第5話 幼女、ゲームをする

数日後、俺が殺した二人の遺体が発見された

警察は連続殺人と関連性が高いと見て捜査をしているようだ

テレビには唯月の家や捜査をする警察、そして探偵である悪友の勇武の姿が映っている

「なあ唯月、どう思ってるんだ」

「えっと、パパとママには悪いことをされました。でも、やっぱり、、、」

唯月の言葉が詰まる。やっぱり複雑な気持ちなのだろう

しかし唯月は首をふり、続けた

「いえ、最後の別れはもうしたんです。そして、私は刀夜と一緒に生きるんだって決めましたから」

「そうか」

それならなお、俺が殺人鬼であることを隠し続けなくてはならない。何よりも唯月のために、そして俺自身の正義のためにも

だからこそ俺は、殺人鬼でありつづける


「唯月、出かけるぞ」

「はい!」

先程までの感情とは一変し、急にはりきりだす。やはり幼い子供だ。と言っても俺もそれが目的でそう言い出したのだからとても都合が良い

「今日はお前が行きたい所でいい。だからぜってーに俺の行きたい所とかいうんじゃねーぞ」

「うん!」

しかし店の名前がわからない唯月は少し考えた後、俺の手を握り走り出す

「ここ!!」

着いた場所は普通のスーパーだった

唯月は中に入り、そのまま目的地まで俺を引っ張る。着いた先には少し大きめのゲームセンターがあった

「ゲーセンかー。つーかどこでこんな場所知ったんだよ」

「この前行った時に見たの。面白そうだったから行きたかった」

おそらく先日晩飯を買いに行った時だろう。丁度同じ店だし、食品店はここの隣だし

「ほらよ、これ小遣いだ。無くなるまで存分に遊んでこい」

俺は唯月に5000円札を渡す。昨日あの二人を殺した後、財布の中身をこっそり奪っていたのでしばらくは金に困ることはないはずだ

俺は今までの疲れが溜まっていたので、ベンチに座って一休みしようとした

「ねえ刀夜」

一休みしようとした、、、ところに唯月が声をかけてくる。3秒も経ってない

「はえーなおい!一体どんな使い方したんだよ!」

「おっきくて穴の中に入らないの」

「は?何言ってんだ?」

これ大きいの。だから穴に入らないの

「あー、なるほど。分かりずれぇ説明してんじゃねーよ」

さて突然だが問題だ。一体唯月は何が言いたかったのだろうか───────

答えは札束をどうすればいいかだ。両替ができないとか、金を入れる所に入らないでも正解だ

「これはだな」

俺は唯月の手に持つ5000円札をとり、両替機の中に入れる

「あっ」

「安心しろ食べられた訳じゃねぇ」

まあそういう反応になるとは思っていたが

両替機から5000円札と引き換えに100円玉じゅうぜにと1000円札が出てくる

「あ、変わっちゃった、、、」

「大丈夫だ。んで、お前がやりたかったってのはどのゲームだ?」

「こっち」

唯月は俺の手を取り走る、、、事はなく隣を指さした

「そか。んじゃあこの小さいやつを入れてみろ」

唯月は言われるがままに金を入れるところに100円玉を入れる。すっぽりと入る100円玉を見て唯月は感激し興奮した

「刀夜!見て!入ったよ!」

「あぁそうかいそうかい。んじゃ俺は休むから」

「あ、待って刀夜」

「今度は一体なんなんだよ!こっちは寝てぇんだよ!」

「これ、どうやってやるの?」

「はあっ!?やり方わっかんねぇならなんでやりたいとか思ったんだよ!!」

唯月がやりたいゲーム。それは棒を穴に入れるあのゲームだ

「これはだな」

俺は自分の100円玉を入れて手本にと始める。このゲームはなかなか難易度が高い。というより俺自身も初挑戦だ

「これ太すぎねぇか、、、」

よく見れば穴の大きさと棒の太さがほぼ一致しており、ちゃんとした位置じゃないと絶対に入らないやつだ

この棒を穴に入れることに成功すれば、そりゃまあいいことはあるんだがな。何しろそれなりに価値のある景品が手に入る

「唯月、どれがほしいんだ?」

「これ」

唯月は指さす。指さしたゲーム機だ

「じゃあやるぞ。これはな、、、」

俺はボタンを押して棒を動かす。そして穴に入れようとしたが、全然入らなかった

「まあ、これを入れればいい訳だ。そしたら景品が手に入る」

「そうなの?でもなんで刀夜は入れなかったの?」

「うっせぇ!難しいんだよこのゲーム!」

「そうなんだ、、、」

そう言うと唯月は100円玉を入れる。ゲームを始めた瞬間、唯月の目はただそこだけをじっと見つめていた。

そして、その棒を穴に──────


──────────―──――――――








「残念だったな」

唯月はしょんぼりしていた。まさか5000円全てをあのゲームに掛けるなんて

「これやっから、泣くんじゃねぇよ」

俺は唯月がゲームに夢中になってる時に買ったネックレスを渡す。少し長い気がするがそんなの気にしない

「これは?」

「ネックレスだよ!アレキサンドライト。1番高いやつ選んでやったんだからな!」

「キラキラしてる!ありがとう刀夜!」

唯月の目が変わった。やっぱりこっちの唯月の方が全然可愛いや

そういえば、いつの間にか唯月の敬語が無くなっていた

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