第5話
僕は
「いやいや、なんでファミレスに?」
「え? 勉強するためだよ」
「なんでファミレスなんだ!」
「だって家は親いるし。
「まぁそうだけども」
そんな当たり前じゃんみたいな顔をされても。
毎日うちに来ていたのは何のためだったか。
まぁこんなことは初めてではないし、なにより唯ちゃんと遊べたのでなんだかんだ許してしまうのが僕の優しいところだ。うむ。
「で、がっつり昼飯を食べたのにポテトも頼んで食べていると?」
「うん。食べる?」
「お、おう。いただくよ」
「ここの美味しいよね」
「うん、ってそうじゃない! 勉強は!?」
「はいはいやりますよー」
気の無い返事をしやがって。
テストで悪い点取っても知らないからな。
うちの学校のクラスは成績によって分けられる。
もし2年での成績が悪ければ3年で……ってあれ?
なんで彼女は僕と同じクラスなんだ?
たしか去年もこんな風に一緒に勉強をして、わからないところ教えてーと言ってきてたはずだ。
……まぁいっか。
成績は良いに越したことはない。
それに僕だって頭はそれほど良くない。
下のコースの中で一番上のD組にいるだけ。
上のコース人たちはもっと頭が良い。
「これどういうこと?」
「これは主語が従属節と主節で同じだった場合は、主語を省略できるんだよ。I enjoyed eating Japanese food when staying in Japanみたいな感じで」
「ふーん。別に主語をちゃんと書いてもいいの?」
「平気だよ」
「なるほどー」
「これも省略してるの?」
「そうそう。Acid rain is one of the serious environmental problems which is caused by humansが、~problems caused by humansって略されてる」
「ふむふむ」
と、意外にもこんな感じで時間は経過していった。
なんだやればできるじゃないか。
ったく、なんで早くからちゃんと勉強しないんだ。
夕方になり、そろそろ飽きてきたということで、僕たちは勉強を切り上げることにした。
伝票を見ようとするが、恵美理に取られてレジへと持っていかれる。
「ちょっと、値段見せてよ」
「いいのいいの、私のおごり」
「え、なんで」
「勉強に付き合ってくれたお礼」
ほう。なかなか礼儀のなった子だ……じゃない。
そんなことをされたらさらに恵美理に頭が上がりづらくなってしまう。
それだけは避けなければ。
「いや、いいって。僕も勉強したんだし」
「だーめーでーすー」
口を尖らせるな、口を。可愛いから。
駄々こねる子どもか。
「せめて6:4」
「うーん、7:3なら」
「なんだよその違いは」
「差つけないとお礼にならないし」
押し問答の末に、結局多く払ってもらってしまった。
恵美理はそんなことを思っていないようだが、なんか貸しを作ったみたいで申し訳ない。というか男として情けない。
外に出ると、歩いてマンションへと向かうが、その途中で恵美理は思い出したようにこんなことをまた言い出す。
「アイス買って帰ろうか」
「また!?」
「うん。じゃんけんする?」
恵美理の楽しそうな笑顔が視界に入り、顔をそむける。
か、顔が近いんだって。
「いや……僕が払うよ」
「ほんとっ!? ありがとっ!」
はぁ、最近振り回されてばかりだな。
こんなんでいいのか、僕?
良くない。絶対に良くない。
こんなことを続けてたら僕の楽しくなるはずの恋に満ちた高校生活がすぐに終わってしまう。
けどまぁ……
「ほら、早く行こ」
今日は少し高いアイスを買うこととしよう。
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