16

「……………………っ、えっ……」


何が起きたのか全く理解出来ず、気づいた時には、倉庫の中で尻餅をついていた私。どうやら、倉庫に入った瞬間に、背中を押され、閉じ込められたようだ。

すると、外から笑い声が聞こえた。


「はぁー、やっと邪魔者が消えたなー!」


その声は、恐らく今まで話したことのない女子生徒たちの声だった。


「清水君ひとりじめとか、調子乗りすぎだから。」


「いい子ぶってんなって。」



笑い声と共に刺さる、凶器のような言葉たち。その声はしばらくして遠ざかっていった。

……どうしよう。なんで。私なにかしたっけ。いつもやっぱりこうなっちゃうんだ。頭の中でぐるぐるまわる。私なんか、私なんか、私なんか、私なんか、



───────── 早く消えればいいんだ。


「…………っうぁあぁぁ……。」


ぼろぼろこぼれる涙。ここが暗闇でよかった。こんな姿誰にも見せられない。このままここで文化祭を終えよう。そのうち誰か来るだろう。



もう、いいや。




倉庫の壁に寄っかかり、体育座りをして、外の声に耳をすませた。どうやら、先程の女子達はいなくなったようだ。さて、どのくらいしたら助けが来るだろうか。明日まで来ないとなると、さすがにきついな…………。なんて、呑気なことを考えていた。から、突然、まさか、その重い扉が開くなんて、予想もつかなかった。暗闇に慣れていたせいなのか、泣いたせいなのか、光が突然入ってきたので、目がうまくあかない。だけど、一瞬で分かった。こんな私のことを、助けてくれたのが誰なのか。



「…………なんで?………………清水君。」


「え!?さ、三条さん!? 」


そして、心底、吸血鬼の姿をした彼も驚いていた。


「こんなところで、なにしてんの!?え、何その顔!泣いてるの!?」


クールな彼はどこに行ったのだろうか。大きな声、焦った表情。どれも初めて見る表情かおだ。


「なんで……って、私も知りたいくらいだよ。あ、ははは」


「…………、なんで、笑うんだよ!何がおかしいんだよ!」


「し、みずくん?」


「無理してるのも、楽しくないのに笑ってるのも、バレバレなんだよ……。なのに、………………」


「………………っ!?」




そして、清水君は、あろうことか、私を抱きしめたのだった。



「もう、そんな笑顔見たくないんだよ……。」

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