー」
「サーバル、私の分のキャンディいる?」
「なんでお口ニガニガしてるって言ったばっかりの私に言うの…?」
「じゃあ私は遠慮しとこうかしら、のどを悪くしてもいけないし」
「わたくしは…」
「いいえ、皆さん。それは絶対に飲んでいてください。というのも現在のあくしまにはそれを飲まずに行くことはとても危険なことで、下手をすれば死につながる恐れもあります。とりあえず口の中にあるそれはジュースで流し込んで飲み込んでしまってください。飲んだら、そのスッゴイおいしくないキャンディのようなものの必要性も併せて説明させていただきます」
もとよりキャンディもどきにより苦虫を噛み潰したような顔をしてたフレンズ達は、ミライのその真剣な表情に気おされるように頭の耳を後ろに倒した。
「本日、あくしまに行くのは、あくしまの封鎖を解き大体的に開放するために調査をした所、あくしまにいるフレンズ達の間で病気が流行っている事が分かったからです。今回、私たちの目的はその病気の原因を突き止め、治療、予防、再発防止、場合によっては看病をすることです」
「えっあくしまの封鎖なくなるの!?」
「病気? 『やる気でない病』とか?」
「それって大変じゃない⁉」
「ええ、大変なんです。ですから今、ラッキーⅢ型が配っていたのはその薬の予防薬なんです。ですので、おいしくなくても絶対に飲んでください。さもないと…」
「さっさもないと…ど…どうなっちゃうの…?」
「溜めないでよぉ…余計怖くなっちゃうよぅ」
ひときわ声を低くするミライに恐れおののく、けものたち。
「風邪のような症状で苦しんだ挙句にニャーニャーグァーグァーブォーブォー言いながら暴れまわることになります」
「怖い! …怖い…? ん? なんか…そんな病気、前にもあったような…?」
「確か…うろ覚えだけど…サーバルが魚のエサになった時にそんなことがあったような」
「アレッそうだっけ? そんな流れだったっけ⁉」
「アンタ当事者だったのに忘れたの?」
「あー新参者だったルルに先輩風吹かそうとして失敗した時にそんなことがあったような…その時は園長のお守りの力でどうにか軽い症状になってたけど」
「でも、私、その時のこと悪い思い出じゃないのよね、ソレがきっかけでシロサイと知り合えたし」
「まあ私の勘違いだったのですけれども」
「でもその勘違いも無駄じゃなかったよね、こうしてこんな時にも集まれる友達になれたんだし!」
「ハイ、皆さんもお気づきのように、今回あくしまで流行っている病気は管理センターの見解では『新型ガオガオ病』ではないかと推測されています」
「『新型ガオガオ病』?」
4人は顔を見合わせる。中の一人のトキが代表して続きを尋ねる。
「ガイドさん。その『新型』と言うのは何かしら? それは私たちの知る『ガオガオ病』と何が違うのかしら?」
「そうですね…私もまだ聞いただけなので何とも言えないのですが、一言で言ってしまうとガオガオ病を質の悪い方向へパワーアップさせた感じでしょうか。前回の時に作成した治療薬がワクチン代わりになる事からガオガオ病が変異したものではないかと言われているのですが、これも憶測にすぎません。だからこそ管理センターは調査の必要を緊急に求められています。今回、調査依頼された皆さんは前回の『ガオガオ病』の流行の終息の立役者、つまり経験者だったから呼ばれたと言う事ですね」
「はいはーい!」
「何でしょう、ルルさん」
「前回の流行の立役者って、確かにルル達もお手伝いしたよ? でもワクチンを作ったのはギンギツネだし、園長のお守りがなかったり園長自身もいなかったら終わってなかったんじゃないかなあとルルは思うんだけど、なんで『今回』はギンギツネも園長もいないの?」
「それはですね、皆さんには秘密にしておきたかったのですが聞かれてしまった以上答えなければいけませんね! 実は現在、ジャパリパークには危機が二つ訪れています!」
「ええ、それ本当なの!?」
「危機って病気以外なんかあるの?!」
「ジャパリパークは大丈夫なんですの、ソレは初耳ですわ!?」
「一つは、今話した『新型ガオガオ病』です。こちらは私たちが管理センター側に解決を頼まれた問題です。本来なら園長さんもギンギツネさんもこちらに来る予定でした…しかし、いざあくしまに行くぞと言う時、待ったがかかってしまったのです。その時、新たに発生した問題………『大人の事情』です!」
「そっかー『大人の事情』なら仕方ないねー」
「『大人の事情』は厄介らしいものねー、私どんなものわからないけど」
「勿論、冗談ですが、詳しく解説すると難しいお話になってしまうので『お金でジャパリパークを買うとしたらジャパリパークのお値段っていくらなのか』『ジャパリパークにいるこが幸せになれるお金の使い方を模索していたら、ジャパリパークのお手伝いしてくれるって言ってる団体がいるけど、どんなことしてくれるんだろう? 嘘じゃないよね?』『その話し合いの代表として園長さんとオイナリ様とギンギツネさんが行くことになった』ぐらいに考えてくれるとよろしいかと」
「つまり経済戦争に巻き込まれたってことね」
「間違ってると言いたいような…合ってるとも言えるような…」
ミライは複雑な顔をして宙を見る。お金が絡む問題って説明がしにくいのが難ですよね。褒められた事ではないが、お金の問題だけならば支配人と事務や経理担当に丸投げで済んだが、今回はお金以外にも、ちょっと出てくる人に問題がありそうだから園長とオイナリサマが出ることになったのだが、このメンバーに教えると必要以上に大事になってしまいそうだ。大事にするのは園長からのヘルプが来てからで良いだろう。
「そんな訳で、今回は園長さんもギンギツネさんも欠席です。代わりと言っては何ですが、あくしまにはすでにクロサイさんとバビルサさんが現地入りして『新型ガオガオ病』の治療に向けての調査を進めています。ですので、あくしま入りを果たした後にまずすることは、この二人との合流ということになります」
「クロサイが…あっ、だからシロサイは事情を先に聞いてたんだね」
「ええ、聞きもしないのにクロサイが『姫、あくしまに行くことになりました。しばしの暇をいただきます』と言いに来て、管理センターの職員の方もやってきて説明の補足してくれたのですけれど、職員の方が説明に来られるのなら私に説明をする前にとっとと行きなさいといえばよかったですわ」
「クロサイ…相変わらず報われない…」
「その後、わたくしも『あくしまに来てください。クロサイさんとバビルサさんだけでは新型ガオガオ病に対抗するのに手が足りなさすぎるのです』と呼ばれたのですわ」
「あーそこからの流れは私たちと同じなんだね」
「皆さんは実力者ですし、お手すきのようでしたから…」
少し言いにくそうに視線をずらすミライ。その何気ない言葉がけものたちを傷つけたのかわからないが、傷つき合った4人の少女達は抗議した。
「そんなことないよ、予定あったよ! ミラクルロボット合戦の攻略とか…」
「実質、暇じゃない。私は本土のカラカルがジャパリカフェの研修の手伝いに行くことになって、本土の方のサーバルが野放しになるから面倒見てて、って言われてたんだけど…」
「え、本土のサーバル、野放しになってるの? それ大丈夫なの?」
「他に誰か代わりの子、置いてきてあげましたの?」
日本の本土にある、島からは電車一本で行けるJAPARI PARKにいるサーバルに思いをはせる面々。一時避難の際に顔を合わせたことがあるが、天然のように見えて島内の自分達のよく知るサーバル以上に濃いキャラであった事を想起する。
「飼育員さんがいたからキタキツネごと面倒見てってお願いしてきたわ」
「それはよかったわ」
「本土の方のフレンズは手伝ってくれないの?」
「今、本土の方では何だったかのコラボだかお祭りみたいのの準備で忙しいんだって」
「へえ、そうなんだ、楽しみだね!」
「本土のお祭りでフレンズたち皆が忙しいのなら、それは本土の職員さんも同じく忙しいのでは?」
「あ」
「『あ』⁉」
「まあまあ、どうにかなるでしょ!ルルは!? ルルは何かあった?!」
せっつく様にトムソンガゼルにふるカラカル。ごまかす方向で行くようだ。
「え、え、えーと、ルルはラビラビと『パラティウム』の脱出成功したから、今度は地下の迷宮『ヒュポゲウム』に挑戦するための作戦立てる予定があったんだけど」
「高難易度の脱出ゲームだっけ? まだ担当の職員以外ではフレンズでさえ5人も成功者がいないっていうアレ? ラビラビってば挑戦者ね」
「トキは何してたの?」
「喉に良いっていうマシュマロの木を探していたわ」
「マシュマロの木? マシュマロが木に生るの? 初めて聞いた」
「それはお菓子のマシュマロ。昔はマシュマロの木の根っこから喉の薬を作っていたらしいのよ、それで興味を持って探しているの」
「へえーマシュマロが喉の薬になるなんてねえ」
ミライは知っていた。マシュマロの木の正体は英名: Marsh mallow 和名:ウスベニタチアオイことであり、ウスベニタチアオイは多年草、つまりは草であり木ではないのだが、今この場で言ってもいいものか悩んだ。
「シロサイはクロサイのことがあって、ずっと待機してたの?」
「いいえ? 普通にカバ様に教えていただいたケモノエステサロンの泥パックを試していましたわ」
「ちょっとはクロサイの事、心配しても良いと思うの…」
「なんでシロサイはクロサイのことになるとツンデレになるの?」
さらっとシロサイが暇人宣告をしていたが、それ以上に雑に扱われるクロサイの扱いに皆気を取られて気づかれることはなかった。
「何でセンターはクロサイを先に呼んでシロサイは後からだったのかしら」
「あ、それはですね、単純に実務経験の差ですね。最初はそこまで重大なことと思われてなかったのですが思ったより感染者の広がりが早かったので人手を増やすことにしたみたいです。あとは依頼者の差ですね」
「依頼者の差?」
「クロサイさんはシロサイさん命じられる形とは言え、前回の騒動を収めるためフレンズさんの中で1、2を争うほどガオガオ病にかなり詳しくなった方ですから管理センターがその実績を評価して依頼したのですが、シロサイさんはガオガオ病の元となるセルリアンを倒す方に向いているフレンズさんとして私が直接依頼した形になるので、その時間の差が出た形になりますね」
「なるほど」
ふと思い出したように、ミライはシロサイに尋ねる。
「クロサイさんは管理センターと連絡を取るために通信機を渡されていたはずですが、シロサイさんは連絡は貰っていませんか? セントラルパーク内の公衆電話限定ですがやり取りできたはずですが、それとも、その通信機機能の説明してもらってなかったとかそういうことでしょうか?」
「通信機にそんな裏機能があったんだ⁉」
「職員が家族をジャパリパークに招いた時のサービス用につけたらしいですよ」
「いいえ、ちゃんと職員さんには説明していただきましたわ。それで、わたくしたちも時間を合わせて連絡のやり取りをすることにしたのですけれど、2週間ほど前から連絡がつかなくなったのですわ。ですので、わたくしは便りが無いのは良い便りと受け取り、気にしないことにしたのですけれど…」
その言葉に全員が真顔になった。
「それ、まずいことになってない?」
「あたし、この間こんな展開になるのゾンビ映画で見た」
「カラカル、B級映画好きなの?」
「バイ〇ハザード苦手なんだけどなあ、みんなでやるシ〇―マンなら…」
「とりあえず、あんたは島に着いたらレッドハーブとグリーンハーブ探してきてよ」
「というかシロサイ、クロサイが関わると割と扱いどころか考え方も雑になるの何で?」
「大丈夫です。みなさん。管理センターとの通信記録はあるのでクロサイさんはゾンビにはなっていないので安心してください。ただ…」
「ただ?」
「バビルサさんとは音信不通になってるそうです」
「カラカル、私、これに似たシチュエーション、ゲームで何回かやったことある」
「そのゲームちゃんとクリアしたんでしょうね?」
「そのゲーム、ミラクルロボット合戦シリーズなの」
「攻略させておけばよかったわ」
ポーンと電子音が鳴る。続いてラッキービーストⅢ型の音声が流れる。
「皆様、当機ハ着陸ニ備エ高度ヲ下ゲテマイリマス。安全ノタメ、機体ガ完全ニ停止シ、ベルト着用ノ、サインガ消マルデ、オ座席ニ着イタママオ待チクダサイ。間モナク、あくしま港ニ着水イタシマス。着水ノタメ機長ハ操縦席ニオ戻リクダサイ。
本日モ、ジャパリ空港園内線ノゴ利用イタダキアリガトウゴザイマシタ。
マタオ会イデキルコトヲ、クルー一同心ヨリオ待チ申シ上ゲテオリマス。
ソレデハ、イッテラッシャイマセ」
飛行艇は無事、あくしま港に着水した。
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