違う形の幸せ。
それはいつかのさくらの思い出のさくちゃんとりっくんのifストーリー。
前回も、今回も、彼らには幸せな形がたくさんありそう。この幸せは、苦しくない。
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数年前、さくちゃんが目を覚ました。数十年前の今日、さくちゃんは事故に遭った。
だけど今、こうして今日を迎えられるくらいに彼女は元気である。
本当に奇跡としか思えない。
実はさくちゃんとは今じゃ幼馴染なんかじゃなくて。たった一人の愛する人。あと数年でさくちゃん、なんて呼べる日も終わってしまうだろう。
ふわふわといろいろ思い出してたら、もうあっという間に7時半。
道理でキッチンから甘い匂いがするわけだ。
匂いから予想して、朝食は僕の好きなフレンチトースト。
好きな人の作る好きな料理なんて、どれだけ価値があるものか。ましてや僕なんかが食べていいんだろうか。
僕が食べなきゃ、さくちゃんが怒ってしまうんだけどね。
「りつきー!!!起きろー!!!」
柔らかい声でさくちゃんが起こしに来た。
「はいはい、起きてるよ?」
「もう!りつきは意識失ったみたいに寝相も変わらないし、寝息もたてない!こっちは毎日怖いんだから!」
「そんなこと言って……5年近く寝てて心配させたのは誰?」
「うっ……それは言わないお約束!」
しーっと、桜色のくちびるに人差し指を立てる。いたずらっ子のような笑顔で、ふわりと笑う彼女は数年前まで病人で入院してたなんて思えないほど健康そう。本当に生きてて良かった。
「りつき、そういえばご飯冷めちゃう!食べよ!」
朝食の存在をふと思い出したようで。
くるくるぱたぱたと、僕の部屋を走り回る彼女は春風のように忙しそうだ。
なーんておもってたら、ずいぶんお腹が減ってきた。さくちゃんが言うように、朝食食べよ。
数年前の今日からこんなにも平和な日が来るなんて思えなくて口から漏れたのは
「さくちゃん、ありがとう」
という感謝の言葉だった。
「えー?なんでー?まあありがとう!」
本人はそう言ってて、全然わかってないようだけど、これが一番いいよね。
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