第11話 殺人鬼と幼女の約束
──────やめてくれ。もう、やめてくれ。
でも、俺の声なんて
「痛い!やだ!やめて!痛い!痛いよ!痛い痛い痛い─────────」
唯月の叫び声が聞こえる。もう、もう聞きたくない。今すぐにその声を止めたい
「ほら!ほらほらほらほらほら!!」
不良達が不敵な笑みを浮かべながら唯月を蹴り飛ばし、殴る。
「くっそがああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
俺のせいだ。俺がちゃんと唯月をみてあげられなかったから、俺が弱かったから、俺が、俺が──
俺は、初めて自分の弱さに気付いた。
「くそっ、、、くそっ、、、」
もう、声を出す力さえ残っていなかった。
「なぁ、こういうのはどうだ?」
響也は俺に見せるようにナイフを出した。
俺はすぐに察した。
「やめろっ!」
だが、響也はそんな声など無視して唯月の腕を刺した。
「いやぁぁぁぁぁ!!!!」
唯月が叫ぶ。もう、こんな声なんて聞きたくない。
「どうだ?痛いだろ?じゃあさ、この痛みをすぐに無くしてやるよ!!」
響也はナイフを高く上げる。
「最っ高に面白い絶望を見せてやるよ!」
殺す気だ。響也は唯月の心臓を狙って、ナイフを下ろした──────────時だった。
「いってぇ!!くっそお前!」
響也の頭に何かがあたったらしく、俺の方を見る。だが、俺は拘束されて動けない。
「んなっ、お前じゃない?なら一体誰が」
「俺だよ―─――――――」
俺は、その声に聞き覚えがあった。いや、それは前にも言ったか。
「遅くなってすまないな、刀夜」
「い、勇武?」
「ああ。お前が必死で走っていくのが見えて、何かあったのかって探していたんだ」
「ったく、超有能探偵がここにくるまでどんだけ時間かけてんだよ」
路地裏の入り口に立つ影。間違いない、あれは俺の悪友だ。
勇武に気を取られているのか、不良達の手が止まり、力が抜けている。
俺はその瞬間に不良の手を振り払い唯月の元へとかけつけた。
「唯月!!」
どこも傷だらけで、腕からは大量の血が流れ出ていた。もはや息をしているだけでも精一杯というような状態だった。
「とう、、や、、」
唯月が微かに目を開け、その小さな声で俺の名前を呼ぶ。
「喋んな!」
「あり、、が、、、と─────」
弱々しい声でそう告げると、唯月はそっと目を閉じた。全身の力がぬけ、俺の頬を触っていた腕が落ちる。
「唯月──────」
俺はそっと唯月を床に寝かせた。
痛いだろうけど、もう少しだ。もう少し、俺の我がままに付き合ってくれ。
そして、響也を睨んだ。
「は?何その目?負け犬ごときが─────っ」
「────────っ」
「なんだよその技!」
正直、俺にもわからないけど、これだけは確かだ。
──────今の俺は、もう誰にも止められない。
「こっちの下っぱは任せろ!刀夜!!」
勇武が下っぱ5人の相手をする。まあ、元武闘派不良の勇武ならどうにかなるだろ。
だから俺は、
もう、嘘なんてつかない。もう、後悔なんてしたくない。 だから、今度こそは絶対に
「うあああああああああああああああああああ!!!!!」
俺は、響也を刺した。
勢いに負けたのか、響也がその場に尻餅をつく。
「まだだ!!」
だが、響也はすぐにナイフを取り出し立ち上がろうとした─────────が
「なっ、動けない!!誰だ!」
「だ、、め、、、。動いちゃ」
響也の腕を止めたのは、唯月だった。
「くそっ、ガキの力ごときが!!」
唯月はもはや力を出す力すら残ってない。そのため、すぐにその腕は振り払われた。
だが、それだけでも充分な時間稼ぎだ。
「刀夜!こっちは終わったぜ」
勇武が下っぱ全員を片付け、俺に言う。
本当にタイミングが良すぎるぜ。
「だからお前も、ここで死ね!」
「くそっ、待て!待て、やめろっ!!」
「死ねええええええええ!!」
叫び声とともに、俺は響也の胸を───刺した。
「あっ、ぐがっ」
響也は胸を抑え、苦しみながらその場に倒れる。数秒もがいていたが、やがてその動きは止まった。
───────────死んだのだ。
「はぁ、、、はぁ、、、」
「おーい刀夜、この下っぱ達は殺すか?それとも警察送りか?こう見えて俺探偵だし俺が殺すのは勘弁だぜ」
「決まってるだろ」
俺は後ろを向き、そして勇武に告げる。
「────────殺す」
と。
俺は応急処置で何とか助かった。また唯月もひどいけがを負い3日間ずっと病院で寝たきりだったが、命に別状はなかったようだ。
後にその路地裏の事件は勇武のおかげで不良達の喧嘩により死亡という形で幕を閉じた。
そして、唯月が目覚めた日
「んっ、、うん、、」
「唯月!」
唯月は、少し唸りながらそっと目を開ける。
「とう、、や」
「唯月っ!!!」
その瞬間、俺は唯月を抱きしめた。これ以上力が出ないほど、そしてもう二度と離れないように強く。
その時、俺は初めて──────泣いた。
「唯月!ごめんな、、お前を守ってやれなくて本当にごめん!ごめん、ごめんごめんごめんごめんごめんごめん──────」
何度だって言ってやる。何度だって叫んでやる。
この声が枯れるまで、何度だって謝ってやる。
「刀夜、ありがとう。助けに来てくれてありがとう──────ずっと、信じてた」
唯月が小さな声でそう囁いた。
そして唯月もまた、泣いていた。
「もうお前を二度と離さない!絶対に!絶対に離さないって誓う!!」
「私も、ずっと刀夜の側にいるって誓う!!」
今思えば、最近俺の目的が幼女を守ることから唯月を守ることに変わってた気がする。
でも、そんなのどうだっていい。
だって、今目の前に唯月という大切な人がいるのだから。
────唯月、大好きだ───────
そう、俺は心の中で囁いた。
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