第15話 殺人鬼と交番

俺、逮捕された。

「いやまてまて、なんで!?」

「いやだってほら、誘拐しようとして、、」

「してねーよ!俺は迷子のガキを探してただけだろぉが!唯月からも何か言ってやれよ!」

俺は後ろでおぶっている唯月に言う。が、唯月はぐっすり眠っている。

「くそがぁ!!」

俺は何も悪いことをしていない。逮捕される意味がわかんない。

「さて、詳しい言い訳は署で、、、ん?」

「すみませーん!」

どこからか聞き覚えのある声がする。そう遠くないうちに聞いたような声。そう、留音という少女の母親の声だ。

「留音!」

「お母さん!」

留音は半端泣きながら母親の元へとかける。

「ありがとうございます。もう何と例を言っていいのやら」

良きタイミングだ。例を言いたいのはこっちの方だ、危うく刑務所送りにされるところだった。

「と、言うわけだ。これ外してくれ」

「仕方がない」

と、警察が手錠を外そうとした時。

「ねえこの人、留音のこと追いかけ回してたんだよ!」

「なっ、なんですって!!!」

──────────────え?

ちょっと待て、お前それはどういうことだ?だから俺は迷子のお前を親の元に連れてこうとしただけじゃねーかよ。

「と、言うわけだ。これは外せない」

「待てよ!!」

こんなことするんじゃ無かった。

そのまま俺は唯月とともに近くの交番へと呼ばれることになった。 唯月、早く起きろ。


そして、近くの交番で。

「さて、どうしてこんなことしちゃったのかな?」

「迷子の子を、親のとこに連れてこうと思ったんだよ」

「じゃあ、なんで追いかけ回してたのかな?」

「あいつが逃げるから」

「そろそろ正直に答えようか。これ14回も繰り返してるんだよ」

ふざけんじゃねーよ。こちとら正直に答えてやってんだろぉが。

「んん、、、」

「唯月!」

唯月がやっと目を覚ました。なんだろう、この安心感は。

「唯月ちゃん、大丈夫?」

「うん」

唯月は目を擦りながら言う。まだまだ眠たそうだ。かと言って寝られたらものすごい困るけど。

「じゃあ、今から言う質問に答えてね」

唯月は警察にされた質問を、嘘偽りなく正確に答えた。流石の警察も唯月の言うことは信用したのか、俺の手錠を外した。

「すまなかったね」

「あぁ、全くだ!」

俺は半分キレながら警察に言う。

「俺の名は新妻にいづま ユウだ。またどこかで」

「もう会いたくもねぇよ!」

そう言って、俺は交番を離れた。いや散々な目にあったぜ全く。本当に時間を無駄にした。

でも、あれはあれであの子供が救われたのならそれでいいや。

「なあ唯月」

「なに?」

「お前さ─────────」

言葉が詰まる。次第に、自分が今何を言おうとしたのかさえ分からなくなってきた。

「刀夜?」

「やっぱ、なんでもねぇわ」

もしかしたら自分ではわかってるのかもしれないけれど、だからといって口に出すなんてできない。

「じゃあ、私から!」

「あんだ?」

「はい、これあげる!」

唯月が俺に差し出したのは、この前俺が買ってやったラピスラズリのネックレスだった。

「いや俺が買ったんじゃん」

「いいのー!唯月からのプレゼント」

ったく仕方ねぇな。と、俺はネックレスを首にかける。

「おそろいだ!」

唯月が笑う。可愛らしい笑顔を俺に向ける。

ホント、こいつには敵わないわ。

「ったく、帰ったら何食う?」

「ラーメンがいい!」

「わかったよ。作ってやる」

「私も一緒にやりたい!!」

全く、どうしようもない奴だ。

こんな世界が、いつまで続くか────

いや、そんなことは考えないようにしよう。

俺は今の世界を生きる。それだけだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る