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教室で待っていたのは、にやにやしながら「おはよぅ〜〜〜うふふ」と言っている(気持ち悪い)花だった。


「どうしたの、その顔……。なんかいい事でもあった?」


「そっくりそのまま、その台詞を君に返すぜよ。」


どうやら私の友人に、侍がとりついたようだ。


「え?私?なんで?」


「とぼけるなって〜!!あの清水君と朝から登校だなんて、贅沢すぎる!1日でそんなに仲良くなったの?」


「あ、あぁ、そういうこと……。うんまぁ、意外と話しやすいし、優しいし、いい人、だよ?」


「そっかそっかそっか〜〜」


どうやらにやにやが止まらないらしい。病気だろうか。どっちにしろやはり、気持ち悪い。


清水君とはあの後、普通に話して教室まで歩いてきた。その途中、女子からの視線がすごかったのは言うまでもない。教室に入った清水君は、いつも通り席について本を開いていた。


「あ、先生きた。じゃ、星、昼休みに詳しく聞かせてね!」


手をひらひらと振りながら、花は自分の席に戻っていった。担任はいつも通り、気だるそうに挨拶をした後、誰も聞いていない業務連絡をしていた。いつもと違ったのは最後に、


「あと、今日の放課後、実行委員を中心にうちのクラスの出し物を決めてくれ。三条、清水任せたぞ。」


と言い放ったことだった。



実行委員をやるのにあまり乗り気でなかったのには、これがあったからだ。クラスのみんなをまとめて、意見を出すこと。嫌でも中学のことを思い出してしまった。


…………いや、ここは中学じゃない。やるしかない。頑張れ私!!!





「じゃあ、案がある人お願いします。」


ざわざわしている教室。清水君のそんなに大きくなくても通る声はクラスメイトにちゃんと届いている。きっと私だったら無視されてるに違いない。(昔から声はあまり通らないと言われている。地味に傷つく。)


「やっぱり、定番のメイド喫茶がいいんじゃねぇか!」


「そんなの女子だけ忙しいだけじゃん!全員で出来るやつにしようよ!」


「お化け屋敷とか楽しそうー!」


みんな口々にいろんな案を出すが、これはまとまらなそうだ……。どうしようか……。


「三条さん。とりあえず案出たやつメモお願いできる?」


こそっと清水君が言ってきた。


「う、うん!了解です!」


えっとー……、メイド喫茶とお化け屋敷、と……。

なかなか難しいよなぁ……。

どうやら案はこの二択でほぼ対立しているようだった。

上手くまとめるにはどうしたらいいんだ…………


「あ。」


気づいた時には口に出ていた。

ほぼ無意識で。


「三条さん。どうしたの?」


清水君がこちらを振り向いた。

口を開こうとした、その時。頭の中で、中学の時のクラスメイトが呟いた。


『ちょっと、調子のってるよね。』


「い、いやなんでもな」


「三条さん。」


清水君が私の目をみて、微笑んだ。

そして、


『三条さんは、ひとりじゃないんだから。』


大丈夫だよ、とそう清水君が朝と同じことを言った。



……イケメンってずるいなぁ。そしてそれにときめく私も単純だなと、素直に思った。


「……あの、お化け屋敷とメイド喫茶をくっつけたらどうかなって……。お化けの格好して、カフェをする、みたいな…………。」



どきどきと、心臓が鳴った。

でもなんか、大丈夫な気がした。

だって、隣に清水君がいるから。


「うん、俺はそれいいと思う。」


「……ほんとに……!?」


クラスの皆も、笑顔で賛成してくれた。


「三条さん、ナイスだ!!」


「今まで聞いたことないもんね!楽しそう!」


どうやら上手くまとまったようだ。

そしてまた、清水君は胸きゅん爆弾を投下した。


「ほらね、大丈夫だったでしょ?」


私は誰かに魔法でもかけられてるのだろうか。だって、こんなに胸がどきどきして、気を抜いたら涙が出てきそうになるこんな気持ちになる予定なんてなかった。そうでないのなら、やっぱりこの感情は、





─────“恋”と呼ぶものなのだろう。

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