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そして、文化祭の日がやってきた───────


眠い。ただただ眠い。

結局、あのあと家に持ち帰って作業を続けたが、気付いたら朝日がおはよう!!と言わんばかりに輝いていた。昨日もほとんどの作業を任され、私が得た睡眠時間はほぼなしに等しかった。だめだこれは。そしてくまもひどい。よかった、本番私は実行委員だからお客さんの前に行かなくて済む。こんな見苦しいの見せられたらきっとお客さんなんて消えるわ消える。目に見えるわその未来が。

教室では、みんなそれぞれの衣装を着て、賑わっている。狼男やゾンビ、雪女や魔女など、ハロウィンの仮装大会にでも来たような気分だ。そして、衣装のない私はそれを遠くから眺めていた。



「あは、あははは……。みんな、かわいいね。似合ってるよー。間に合ってよかった……あはは。」


「…………星?顔、怖いよ?」


花が化け物でも見るように目で私の顔を覗き込む。


「えー?そう?いつもこんな顔だよーあはははは。」


だめだ。疲れがピークだ。

いや、今日頑張れば明日からは楽になれる。頑張れ私。こんなめんどくさい仕事ともおさらばだ!!



────── そして、清水君と話すことも、無くなる。


さりげなく清水君に、視線をやった。清水君は、吸血鬼の衣装を着て女子に囲まれていた。恐らく、女子達が勝手に決めたのであろう。清水君は全く周りの女の子達の会話に入ってなかった。めっちゃ嫌そうな顔をしている。私と話してたことは、全て夢だったのかもしれないな…………。そんなことを考えながら、彼をじっと見つめてしまった。


「星、いいこと教えてあげる。」


「んー?どうしたの?」


内緒話でもするように、私の耳元に顔を近づける花。


「清水君が実行委員やったのは、星がやったからなんだよ。」


「……………………?…………まって、それどういう」


「あと、今日の後夜祭は今のところフリー、らしいよ。じゃ、文化祭頑張ろうね!!」


謎の“いいこと”を伝え、花は去っていった。

後夜祭とは恐らく───────打ち上げ花火を一緒に見る人がいないことを示しているのだろう。それも謎だが、1個目のは、全く意味が分からない。え?つまり、私がやったから、清水君も実行委員をやったってこと?




そんなこんなで、謎ができてモヤモヤしたまま、文化祭の始まりを告げる、花火が校庭で打ち上がっていた。

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