第17話 元不良と殺人鬼

本当は楽しいはずだったが、余計な2人がついてきたせいで楽しさが半減した旅行1日目。

「せっかく沖縄来たんだし、泳がねぇか?」

誰よりも早く起きた勇武が言う。俺とユウは未だに眠気が覚めておらず、唯月に関しては現在睡眠中である。

「あのなぁ、沖縄=海みたいな人めっちゃいるけど、もっといいとこあるんだぜ?」

「なんだ?シーサーとかか?」

「違ぇよ。それはだな、あっと────んんー、、、知るか」

思考が働かない。眠気が覚めるまではこの調子だろう、と思い続けて何時間なのか。

現在午後1時である。

「なぁユウ、お前なら海行くよな?」

「やだよー、泳ぐの苦手だし」

「はああああ!ちぇ、唯月ちゃん連れてこ」

しかし唯月は眠っている。

「1人で言ってくるわ」

「「行ってらーー」」

勇武の姿が見えなくなるのと同時に、俺たちは眠りについた。 平和ですわ。


「とーや、とーや!」

唯月の声が聞こえる。俺を起こそうとする唯月の声が。

「起きろ刀夜ー」

と、そこによくわかんない男の声が登場。

「刀夜、いつまで寝てんだよったく」

と、さらに元不良のような声が登場。

なんだなんだ?つか何で勝手に俺の部屋に入ってるんだこいつらは。

「うるせぇなぁ、、。唯月、飯くらい自分で作るから」

「もう作ってあるよ」

「刀夜!一緒にご飯食べようよ!!」

何言ってんだよこいつらは。 と、思ったところで俺はある異変にやっと気がついた。

────唯月以外の声がするのは、何故だ!

さて、よーく考えてみようか、これまで何が起こったのかを。

そして俺はこれまでの出来事を思い出し、やっとその事に気づいた。

───今、俺沖縄にいるんだった────

「すまねぇなお前ら、本当に思考が働かねぇや」

「しっかりしろよ刀夜、唯月貰ってくぞ」

「うるせぇ不良探偵」

こりゃ弱ったものだな。

俺は気を抜いた瞬間閉じてしまいそうな目を擦りながら椅子に座る。

「えへへ、4人で食べるのは初めてだね!」

「そうだな。ここに邪魔な奴らがいるせいでな」

「邪魔とはなんだ邪魔とは」

「お前ら静かに食べろ」

本当に邪魔な2人が着いてきちゃって、楽しさ半減したはずなのに、何故かそれでも楽しいって感じちまう。

この4人も、いいかもな。




ホテルの外から見る景色はどこか落ち着く。俺はベランダで沖縄の海を見ながら黄昏ていた。

「何やってんだよ殺人鬼」

「なんだお前かよ、探偵」

後ろから聞こえる勇武の声。高校の時の修学旅行を思い出す。そういえばこいつとは部屋一緒だったっけな。

「なんか、懐かしいな」

「あぁ。昔、俺達で近くの学生に絡んでたっけ。喧嘩する度、先生に殴られてたっけな」

「ホント、お前のせいで散々な目にあってたよ」

高校やめて、殺人鬼になって、唯月に出会って。ここ最近本当にいろんな事があったな。

昔話をしているうちに、何だか過去に戻ったような気持ちになっていた。

「俺は寝るぜ、殺人鬼」

「、、、。ふっ、一生寝てろ」

俺はもう少しだけ、過去を振り返るとでもするか。



────────────────



「なぁおい、やばくねーか?」

「うるせぇなハゲ。俺はこういう奴らが一番ムカつくんだよ」

いや禿げてねぇよ!!!

俺達の視線にはビクビクと震える学生達の姿があった。いや、ほとんどは俺の隣にいる不良が原因だろうが。

どうしてこうなったかというと、こいつらが俺の不良友達こと勇武に喧嘩を売ったらしい。

俺は不良ではない。

「お前ら俺に喧嘩売ってんのか?」

「い、いいえ、、、。」

正直に言うと、俺はどうしたらいいかわからない。これを見るのも何度目かになるが、こうなってしまった勇武は俺にも止められない。

「勇武お前なぁ、んなガキどもに絡んでたって時間の無駄だろうがよ」

「だからテメェは黙ってろやハゲ刀夜!」

だから禿げてねぇよ!!!

「お前らその面かせや」

勇武がそう言うと、学生達は突然逃げ出した。

「ちっ、糞ガキどもがよ。おい、大丈夫か」

「は、はい。助けてくれて、ありがとうございます」

影の方から女の子登場。後に理由を聞くと、あの学生達はこの女の子に絡んでいて、そこを勇武が助けにはいったようだ。

あの女の子、めっちゃ勇武に怯えてたけどな。

俺達の日常は、いつもこんな感じだった。


そんなある日の事だった

「嘘、、、だろ」

俺はあるニュースを見て、絶望した。

それと同時に、電話がかかってきた。勇武からだ。

俺は携帯をとって、電話に出る。

「もしもし刀夜か!?今の、、、」

「見てるよ」

やはり勇武も見ていたようだ。このニュースを。

そのニュースの内容にはこう書かれていた。

『強盗にあった小学生の女の子が、ナイフで刺され死亡』と。

その小学生の名前は、『藤宮琴葉ふじみやことは』。間違いない、俺の妹の名前だ。

「なあ、俺、どうしたらいい」

「どうしたらって、俺に言われても。現場はこの町なんだろ?そこに言ってみろよ」

「ああ。だから、後始末よろしく」

俺は現場に向かった。今ニュースで流れたということは、おそらく朝に事が起こったのだろう。

それと、俺はあいつの顔を忘れちゃいない。

現場に向かうと、そこは既に警察が来ており近づくにも近づけそうにない状況だった。

ただ、その中に犯人がいないという事だけはわかっていた。

俺は犯人を追いかけた。何処にいるかわからない、犯人を。そして────────

「───やっと、見つけた」

橋の下で財布の中身を数える、犯人の男を見つけた。

その時の俺には、もはや感情というものは無く、ただ目の前の相手を破壊する機会のような存在であった事を今でも覚えている。

「消えろ」

「は?お前何言ってんだよ喧嘩売ってんのか?」

「消えろ、、、つってんだよ!!」

俺は手に持っていたナタで、その頭を真っ二つに割った。

その後、俺は怒りが静まるまでこいつをさし続けた事だけを覚えている。

その頃からだ。俺が殺人鬼になったのは。

次の日に俺は高校を中退。そして現在に至る。

もう二度と俺の妹は戻らないけど、でもこんな事が二度と起こらないように俺は誓う。

殺人鬼で、あり続けると。


──────────んん、、、。


「あ、起きた!!」

「いつもいつも起きるのが遅いぞ」

「今日は皆で出かける約束だからね。支度してないのは君だけだよ」

なんか、懐かしい夢を見ていたみたいだ。

でも、まあいいか。今を楽しく生きていれば。

「さて、支度するか」

俺は一足遅れて支度を始める。

さて、楽しい旅行2日目の始まりだ!

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