カキモノヅクリ
入江浅
第1話
Ep1 入学式・過去
昔から、何かを創りだす人憧れてきた。物心ついた時から、自分で何かを創るのが好きだった。
小学生のころには、自分の作った詩が学校の代表として市の詩集に載ったこともあるし、簡単な歌も作ったりしていた。童話も作ったりした。とても楽しかったし、先生や、両親に褒められるのがとてもうれしかった。ずっと続けるんだって思ってた…
4月、季節は春。新たなる出会いの季節。私は大学生になった。
うえを見上げると、ピンクの桜が華やかで、それ以上に同じ新入生たちの髪の色が華やかで、少し目がちかちかする。
学長たちの長く退屈な話を聞くだけの入学式ののち、ホールを出ると、たくさんの人が、まるで新入生の花道を作るように並んでいる。
でもその花道の中はそんなに甘いものではない。
‐学祭サークル入りませんか?-
-サッカー部マネージャー募集中です!-
-大学生といえばやっぱりテニス!テニスサークル入らない⁈-
たくさんの団体の新入部員を求める声が飛び交い、花道を抜けるころには、手には幾十枚ものチラシが積みあがっていた。
「サークルか…」
新しい出会いは欲しいけど、派手な人、いわゆるパリピと呼称される人たちはあまり得意でない。
中学生時代の悪い記憶がよみがえる。
モノ創りを純粋に楽しんでいた小学生、当時もクラスの男子たちにからかわれたりすることもあったが、特に気に留めることもなかった。先生や両親、そして友達は私が創るものを楽しみにしてくれてたし、からかわれる回数より、褒められる回数が多かった。
でも中学生、高校生になると周囲の反応は激変した。
思春期を迎えた友達たちは、「厨二病」という言葉に過敏に反応するようになり、詩や物語を作るということは「イタイ」ものとして蔑視された。男子の嫌がらせにも拍車がかかり、女子の友達も私を無視するようになった。もともと引っ込み思案な私は、これらに何の抵抗もできず、「ボッチ」生活を強いられた。
これだけならまだ創ることをあきらめなかったかもしれない。とどめを刺したのは家族だった。
中学2年の時に、父が会社をクビになった。学歴も教養もなかった父に再就職のあてはなく、家で「粗大ごみ」として生活する日々が続いた。生活はわずかな失業手当と、母のパートでぎりぎり賄った。失業手当のもらえる期間が終わるころから、両親が衝突することが増え、結果、離婚、私は母に引き取られた。
母は、私に学を求めるようになり、放課後の多くを家での勉強にあてさせた。勿論物語を書いたり、詩を創ることは許さなかった。
「そんなものはいいから勉強しなさい。」
「あなたはお父さんみたいになってはいけないの。」
そのおかげもあって今の大学に合格し、奨学金も借りながら、一人暮らしの大学生活を送れるようになったわけだが…
そんな回想をしているうちに、アパートについた。六畳のワンルーム、築四十年家賃は激安。
でも、私にとっては立派な城だ。部屋の真ん中に置かれたちゃぶ台に向かう。使い古した万年筆を持ち、原稿用紙に向かう。
え?過去のことが原因で書くことをやめたんじゃないかって?
そんなわけないじゃない。
だって好きなんだもの。
じゃあ最初の思わせぶりな表現は何かって?
リップサービスよ。
書くことをやめられるわけないじゃない。
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