第14話 殺人鬼、逮捕される

俺は唯月に、恋をしてしまったのかもしれない。

という昨日の感情は、今日はもう既に無くなっていた。

「刀夜、何食べる?」

「何でもいいよ」

いつも通りの風景だ。唯月の声を聞こうが、顔を見ようが、何とも思わなかった。

で思ったのだが、何で唯月がご飯作ってるんだ?

「刀夜!はい!」

出されたのはオムライスだ。ケチャップの付ける量が半端ではない。

上に載せてある玉子焼きが何故か黒く、ご飯の量が極端に少ない。

わかってる。これ絶対やばいやつだ。

そうわかっていながら俺は1口、口の中に入れた。 どうしてだろう、辛い。

「どう、刀夜!?」

「う、上手いよ、、ハァハァ」

「ホント!?ありがとう!」

辛い、すごく辛い。本当に死にそう。

俺は我慢出来ずに冷蔵庫から水を取り出す。

その途端、俺はあることに気づいた。冷蔵庫の中に使用済みのケチャップがあることに。

「なあ唯月、これどうしたんだ?」

「ケチャップ無くなっちゃったの」

じゃあ捨てろよ。いや、それよりも大事なことがある。

そのテーブルにあるケチャップは────っ?

「ま、待てよ、、、」

俺は嫌な予感がしてテーブルにあるケチャップを確認した。

「や、やっぱりな」

「どうしたの刀夜?」

「なあ唯月、ケチャップ足してやるよ」

「本当に!?ありがとう!」

俺は唯月のオムライスに大量のケチャップをかける。あいつは気づいていないようだ。

───このケチャップが、島とうがらし入り激辛ケチャップだということを。

そうとも知らずにオムライスを口に入れる唯月。その瞬間、唯月は顔を真っ赤にして、椅子から飛び降りで暴れ回る。

「辛い辛い辛い辛い辛い辛い辛い辛いっ!!!」

──────計画通り。

「刀夜!水っ!」

流石に可哀想だ。俺は自分の持っているコップを唯月に渡す。

唯月は強引にコップを受け取り、水を飲む。残ってい水全部を。 俺の分が無くなった、、、。

「もうっ!刀夜のバカ!バカバカバカバカバカバカ!!!」

いや、元凶はお前なんだからな。

「刀夜なんか、こうしてやるっ!」

「や、やめろっ!バカ!」

唯月は激辛ケチャップを俺のオムライスにかける。大量に。 だから、俺もやり返した。

このやり取りがずっと続き、気がつけばオムライスは激辛ケチャップで埋めつくされていた。

「や、やりすぎた────」

「刀夜、これ食べて」

「嫌だ、自分で食え」

「うぅ、、、」

その後、俺達は大量の水を飲みながらオムライスを食べた。 死ぬかと思ったわ。


「あー、まだ口の中がヒリヒリする」

「刀夜のせいだからね!」

「はいはい、悪かったな」

だから元凶はお前なんだよ。

俺達は無くなったケチャップと水を買うため、いつもの場所に買い物に来ていた。

留音るねー!留音ー!」

子を呼ぶ親の声が聞こえる。どうやら迷子らしい。

「どうしたんだ?」

「あっ、あのぉ娘が迷子になってしまいまして」

娘が迷子か。さて、ここは俺の出番だな。

俺はその留音という子の特徴を教えてもらい、探す事にした。

「さてと、何処にいるんだか」

「あの子じゃない?」

「見つけたんかよっ!はえーな!」

唯月が指さす場所に、母親を探すらしき子の姿があった。女の子だし、間違い無い。

「ねえ君、お母さんを探して────ぶふぉ!」

俺が話しかけた瞬間、少女は俺を蹴り飛ばして逃げていく。

「いってぇ、、、くっそこいつ」

「刀夜、追いかけよう!」

唯月が俺の手を引っ張る。頑張って引っ張ってるのだが、力が足りず1歩も動けていない。

「刀夜!自分で歩いて!」

「足いてぇんだよ!」

「もう!刀夜の弱虫」

なんだとこいつ、ムカつくな。つーかこいつ、こんなにムカつくクソガキだったか?

いや、今は争ってても仕方がない。痛みも引いてきたころだし、探すとするか。

俺が立ち、少女を探そうとすると後から声が聞こえる。

「はっ」

「あん?」

「─────────────────」

数秒、二人は見つめ合い

「いたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

どうやらあの少女はここを1周してきたらしい。それでここに戻ってきたということか。

「次こそは────」

俺は逃げようとする少女を追いかける。仕方がないので唯月は背負っていこう。

「あっ、ちょっと─────え?」

途中あの警察の人がいた気もするが、今はそんなの気にする必要はない。つーか唯月背負いながら走るの結構きつい。だが、もう終わりだ。

俺は少女を行き止まりまで追い詰めた。

「ぜぇ、、ぜぇ、、手こずらせやがって。さて、俺と一緒にこい」

俺が少女に手を出そうとした───時だった。

「ガチャ」

「え?」

俺の手から鎖の音がした。

「えーーーっと、藤宮刀夜くん。君を幼女誘拐未遂犯として逮捕する」

それは、あの時何回か助けてくれた警察の声だった。

「──────────────は!?」

自分でもこの突然の状況に混乱する。だが、すぐに冷静さを取り戻し今の状況を確認する。

うん、俺の人生終わった。

「くそがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

俺は心から叫んだ。

こんな事なら迷子の子なんて探すんじゃなかったと、初めて自分の正義に後悔した。

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