11
「え?」
思わず、マヌケな返事をしてしまった。
いやでも、まてまてまて。今、彼なんて言った?
愛想笑いが上手なんだね、って言った?
「俺、結構前から思ってたよ?あ、もしかして、気づかないふりしてた方がよかった?」
できればそうしてほしかった!!!!
なんて言えたらどんなに楽だろうか。
この時の私に、そんな余裕はなかった。
だから、いつも通り私は、
笑ったのだ。
「あまり、そんなつもりはなかったな!もしそう見えてたなら、勘違いだと思うよ!」
「…………ふーん、そう。」
できることなら、今すぐここから走り出したかった。
目の前を通るトラックにぶち当たりたかった。
この冷たい目をした清水君の目の前から消え去りたかった。
「……、あ、私右なんだ。じゃ、また、明日ね。」
「うん。気をつけて。」
最悪だ。
よりによって清水君にバレるなんて。
でも、どうして彼は気づいたんだろう。少し背筋がゾッとした。
家に帰っても何もする気が起きず、ぼーっとベットに寝転がり、天井を見つめていた。
きっと、清水君にとって私は悪い印象しかないんだろうな。そりゃそうだ。適当にへらへら誰にでも笑って過ごしてる人間に少なくとも良い印象は持たないだろう。
「…………明日から、どんな顔して話せばいいの……。」
まさか、笑顔でいることに悩む日が来るなんて思いもしなかった。これが、そんな関わりのない人に言われたならどんなに気が楽だったか。
どうして、どうしてよりによって、清水君にバレちゃうのかな…………。
そのまま私の瞼は閉じられ、深い眠りについたのだった。
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