第10話 罪と幼女と殺人鬼

「お前を殺す!」

「へぇ、じゃあ殺してみろよっ!」

響也が俺の腹を殴る、と同時に俺は響也の頬を斬った。どちらも容赦がない。俺は久しぶりに感じる痛みに腹を抑える。唯月を抱きながらのため、本来の力が出しにくい。

「へへ、痛がってんじゃねぇかよ」

「はは、悪いか?」

「へえ?俺を殺すとかほざてたのにかよっ!?」

もう1発、響也が俺に拳を入れる。だがそれを利用し俺は響也の拳に向かってナイフを刺した。

「いってぇ!!」

よほど深く刺さったのか、響也が自分の右拳を抑えながら叫ぶ。

「オメェも痛がってんじゃねぇかよ」

「お前よりは痛がってねぇよ」

俺と響也、二人の殺し合いが勢を増していく。だがそう長くはしていられない。俺の元には唯月がいるし、暗くなる前には帰りたい。

痛い、痛い、痛い。いや、俺に殺された奴らは皆それ以上の痛みを感じているのだろうか。

俺の脳裏に、当然今まで殺した奴らの顔が蘇った。

「待ってろ唯月、すぐ終わらさる」

そう俺が言った途端、その言葉に何が気付いたのか、一瞬だが響也がにやけた。そして───

「ふんっ!」

「いやぁっ!!!」

「っ!、くっそテメェ!!」

響也は血塗れの右腕を強く握りしめると、俺の腹を目掛け――――――――いや、唯月の背中に向かって殴った。

いや、それだけじゃない。響也は隠し持っていたナイフを同じ場所に刺した。幸にも、ナイフはそこまで深くは刺さらなかったようだが。

「痛い、痛いよ、痛いよ」

「大丈夫か唯月!!」

俺はすぐさま唯月を確認する。よほど思いっきり殴られたのか、唯月はずっと背中を抑えて泣く。

唯月の背中と掌は血の色で真っ赤に染まっていた

「ほらほらぁ?この子を守るんじゃねぇの?」

「――――――――――――」

なんだろう、この感情。自分をコントロールできない。ただ、目の前の敵を消したい、殺したい、ただそれだけの感情が俺の脳内の全てを支配しているようで、まるで理性を失ってしまいそうな、そんな感情だ。

今までに感じた事がなくて、いや、こんな気持ち、初めてだ。

でも――――わかる。この感情、これが、これが本気で怒るということなんだと。

「――――――っ!」

俺は響也に向けてナイフを刺す。俺の圧倒的な殺気を感じたのか、咄嗟に避けた響也は右肩にナイフが深く刺さった。

「ぐぅっ」

響也が右肩を抑える。いやそんなのどうでもいい。俺はすぐさまナイフを抜き、次は頭、心臓、首、、、。 考えるよりも、体が勝手に動く。もはや自分が自分でない感覚だ。

「くそおおおおおっ!!!」

響也は大きな叫び声と共に、俺を押し倒した。俺が向けたナイフは狙いが大きく外れ、耳を少しかすっただけだった。

押し倒された俺は唯月とともに一瞬身動きが取れなくなる。 その一瞬を、響也は逃さなかった。

「っへへ、手こずらせやがってよ」

俺と唯月は下っぱ不良に押さえつけられる。響也のことに夢中でこいつらのことをすっかり忘れていた。

「くそっ、くそくそくそくそくそくそくそ!!」

やばい、壊れそうだ。

「さぁて、料理の時間だ。最高の絶望から与えてやろう!!」

響也は俺の抱いていた唯月を無理矢理引きずり出す。

「やっ、やめて!刀夜、助けて!助けて刀夜!!刀夜!やだ、やだ!やだ!!」

「くそっ!!やめろっ、やめろぉぉぉぉぉ!!」

響也と俺を抑えてる3人以外の不良が不敵な笑みを浮かべ、そして─────────


「頼む、、やめてくれ」

俺は、目の前で悲惨な光景を見ることとなる。

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