17

「しっ、しししし清水君!?!?!え、なに、」


「うるさい静かにしてて。」


なになになに!?イケメンに抱きしめられてる!?訳分からん!パニックだよ!!!鼻血レベルだよ!!!


「…… ねぇ、三条さん。」


と、清水君が優しい声で私の名前を呼んだ。


「は、はい……。」


「俺のこと、頼ってって言ったよね。」


「…………うん。」


「それ、今じゃないの?」


「…………で、でも私、だいじょ、ぶだし、」


「もう、嘘つかないで。」


「…………………………。」


「俺に、言うことあるよね?」


清水君の言葉が、全て胸の内に落ちてくるような、そんな感覚だった。

誰も気づかなかった私の笑顔の裏側の顔。

彼だけが気づいてくれた私の気持ち。

誰かに言ったら、きっと迷惑になる。そう思ってきたから、ずっと、ずっと、誰にも伝えられなかった、私の気持ち。

彼になら、清水君になら、言ってもいいのかな。

甘えてもいいのかな。


清水君の温もりが、とても心地よくて、ぽろぽろと目から溢れたそれと共に、私の言葉も、ほんとに小さな私の声が、溢れた。







「……お願い…………………………っ、……助けて……。」








すると、抱きしめられていた清水君の腕がさらにぎゅっと、私のことを包んだ。そして、



「分かりました。……吸血鬼である私が、この国から攫ってさしあげましょう。お姫様。」



と、清水君が、子供のようにニッと笑った。

そして、メガネを外すと私に渡した。



「その目じゃ、戻れないでしょ。」


「……ありが、とう。」


ありがたく、清水君のメガネをかける。

うわっ、度強すぎ…………。


「じゃ、行きますか。」


「うん、って、え、ちょっ!?!」


清水君は、軽々と私のことを持ち上げた。これは、そう、世間一般で言うと、お姫様抱っこというやつだ。



「こっちの方が、目立って良い宣伝になるかと。」


絶対からかわれてる………………!!

無理!やめて!!恥ずかしい!!!と騒ぐと、すごい目で睨みながら(私の怖いものトップ3に入る怖さ)降ろしてくれた。そして、私の手を取って歩き出した。



──────── あぁ、どうしよう。意味なんてないって分かってる。私はきっと、そこら辺の女子と同じ。なのに、なのに、こんなことされたら、期待してしまうじゃないか。きっと可能性なんてない。でも、もし、ほんの少しでも、君の心に私の気持ちを受け取ってくれる隙があるなら。言ってもいいのだろうか。




私は、あなたのことが ──────────

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