第2話
Ep2 出会い・結束
ごめんなさい。お遊びが過ぎました。
でも私が中学校、高校と苦渋を味わったのは本当…
引っ込み思案だったのも本当、でも私は書くことが好きだったから、そんな中でもひっそりと続けられた。大学生は自由で、いろんな趣味を持つ人がいるって聞いたから、今度は私も同じ趣味を持つ友達を作れるだろう。そんな期待を胸に貰ったチラシを眺める。
三日後、授業が始まった。サークルばかりに気を取られていたが、私が通うのは文学部、書き物が好きな人が何人かいてもおかしくない。40人ほどが入りそうな講義室、教室全体を見渡すと7:3ほどで女子のほうが多いだろうか。昔から男子にからかわれ続けた私には都合がいい男女比だ。
一時限目はガイダンスだった。講義室内の生徒は7,8人程度のグループに分けられ、自己紹介などをこなす。そんな中で、気になる子が男女一人づついた。一人は高山龍之介、強そうな名前とは裏腹に白い肌、細い腕でいわゆるもやしっ子っていう感じだった。2人目は吉岡里佳子、黒髪三つ編みに眼鏡、漫画に出てくる文学少女をそのまま現実に出したみたいな子だった。2人とも物語を創ったり、本を読んだりするのが好きらしく、自然と打ち解けた。放課後には、一緒にサークルを見て回る約束をした。
その後つつがなく授業を受け、放課後、誰もいなくなった講義室で三人で行く先を話し合う。三人で話し合った結果、今日は学校公認の文芸部に、明日は非公認の文学系のサークルに行ってみるころに決まった。
どちらの団体も見て回り再び三人講義室で話し合う。三人とも表情は暗い。きっとみんな同じことを考えているだろう。最初に行った文芸部はまだよかった。といっても部員は少なく、みんな図書館で各々好きな本を読んでいただけだったが…。ひどかったのは、そのあとに行ったサークルのほうだった。まず集合が居酒屋な時点でおかしい。サークルのメンバーにしても、とても、私たちと相いれるようなタイプではなかった。そもそも文学系のサークルの活動がカラオケで大騒ぎなのか理解ができなかった。後になって知ったことだが、そのサークルは、文学サークルとは名ばかりの、いわゆるパリピサークル、ひどいところでヤリサーとさえ言われるような団体で、学校内では悪いほうで評判なようだった。
そんなこんなで、大した収穫もないわけだから落ち込むのも無理はない。日が長くなりつつあるとはいえ、外はもうだいぶ暗くなってきている。もう帰ろうかなと思ったその時、
「そうだ‼」
もやし君、否、龍之介が急に大きな声で叫ぶ。びっくりして私と三つ編みちゃん、ではなくて里佳子は飛び上がってしまった。
「何よ急に、」と里佳子。
「気に入る団体がないなら、僕たちで作ればいいんだよ。」興奮気味に語る龍之介は、まるで世紀の大発見をした学者のようだった。
そういわれるとそうだ。中学や高校の時と違い、サークル、同好会のような団体を作ることはそれほど難しいことではない。いいかも、思わずほおが緩む。里佳子もまんざらではない様子だ。
「決まりだね。」龍之介の言葉に私も里佳子も無言で、でも笑顔でうなずく。
「名前はどうするの?」里佳子が聞く。
十分間あーだこーだといいあい、ようやく三人の考えがまとまった。
-fountain pen-
英語で万年筆という意味、地味な感じもしたが、なぜか私たちにとてもしっくり来た。
いちいちfountain penっていうのも面倒だから、ファーペンって呼ぶことにした。
活動は毎週火曜日、木曜日と、隔週の土曜日、それを決めて今日はお開きとなった。
帰り道、なぜか涙が出てきた。悲しいわけではない。
ただ うれしかった。同じ趣味を持つ人達が近くにいることが。
うれしかった、その人たちが私の友達だということが。
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