15

私が通うこの学校は、割と有名で、生徒数も多い方である。そういう理由もあり、文化祭は大いに賑わっていた。


「そこのダンボール、体育館裏まで運んでもらえるかな?」


「は、はいぃ!!」


実行委員の私は、文化祭を全く楽しめないまま、本日13個目のダンボールを運んでいた。…………なんでぇや。高校生と言ったら、文化祭で、イケメンとお化け屋敷とか行って、ちょっといい感じになる……♡的なやつじゃないんかい!!!と、行き場のない怒りとダンボールを持ち、歩き出す。



途中、自分のクラスの前を通りかかった。どうやら、結構繁盛しているようで、教室の前に列ができていた。予想通り、というか、当然、というか、清水君は大勢の女子に囲まれていた。そりゃあ、あのイケメンを女子達が放っておくはずがないよな。こんな女子達を敵に回すなんて怖すぎるぜ。なんて思いながら、その横を通り過ぎようとした時だった。



「え、三条さん?なにしてんの?」


あろうことか、彼は私に話しかけてきた。

おいおいやめてくれ。殺す気か。清水君の周りにいた女子達の視線が痛い!!


「へっ!?し、仕事だよ!!実行委員の!」


「なんで、俺も実行委員じゃん。」


「いやだって、どっちかひとりで良いって言われて……。」


「聞いてないよ、それ。」


「い、言ってないから…………。」


「………………はぁ?なんで言わないの? ────」


「…………!! ……っこ、これ、届けないとだから!じゃあね!!」


周りの女子と清水君の痛い視線に耐えられず、私はなんともいえない笑顔を見せながら、早足でその場を去った。ただただ、廊下の人混みを避けながら走った。そして、先程の清水君の言葉が頭の中でぐるぐる回っていた。



「……はぁ?なんで言わないの?



───────俺、そんなに頼りなかった?」


そんな悲しそうな顔をしないで。

なんで傷ついたような表情をしているの?

やめてよ。そんな目で見ないでよ。




そして、なんで私はこんなに泣きそうなの?



「…………っ、はぁ、はぁ……」


どうやら、走っているうちに、体育館裏にたどり着いたようだった。息を整えて、ダンボールが沢山積まれている倉庫に、持ってきた荷物を重ねた。



その刹那 ────── 背中の痛みとともに、目の前が真っ暗になった。

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