第13話 殺人鬼の恋
「あーあ、あいつか」
「そうだ。お前以外にも俺の正体を知ってる奴がいたとはなあ」
俺はあの警察と関わった後、食品店で勇武と会っていた。最近よく会うよなこいつ。
唯月は俺の背中でぐっすりと寝ている。
「まぁ、あいつは悪い奴じゃないぜ。そうじゃなきゃお前既に牢屋行きっつーか死刑だったかもしんねーんだぞ」
「死刑────」
死刑。それは簡単に死を意味する。確かに死ぬのは俺にとっても怖い。でも、それ以上にもう唯月の側にいられなくなるのが1番怖いのだ。
「やっぱ、怖いのか」
俺の表情で察したのか、勇武が言う。
「──────まあ、うん」
「俺やあいつにもお前の手助けをするには限界があるしな。まぁここの警察が無能揃いのくせに俺とあいつが超有能だけど」
「有能とか、自分で言ってんじゃねぇよ」
このまま逃げるか、それとも自首するか。
確かに俺は戦うと決めた。でも、今冷静に考えてみればそう簡単に決まるようなものじゃない。
─────死刑──────。
その言葉が、頭の中から離れない。
これからどうしたらいいんだろう。いつかは、唯月と離れないといけないのだろうか。
「まっ、じっくり考えておくか」
そう、時間があるかなんてわからないのだが。
「じゃあな勇武。またどこかで」
「ああ」
そう言って、俺はその場を去る。唯月も寝ちゃってるしそろそろ帰るか。
「あー疲れたー」
帰ってきた俺は、リビングにあるソファに唯月を寝かせる。
つーか、俺も疲れた。唯月背負いながら歩いたわけだし、少し休むか。
俺は、唯月の隣の1人分空いたソファーのスペースに横になる。
「─────っ」
近い。唯月の顔が、ものすごく近い。いつも可愛いって思っていたが、近くで見ると本当に可愛いなって改めて思う。いや、なんかもう可愛いという言葉しかでてこない。
やばい、寝息がはっきり聞こえる。もう少しで、後、、少しで────────────
「って、何やってんだ俺!」
突然冷静になり、大きな声を出してしまう。
「んんっ、、」
「あっ、悪ぃ唯月」
そしてその俺の声で、唯月が目を覚ます。
「と、刀夜っ!」
唯月が顔を真っ赤にする。俺は唯月の表情で自分が横になったままだということに気づき、焦りながらソファから降りた。
「す、すまん」
「う、うん」
手を繋いだり、背中で寝てたり、全裸見たりとか色々あったが、こんな展開は初めてだった。
「ど、どうしたの刀夜?」
ソファに座る唯月がもじもじしながら言う。
「何でも、、ない」
胸の動悸が収まらない。深呼吸をするのが苦しくてできそうにない。
そして、何故かわからないけど落ち着かない。
「くっそ落ち着かねぇ」
俺はこの感情に少しイライラを感じながら風呂場へと向かう。風呂に入ってれば少しは気持ちが落ち着くだろう。
できたてでまだ熱いはずなのに、今日は何故だかそんなの感じなかった。
「どうしてだろう」
お風呂に入ったはずなのに、まだ収まらないどころか悪化していくばかりだ。
今回ばかりは唯月のことを忘れてたいのに、忘れられない。それどころか、俺の脳内すべてを唯月が埋めつくしている。
「と、刀夜、、、」
「頼むから、今は俺の頭から離れてくれ」
「刀夜」
「離れてくれ!!」
「ひゃっ!ご、ごめん」
突然、幼い少女の声にびっくりして我に返る。
扉の前では、全裸になった唯月がもじもじしながら待っていた。
「す、すまん」
俺は唯月だと気付かずに怒鳴ってしまったみたいだ。 本当に今日はおかしい。
「うんん。ねえ、一緒にいい?」
「─────え?」
それは、簡単に言えば唯月は俺と一緒に風呂が入りたい。そう言っているようだ。
突然のこの状況にもはや言葉すらでない俺。少し間を置いたが、俺は無意識に首を上下に降っていた。
「ありがとう───」
唯月は空いたスペースに入る。入浴剤の影響か真っ白な風呂の色と唯月の肌の色が一緒のように感じる。 とても真っ白で、綺麗だ。
「むぅ」
「え?」
「お願い、このままにさせて。こうしないと落ち着かないから」
唯月が俺に寄り添う。小さな手で俺の腕をしっかりと掴んでいる。
胸の動機の激しさが更に増し、唯月のことしか考えられなくなり、そして落ち着かない。
落ち着かないから離れて欲しい。そのはずなのに、心のどこかでずっとそのままでいて欲しいと思っている俺がいる。
「なあ唯月」
「どっ!どうしたの刀夜」
「俺、先にでるぞ?」
「身体、洗ってないよ?」
なんか、今日は洗う気にならない。
俺は唯月の腕を離し、風呂を出る。それと同時に唯月も風呂を出た。
「真似すんなよ。つか、お前こそ洗ってねーじゃねぇかよ」
「なんか、洗う気にならない」
「そうかよ」
やっぱ、唯月が一緒にいて安心する。単純に大切な人だというのもそうだが、それとは違う何かが、そうさせている。
「唯月、今日ずっと俺の側にいてくれ」
「─────え?」
俺の言葉に戸惑う唯月。普段から俺はそういう事を言うような人間じゃないし、戸惑うのも無理はないだろう。
「─────うん」
唯月は戸惑いながらも頷いた。
正直、どうしてこんなこと言ったのか自分でもわからない。
いや、もしかしたら──────────
───────俺は唯月に、恋をしてしまったのかもしれない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます