12

「星ちゃーん!!ここどうすればいいのー?!」


「えっと、ここは、……」


あの帰り道から数日が経ち、文化祭まであと1週間となり、今日から、学校全体で準備期間に入った。清水君とは、あまり会話をすることもなく、実行委員はそれぞれクラスの人たちに質問攻めにあい、より忙しくなった。

準備は順調に進んでおり、きっとこの調子なら余裕で間に合うだろう。



「せーい!!!どう!?似合ってるー?」


花が本番で着る衣装を試着しているようだ。どうやら花は魔女の格好をするらしい。とんがりボウシに、黒を基調としたドレス、手にはそれらしい杖まで握っている。


「わ!かわいい!!ばっちりだよ!」


「星は何着るの?」


「え、私は着ないよ?」


「は!?なんで!?!?」


「……えっと、」



────ことは、数日前に遡る。

いつも通り花とお昼を食べていたところに、文化祭実行委員長である、3年生が教室にやってきた。


「実行委員の人いるかな?」


「あ、はい!私です!」


「お昼中ごめんねー。実は文化祭当日なんだけど、実行委員のどちらか1人は本部で仕事をしてほしいんだ!大丈夫かな?」


「了解です!わざわざありがとうございました!」



ぺこりとお辞儀をすると、3年生は素敵な笑顔で去っていった。そっかぁ、実行委員はそんなこともしなきゃいけないのか、、。どちらが行くべきかな。教室をぐるりと見渡すが、恐らく図書室にでもいっているのであろう、清水君の姿は見当たらなかった。



まあ、清水君の仮装とか楽しみにしてる女子は山ほどいるのだろう。そんな彼に仕事を任せるわけにはいかない。わたしがやろう。─────



「みたいな感じだから、私はほぼ教室いれないんだ。ごめんね。」


「そっ、かぁ。残念だぁ。あまり無理しないでよ?」


すると、教室の端から、花ちゃーん!サイズどうー?という声が聞こえた。


「大丈夫大丈夫!ほら!花呼ばれてるよ!」


「あ、ほんとだ。じゃあね!」




清水君にちらりと視線を投げると、丁度彼も私を見たところで、目が合ってしまった。


「…………!!?!」


そして、反射的に目を逸らしてしまった。

あー、最悪だ。また悪い印象が増えた。





こんなめんどくさい気持ちなんて、早く消えればいいのに。

文化祭はやく、おわれ。

彼との繋がりを早く断ち切ってしまいたい。



そんな心にもないことを、祈り続けた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る