セントブリーデン(2)

 夕食の席にギヨームは現れず、ゲイラが予告したように、料理は唸るほどあった。

 ランチが軽かったので、僕にしてはたくさん食べられたんじゃないかな。もちろんヤスミンはいつも通りのマイペースで、食事よりデザートを主にやっつけていた。焼き菓子が何種類もあったので、頑張るという言葉に二言は無かったわけだが。

 食事中、ヴィクトールは殆ど口をきかなかった。仕事の件で僕にいくつか話しかけてきただけだ。それも一方的に。そして、酒飲みらしくあまり食べずにさっさと部屋に戻ってしまう。夫人と娘はそんな彼に全く頓着せず、熱心にヤスミンに喋りかけていた。女同士の会話は本当に楽しそうで、終わりが来るとはとても思えない勢いだ。

 話しかけられないのを幸いに、僕は料理を堪能するのに集中した。素晴らしく美味いというわけではなかったが、それぞれが丁寧に作られていて、しっくりと胃の腑に落ちていく。

 僕の腹がそろそろ限界という頃に、ヤスミンと目が合った。彼女は薄く笑って、小さく欠伸をしてみせる。それが食事終了の合図になる。母娘は名残惜しそうに、僕らにオヤスミを言った。

 客室は三階だった。同じ階にゲイラの部屋があり、二階に夫妻と息子の部屋がある。一階は、キッチンや風呂がある、生活をする場所だ。

 この部屋の割振り方からも、ゲイラはいずれ家を出て行くことを前提とされているのが分かる。ここまで露骨な扱いをされて育ったのなら、彼女が意地になるのも当然だろう。

 客室は、応接室ほど無愛想ではない。ベッドカバーや壁の絵画が明らかにフィオナの趣味で、およそ行き過ぎた無機質さを緩和している。おかげで統一感は無いのだが、却って、この部屋に居る者に安らぎを与えてくれていた。家族が一緒に過ごす居間は、得てして雑多な物に溢れがちだが、それを彷彿とさせるのかもしれない。要するに、当たり前の生活感があるんだ、この客室には。

「ちゃんとしたお部屋じゃなく、屋根裏みたいな所の方がよく眠れたりするのよ」

 柔らか過ぎる羽根枕にひとしきり文句をつけてから、ヤスミンが言った。

「ああ、子供の頃、そういうのに憧れたなぁ」

「今だってチャンスはあるわよ」

 確かに、そうかもしれない。

「でも、僕の図体が狭い所に収まるだろうか」

「意外と大丈夫なものなの」

「ふぅん」

 どうにも想像がつかないが、色々な経験をしているこの子が言うなら、そんなもんなんだろう。

「それにしても、妙な仕事を紹介されたものね」

「妙ってことはないよ。よくある仕事だ」

 ただ、社員寮の管理人というと、僕みたいなのじゃなく、もっとしっかりしてて働き者で、睨みの利く人物がやるものだからな、僕が知る限りでは。

「ゲイラの親父さんは『とりあえず』って言ってたからね。だから本当に、その言葉通りなんじゃないかな」

 ありていに言えば、間に合わせだ。

「最近、出来たばかりの寮だって言ってたわね」

「うん。社員もまだ二人しかいない」

 賄いのおばさんは居るらしいので、僕は力仕事を期待されているんだろう。誰とでも取替えのきく従業員。

「私たち、何年も居るわけじゃないものね」

「そう。だからちょうどいい」

「私たちも、その寮に住むのよね」

「管理人室があると言ってたからね」

「住み心地が良いといいなぁ」

「そうだね。ホテル暮らしは少し疲れたよ」

「あら、ひ弱ねぇ」

 僕の弱音に、ヤスミンはケラケラ笑った。



 ヴィクトールが持っている縫製工場の社員寮が、新しい僕の職場だ。フルフラン家に泊まった翌日、ゲイラが、僕とヤスミンをそこに送ってくれた。

「私も、父の会社で働いているの」

 彼女が秘書をやっているのは貿易会社で、それがフルフラン家代々の商売らしい。

 縫製工場は、古い友人から譲り受けたものだそうだ。と、いうのは表向きで、借金のカタに貰ったというのが本当らしかった。

「父は、商売には幾らでもお金を注ぎ込むのよ」

 それが家族には不満のタネなのだと、ゲイラは言外に匂わせた。わざわざそんなことを言ったのは、目の前にある新築の社員寮が、鉄筋造りの五階建てだからだろう。寮というより洒落たマンションみたいだ。

「でかいなぁ」

「立派な工場ですもの。設備も新しくして、社員も新規で募集してるのよ。もう地方からたくさん応募がきてるわ」

 ゲイラが誇らしげに言うので、この人は自分で思っているほど父親が嫌いなわけじゃないのかなと思った。というか、やはり、これらの事業が遠からず自分の物になる公算が高いと信じているのかも。あの兄貴も、恐らくは父親の会社で働いているんだろうが、よほどボンクラなんだろうな。

 緑色のピカピカした門を開き、玄関でチャイムを押す。ビックリするほど大きな音だ。まるで警報のようだ。ヤスミンが大袈裟に顔を顰めて、耳を塞ぐ。

 うるさいチャイムが鳴り止み、しばらくして鍵を回す音がして扉が開いた。

「おや、お嬢さんでしたか」

 顔を出したのは、黒髪をひっ詰めた気の強そうな小柄な女性だった。年はフィオナと同じくらいだろうか。化粧っけのない顔で、ゲイラの後に立っている僕に遠慮のない視線をぶつけてくる。

「ああ、その人が社長の紹介の?」

 そして、ぶっきらぼうに言葉を続けた。

「おはよう、ザカリーさん。ええ、この方に管理人をお願いすることにしました」

 ゲイラは、相手の不躾さに苦笑しつつ、僕を紹介する。

「初めまして、ジード・ハンブリッグです。こっちは妹のヤスミン」

「ジードさんね。私のことはモリーって呼んでね。背が高いのね。助かるわ、早速頼みたいことがあるの。あなた、掃除は得意? どうも私じゃ高い所の掃除が行き届かなくてね。まぁ、本来は私の仕事は炊事だけなんだけどね。どうにも気になる汚れがいくつかあるのよ」

 僕のことを上から下まで眺めまわし、モリーは早口でまくし立てた。そして、途中でヤスミンに視線を移し、目を丸くする。

「まー、綺麗な子だね! 兄さんとは、えらい違いだ」

 これだけズケズケ言われると、腹が立つより笑ってしまう。良い人だとは思わないが、こういう人物の方が、僕は付き合いやすい。

「あはは、よく言われるんですよ、それ」

 柄にもなく愛想笑いをすると、モリーは満足げな顔をした。ゲイラは困ったような表情だが、ヤスミンは子供らしくニコニコしている。

「妹さん、お菓子は好きかい?」

 モリーは、ヤスミンの頭を撫でて訊いてくる。

「好き過ぎて困ってますよ」

「子供ってのは、そんなもんだ。いいものがある。立ち話もなんだから、食堂に行こう」

 男のような喋り方でモリーは、僕らを建物の中へ迎え入れる。

 広い玄関ホールは綺麗に掃除されていて照明も明るく、入ってすぐ左側に、食堂へ続く立派な扉があった。その扉は上半分がガラスで出来ていて、食堂の中が透けて見えるのが開放的で、感じがいい。

 モリーは、自分のテリトリーをしっかり磨きたてる性分なのだろう。大きなテーブルと椅子が並んでいる食堂内も、清潔感に溢れていた。見晴らしの良い窓から、芝生を敷いた庭が臨む。小さくて白っぽい平屋の建物が、すぐ近くにあった。

「あれが管理人室だからね」

 僕の目線に気付いたモリーが、先回りして教えてくれる。

「後で案内するけど、とりあえず、少しゆっくりするといいよ」

 テキパキと僕らに席を勧め、コーヒーとミルク、そして菓子の乗った皿を持ってきた。

「マロングラッセだ!」

 皿を覗いたヤスミンが、歓喜の声を上げた。

「私は、これが得意でね」

 モリーが自慢げに言う。

「手作りを食べるのは久しぶりだわ」

 ヤスミンは、言うが早いかマロングラッセを一つ摘まんで口に放り込んだ。その顔が幸せそうな笑顔になる。言葉よりもずっと、どんなに美味しいかが伝わってくる。

 僕も遠慮なくいただいた。大粒のそれは素敵に甘く、濃い目に淹れられたコーヒーとよく合う。

「美味しいですねぇ」

 素直な感想が口をついた。

 ゲイラはこれを食べるのが初めてではないらしく、蜜でツヤツヤしている栗の菓子を、ゆっくりと味わっている。

「ザカリーさんのお料理の腕は本当に凄いわ。苦手なものって無いんですか?」

 ふたつ目のマロングラッセを手にとって眺めながら言うゲイラに、モリーはますます得意そうに鼻をうごめかせた。

「私の唯一の自慢だからね。苦手なんてあるわけない」

 途方も無い自信だ。ここまでの自信家だと、逆に清清しい。

「ねぇ、あんた。ジードさん」

 モリーは自分でも菓子を摘まみつつ、僕に話しかけてくる。

「ここにいる間は、食事に関しては何の心配もいらない。私は料理が好きだし、食べたいものがあれば、言ってくれたら作るよ。もちろん予算はあるけど、社長はたっぷり費用をくれてるからね、今ンところ」

 ちょっぴり毒のある物言いから察するに、この人は、ヴィクトールに思うところがあるんだろう。

「楽しみです」

「何か好きな食べ物はある?」

「僕はミートパイとローストビーフが好きです。魚も好きですが。妹は、海老グラタンと…お菓子なら何でも好きですね」

 少し図々しいかとも思ったが、こういうタイプの女性には、ハッキリと要望を伝えた方が良い事は知っている。

「ん、分かった。酒は呑むかい?」

「いえ。好きではないので」

 僕の答えに、ゲイラは声を裏返す。

「嘘でしょ? あんなに強いのに」

「実は、そうなんだ。美味しくないし、酔わないんじゃ面白くもない」

 モリーが愉快そうに笑う。

「いいね、管理人向きだ。用事がある時に酔い潰れてるんじゃ、役に立たないからね」

 このつまらない体質を褒められたのは、初めてだった。

「そうだ。僕は何をしたらいいんです?」

 僕は、事務仕事しかしたことがない。

「アパートに住んだことあるだろ? そこに管理人が居たはずだ。同じことをすればいいよ。電球を替えたり、壊れた所を修理したりね。それに加えて、夜中に建物周辺を見回って欲しい。なんたって、ここは女子寮だから」

「えっ!?」

「あら、言ってなかったかしら」

 僕は大声を出し、ゲイラは呑気に言い、モリーは面倒臭そうな顔をする。

「なんて声を出すんだ。女の子が怖いわけじゃないだろ?」

「そりゃ、もちろんそうですが…」

 なんだか不安になり、つい言葉を濁してしまう。

「用心棒というわけね」

 ヤスミンははしゃいで、キラキラした瞳で僕を見る。おかしくて堪らないんだろうなぁ。



 お茶の後、ゲイラは名残惜しそうに帰っていった。また来ると言っていたが、何をしに来るんだろうか。ヤスミンに菓子の土産でも持ってきてくれるといいんだが。

 案内された管理人の住居は、なかなか居心地良さそうな所だった。

 寝室とリビングはそれなりの広さだし、小さいキッチンも備わっている。湯を沸かすのはもちろん、簡単な料理もできそうだ。ベッドは二つあり、リビングにはテーブルと、ゆったりしたソファもテレビあって、こんな所に住める上に給金まで貰えるとは、おいしい話だ。しかも、ゲイラから聞かされている金額は、安いものではない。

 だから、僕が辞めても、きっとすぐに後釜が見つかるだろう。そう思うと気が楽になった。とりあえず、目の前にある仕事をやればいいんだよな。向いてるか、向いてないかなんて、考える必要は無いんだし。

「本当は、夫婦者を雇いたいのね」

 ソファに座って、モリーに貰ったチョコレートを食べながら、ヤスミンが言った。

「そうなんだろうね。夫に管理人、妻に料理人ていうのは、よく聞く話だ」

 現に、モリーは通いだと言っていた。僕が慣れるまでは、寮の一室に仮住まいするようだが。

 寮には、まだ二人の社員しか住んでいないらしく、僕は本当に間に合わせなんだなと改めて思う。

「しばらくは、あの人のご飯を食べるのね」

「お菓子も作ってくれるといいな」

「あんまり期待してないわ。あのマロングラッセは凄かったけどね。近くにケーキ屋さんがあったから、自分で買いに行く」

「そんな店あったかな」

「すぐ近くよ」

 全然気がつかなかったな。

「ちょっと近所を歩いてみるか」

 頼みたいことがある、とモリーは言っていたけど、今日のところは夕方まで自由にしていて良いらしい。

「駄目よ。あの人が休んでなさいって言ったじゃない。フラフラ出歩いてたら怒られるわよ」

「休んでろって、そういう意味なのかな」

「だと思う。だってあなた、顔色悪いから」

「え、そう?」

「疲れてるんじゃない? 私も疲れてるもの。少しお昼寝したい」

「そうか」

 言われてみると、そんな気がする。

 寝過ごすことは無いだろう。時間になったら、絶対に起こしてくれると思う。あのモリーって人は、そういう人だ。



 僕が寝惚けまなこで起き出す頃には、ヤスミンはすっかり身支度を整えていた。最初に出会った時に着ていた服に、珍しく安物の髪飾りで髪をまとめている。靴は、誰かに貰ったと言っていた赤のエナメルだ。

「その靴は、気に入ってなかったんじゃ?」

 僕が言うと、ヤスミンは目の前でくるりと回ってみせる。

「たまには、普通の子供らしいのもいいでしょ」

「君はいつだって子供らしくしているよ」

「それは褒めてくれてるのかな」

「君が、そんな気の抜けた格好をしてるのは、どうも見慣れないよ」

「あなたが、女性の服装にそんな感想を持つなんて、思いもしなかったわ」

 ヤスミンにからかい気味に言われて、自分でも驚いた。いつの間にか僕にも、そんな目が出来ていたらしい。

 ヤスミンに合わせたわけではないが、僕もさっぱりとした服に着替えて寮へ向かう。

 玄関は開いていて、食堂に入ると、笑顔のモリーが迎えてくれる。

「今夜は、ミートパイとフルーツサラダだよ」

 そう告げて、厨房に入って行く。

「あなた、気に入られたわね」

「そうなのかなぁ」

 女性というものは、あのローズのように気分が変わりやすいものなんだろうから、アテにはならない。

 パイの焼ける良い匂いに惹きつけられて、僕らは厨房に近づいた。調理台の上で野菜を刻んだり果物を切ったりしているモリーの手際はそりゃあ見事で、つい見入ってしまう。

「器用なもんですね。すごいな」

「こんなのは簡単だよ」

「何か手伝えることは、ありますか?」

 こっちへ視線も向けないモリーに訊いてみたが、大人しく座ってろと断られてしまった。やはりローズと同じく、自分の領域に立ち入られたくないタイプのようだ。

 僕らは食堂の隅のテーブルに座って、夕食まで庭でも眺めることにした。

「デザートはあるかしら」

 ヤスミンが、耳元で囁く。

「マロングラッセが、まだあるんじゃない?」

 僕も小声で返す。

「美味しかったね、あれ」

 よほど気に入ったのか、ヤスミンは溜息をつくように呟いた。確かに美味かったからなぁ。僕も、もう二、三個食いたいぐらいだ。

「ここには、どれくらい居るつもり?」

「それは君次第」

「そう…ありがとう」

「どういたしまして」

 陽が落ちて暗くなった庭に、照明が灯った。眩しいほどの光が目に痛い。

「明る過ぎだな」

「防犯上、これが正しいのよ」

「まあ、そうだけど」

 そこから、もし泥棒に出くわしたらどうするかという話になり、僕とヤスミンは、一目散に逃げるという意見で一致してゲラゲラ笑った。こんなことを言って誰かと笑い合うなんて、ちょっと前の僕なら考えられない。

「誰?」

 ふいに背中から声をかけられて、飛び上がった。

 振り向くと、若い娘が二人いる。派手な顔立ちをした子の後ろに、怯えた表情の子が隠れるように立っていた。

「誰ですか?」

 派手な方が、僕を睨んで硬い声でもう一度訊いてきた。多分、寮に住んでいる従業員たちだろうと察して、僕は慌てて立ち上がった。

「あ、僕は、管理人として雇われた者で…」

 なるべく愛想の良い声と表情と態度で自己紹介していると、厨房からモリーが出てきて、テキパキと僕らを引き合わせる。

 声をかけてきた方は、ベルタという名で十八歳。目鼻が大きいだけで特に美人というわけではないが均整の取れたスタイルで、背筋を真っ直ぐ伸ばした姿勢や、探るように僕を見る目つきから、気の強さが伺える。

 もう一人は、アデーレ。二十歳。年の割に幼い顔つきだ。美人の部類ではあるが、目立たない大人しそうな雰囲気の持ち主で、ほっそりと瘦せた体が弱弱しい。自分の名を言う声は、蚊の鳴くようなものだった。

 二人は、同じ村から出て来たらしい。

「ワイズ村って知ってます?」

 ベルタは人見知りしない性質らしく、僕が管理人だと知ると、警戒心を解いて笑顔で話しかけてくる。

「ああ、珍しい薔薇を造ってる所だよね」

 毎年、その珍種の薔薇を出荷する様子がニュース映像で流れている。薔薇だけではなく、花造りそのものが有名な村だ。

 自分の出身地の知名度が高いのを十分知っての上での質問だろうが、嫌味な感じはない。きっと、この人は生まれた村が大好きなのだろう。

「娘さん?」

 僕のシャツの裾を掴んでいるヤスミンに、ベルタは話しかける。

「ううん。私、妹よ」

「そうなの? ごめんなさい」

 大して悪いとも思ってない顔で謝られて、僕は苦笑するしかない。

「よく言われるの」

 ヤスミンが澄まして応じるので、女性陣は声を上げて笑った。ひとしきり笑った後、モリーは『さて』と全員を見回した。

「食事にしようか。みんな、お腹が空いてるだろ」

「運ぶのは手伝わせてくれるでしょう?」

「そうだね。お願いしようか」

 それじゃあ私たちも、と、娘たちとヤスミンも配膳を手伝った。

 全員で同じテーブルに着き、モリーの料理を囲む。ミートパイとサラダの他に、トマトスープと焼きたての丸いパンもある。夕飯にしては少し軽い気もするが、僕以外は女ばかりなので、こんなものなのかもしれない。もっとも僕は、男にしちゃあまり食べない方だけど。

「スペアリブも焼こうか?」

 モリーが、僕を見ながら言う。思ってたことが顔に出てたかな、とドキリとした。

「いや、これで十分です」

「そう? なんだか頼りないね。男はもっと食べなきゃあ」

 モリーはそう言いつつ、僕が頼りないのが何となく嬉しいみたいな顔をする。ローズといい、この人といい、若くて軟弱な男を世話するのが好きなんだな。どこが面白いのかさっぱり分からないし、当の若い男は、それが苦手な場合が多いんだが。

 食事中の会話は、モリーが中心だった。とは言え、彼女が自分の話をするんじゃなく、ベルタとアデーレに田舎の話をさせたり、僕らがこの街に来たいきさつを訊き出したり。

 モリーは、なかなかの聞き上手だった。だから、僕はこの人を警戒することにした。他人に興味を持ち過ぎる人間は、危険だ。

 それでも、この日の夕食はとても和やかだった。少なくとも、僕はそう思う。



 管理人は、朝から忙しい。

 七時に起床、玄関と門扉付近の掃除をする。

 僕が起きた時には、モリーはもう厨房を暖めて朝食の支度を始めているから、ヤスミンは食堂に置いてもらっている。これはモリーが言い出したことで、小さい子供を部屋で一人にしておくのは良くないというのが、彼女の持論なんだそうだ。

 朝の作業が終わると、これから仕事に出るベルタたちと一緒に食事をする。今は人数が少ないからそうしているが、十日後には大勢の社員が寮に入るのだという。そうなったら、僕らの朝食はもっと早いか、社員たちが出勤してからになる。

 朝はみんな忙しく、せかせかと飯を食い、僕はまた仕事に戻る。庭の芝生を刈ったり、玄関扉を磨いたり。仕事内容は、どちらかというと僕の苦手なことばかりだ。家事なんて、自分の分を適当にしかやったことないからな。

 厨房を片付けたモリーが、僕に掃除の仕方ってのを教えてくれる。ヤスミンは、優しい妹の顔をして、僕を手伝ってくれる。

 五階建てのこの寮は、三階から上に、寮に住む人たちの部屋がある。ワンフロアにつき四人部屋が六室。彼らのための風呂場やトイレや洗面所は二階にまとめられていた。いちいち階下に下りてくるのは面倒だろうなと思うが、慣れてしまえば何てことないのかもしれない。

 社員たちの部屋の掃除などは当然しなくていいが、廊下と、それ以外の階の掃除は僕の担当だ。その他にも電球の取替えや、破損した箇所の修理や、設備の不具合を業者に連絡し、修繕の立会いをしたりするのだ。僕みたいな気の回らない人間には気疲れする仕事だが、これもそのうち慣れるだろう。

 日曜日には休みが貰えるそうだ。それを聞いたヤスミンは喜んで、休日になったら、この辺りを見て回ろうと言った。その時僕らは、五階の廊下を掃除していた。僕はモップがけをし、ヤスミンは、乾いたウエスで部屋のドアノブを磨いて歩いていた。

 もうすぐ正午なので、モリーは昼食を作りに厨房に戻っている。

「ケーキ屋があるって言ってたね」

「それも楽しみだけど、自分が住んでる周辺の様子は知っておいた方がいいわ」

 周囲に気を配れ、とヤスミンはいつも言っている。長い放浪生活からの知恵なんだろう。この先、この子と行動を共にする僕も、それに倣った方が良いに決まってる。

 この街は大きいから、昼前から出かけて目いっぱい歩き回ろうなどと話をしつつ、廊下掃除を終えて一階まで下り、玄関ホールの隅にある洗面所で手を洗ってから食堂に入ると、もう昼食の用意は出来ていた。テーブルに、山盛りのサンドウィッチが置いてある。

 僕らの足音を聞いて、モリーは、お茶とスープの乗ったトレーを持ってきた。

「お疲れ様」

 そう言って、自分も席に着く。軽く頭を下げて、僕も座った。

「すごーい! 美味しそう!」

 ヤスミンは、目を輝かせてサンドウィッチに手を伸ばした。

「いただきまーす」

 言いながら、ハムサンドにかぶりつく。モリーのハムサンドは、ハムを何枚も挟んだ本格的なもので、いかにも美味そうだ。

 僕もヤスミンの真似をして、同じ物を食べる。

「子供がいるからカラシは使わなかったんだけど、不味くはないだろ?」

 モリーはお茶を啜りながら、僕らが食べる様子を眺めている。

「美味しいですねぇ…本当に大したものだ」

「お店を開けばいのに」

 僕らの賛辞に、機嫌良く微笑んでいる。

 昼飯の後は、モリーと一緒に二階の掃除をした。覚悟していた通り、水廻りの清掃は骨が折れたが、モリーに要領の良いやり方を教わって、最後の方には何となく自信がついてきた。ヤスミンも小さな体で手伝ってくれたが、僕よりも手際が良く、モリーが感心していた。

 掃除の際に出たゴミは、庭にあるコンテナにまとめて捨てる。各部屋から出る個人的なゴミも、各自でそのコンテナに捨てる決まりらしい。

「洗濯室は地下にあるからね。そこは明日案内するから、洗濯物があるなら揃えておくといい」

 その日の仕事終わりにモリーが言ったので、夕食後に管理人室に戻った僕らは、適当な袋にシャツや肌着を詰め込んだ。

「ケーキが食べたい」

 食後のデザートが無かったため、ヤスミンが当然のように主張し始める。まだ時間も早いし、僕もコーヒーが飲みたかったから、喫茶店を探しに行くことにした。

 食後の片付けをしているモリーに、散歩をしてくると声をかけ、寮の外に出る。

 ヤスミンが見つけたというケーキ屋は、本当にすぐ近くにあった。この寮は商店街を抜けた所にあって、買い物をするにも外食をするにも便利そうである。

 店内の窓際には、買ったものをその場で食べられるスペースがあったので、僕らはそのケーキ屋に入った。そんなに広い店ではないが、雰囲気は良い。

 店で食べて行きたいというと、店員がテーブルに案内してくれた。僕より少し若いと思われるその青年は、遠慮なくヤスミンに興味の目を向ける。が、そんな事には慣れている彼女にニッコリ笑いかけられて、慌てて視線を逸らしていた。

「一番人気のあるケーキをくださる?」

 ヤスミンは、そんな彼をからかって、大人のような口をきく。店員は面食らって僕を見る。僕は、彼に笑顔を向けるしかない。

「レモンパイはありますか? 僕はそれを。あとコーヒーをください。この子には、ホットミルクを」

 相手の目を見てゆっくり注文すると、彼も落ち着きを取り戻して、オーダーを繰り返した。

「ウチのオススメは、ちょっと特別だよ。楽しみにしておいで」

 最後には、ヤスミンにそう言って立ち去る。確かに、この子は普通じゃないほど綺麗だが、所詮は子供なのだと気付いたようだ。

 女の子というものは、年齢関係なく気取り屋な面を持っている。ということを、ヤスミンと一緒にいるようになってから勉強した気がする。だからといって、気の利いた行動が取れるわけじゃないところが情けない。

 店員が自信ありげな顔でヤスミンの前に置いたのは、どう見ても普通の苺のショートケーキだったが、ひとくち食べた彼女の顔つきが変わった。

 この子は何かを口に入れた時、すぐさま味の感想を言うのが常なんだが(それが嘘でも本当でも)今回は違った。妙に神妙な顔つきになり、時間をかけて、一口ずつ丁寧に味わい、食べ終わると小さく溜息をついた。

 いくら僕が鈍くても、これは相当に美味しかったに違いないと確信出来るほどの、分かりやすい反応である。

「もう一つ頼もうか? それとも、買って帰る?」

 僕の言葉に、彼女はきっぱりと首を横に振る。

「そんな雑な食べ方出来ないわ」

「雑って」

 変なことを言う、と笑いかけた僕を、ヤスミンは真剣な眼差しで見た。

「ジードがお休みの日に、また此処に来るわ。いいでしょう?」

「そりゃ構わないよ」

 僕が承諾すると、彼女はいい笑顔を浮かべた。

「ここは良い街だわ」

「次は、僕も食べてみようかな」

「絶対にそうした方がいい」

「レモンパイも美味かったけどね」

「じゃあ、それとシュークリームをお土産に買って帰りましょうよ」

「あの三人の分だね」

 そんな会話をしながら、通りを見た。

 喫茶コーナーはガラス張りになっていて、店の前を行き交う人々や、商店街の様子を眺めることが出来る。この店の向かいは花屋だから、なかなか良い感じだ。なんとなく花でも買って帰ろうかという気にもなる。もしかしたら、双方の店がそれを狙っているのかもしれない。

 なるほどなぁ…などと思っていると、目の前を、見覚えのある男が通り過ぎた。ヒューイじゃない。

 ゲイラの兄貴だ。小太りで顔色が悪くて…街灯に照らされた険しい横顔は、一瞬で僕らの前を歩き去って行った。

「家に戻っていたんだな」

「寮に行くのかしらね」

 ヤスミンが、ポツリと呟く。

「どうだろうね」

 確かに、あそこは彼の父親の持ち物だが、だからといって、あの男に用があるとも思えない。

 しかし、僕らは用心して、もう少し時間を潰してから帰ることにした。忙しく働いた一日の最後に、あんなのと顔を合わせたくない。

 僕らは飲み物をおかわりして、明日の仕事の話をした。ヤスミンは、僕の掃除の仕方を見ちゃいられないと酷評し、僕はそれを認めざるを得ない。

「まあ、そのうち上手くなるさ」

「あら、そんなに長居する気?」

「君も気に入ってるだろ」

 此処にいれば美味い物が食える。ねぐらもまぁまぁだ。もっとも、ずっとは居られないし、何事も無ければ、という但し書きもつく。

 そして『何事もなく』なんてことが有り得ないのは、分かっている。その証拠が、また僕らの目の前を通り過ぎる。さっきと同じか、それ以上に顔を不快そうに歪めたギヨームが、今度は街の中心部に向かって早足で歩いて行った。

「やっぱり、寮に来たんじゃないかしら」

 私たちを訪ねて、という所までヤスミンは言わなかったけど、言われなくても僕もそう思う。はっきりとした理由は無いが、直感みたいんもんだ。すぐに戻ってきたのは、恐らくモリーに体よく追い払われたんだろうってとこまで推測できてしまった。



 レモンパイとシュークリーム、それにチーズケーキを土産にして、僕らは寮に戻る。

 僕たちが予想した通り、ギヨームはここへ来たようだ。モリーは、ギヨームのことが僕以上に嫌いらしく、彼に対する悪態を、これでもかと吐きまくった。

「あの馬鹿ボンボンは年々酷くなる」

 そう言って憤慨するモリーに土産を渡すと、彼女の口許がようやく緩んだ。

「あんた、どこでアレに会ったんだい」

 僕らに座るように促し、モリーは同情的な目を向ける。

「会ったと言っても、碌に挨拶もしてないんですけどね」

 僕は、ボヒークでゲイラと知り合ったことから、この街で仕事を世話されたことまでを、ざっと話した。

「ふぅん。だいたいフィオナから聞いた通りだね」

「あ、奥さんをご存知ですか?」

「ご存知もなにも、学生時代からの友達だよ。おかげで、この仕事にありついたってわけ」

 言い方に反して、卑屈な感じはまるでしない。

「じゃあ、彼のことは子供の頃から?」

「まあね」

 なるほどね。

「彼は、なにしに来たんです?」

 訊くと、モリーはちょっと困った顔をした。少し迷ってから口を開く。

「あんたたちは何処? だってさ」

 やっぱり、そうか。

「おまえに何の関係があるんだって、怒鳴りつけてやったら逃げてったけどね。まぁ、あの子も一応社長の息子だから、関係無いってこともないんだけどさ」

「なんで僕らがここに居るって知ってるのかな」

「そりゃ誰かが喋ったんだろ。知られちゃいけない理由でもあるのか? だったら口止めしとかなきゃあ」

「いや、そういう訳じゃないんですが…そうですよね、話しますよね。新しい従業員を雇ったんですから」

 考えるまでもなく、当然のことだ。そして、ギヨームが僕らのことを知ったとしても、別にどうって事ないはずなのだ。お互いに何の用も無いんだから。

「ほんとに、なにしに来たんだろうなぁ…」

 思わず、同じセリフが口をついて出る。

「あんたが分からないものを、私には知りようもないけどさ…」

 モリーは、そこでいったん言葉を切った。

「とにかく、あの男は、あんたたちが気に入らないんだろうね。それは間違い無いかと思うよ」

「…でしょうね」

 確かに、初対面の時から友好的とはいえなかったが、それはお互い様だ。そんな僕らが、自分の家族に取り入って仕事まで得たのは、面白くないだろうな。

 黙ってしまった僕の肩を、モリーはポンと叩いた。

「ま、心配いらないよ。さっき、娘の方に電話しておいたからね。あのお嬢さんは、さっそく親父さんにご注進するだろ。あの馬鹿息子が父親に逆らえるわけがない。私にだって言い返せないんだからさ」

 ケラケラと笑うモリーに励まされている僕を、ヤスミンは面白そうに見ている。

 そういえば、ギヨームはヤスミンに妙な関心を示してはいなかっただろうか。そんな覚えはないが、やり込められた事を根に持っているかもしれない。それが少し心配ではある。

「でも、用心のために鍵はきちっとかけて寝るんだよ」

 モリーの助言に、僕はしっかりと頷いた。



 翌日、朝食の後に先ずやったのは、洗濯だ。

 地下の洗濯室は広く、洗濯機や乾燥機がいくつもあって、アイロン台には洗濯物を畳むスペースまである。至れり尽くせりだ。

「警戒するに越したことはないわ」

 昨夜、寝る前に話し合った事を、ヤスミンがもう一度言う。

「そもそも、妹の知り合いだというだけで気に入らないみたいだったじゃない」

「そうなんだよな」

 洗濯自体は機械に任せて、僕らは階上へと移動する。

 昨日と同じスケジュールで、午前中は三階から五階の廊下を掃除するのだ。効率を考えて、上から順に下がっていく。

 実はこの寮にはエレベーターがあって、今日はそれを使って五階へ上がった。掃除道具を持っているので使わせてもらえれば有難いと言ってみたら、寮が満室になるまでは使っていいと、お許しが出たのだった。

 モリーは自分のことを、ただの賄いのオバサンだと言っていたが、実質的にはあの人こそが管理人だと思う。僕に期待されているのは、力仕事という意味の労働力だけなんだろうな。

 昨日モップで拭いたばかりなので、誰も使っていない五階の廊下は綺麗だった。ヤスミンが磨いたドアノブも、廊下の突き当たりにある大きな窓から差し込む陽の光を浴びてピカピカしている。人が入っている三階だって、モリーを入れても三人しかいないんだから、同じようなもんだろう。

「廊下はさっさと終わらせて、午前中から風呂掃除しちまうか」

「あのお風呂、広かったものね」

 管理人小屋(これはヤスミンの命名だ)の狭い風呂を思い出したような顔で、ヤスミンが言う。

「君はこっちの風呂を使ってもいいって、言われてるじゃないか」

 女の子だから。

「そうね、そのうちね」

 廊下の掃除を終え、風呂掃除をし、モリーの作った昼食を食べ、午後には二階の清掃の続きをする。

 食事の時、テーブルの上に置かれた袋に、洗濯済みの衣類が入っていて恐縮した。モリーが乾燥機にまでかけてくれていたようだ。全ての物が、当然のように綺麗に畳んである。

「すみません。助かります」

「ケーキのお礼だよ」

 モリーは事も無げに笑うが、こんな調子ではいけないのではないかと、身が引き締まった。

 午後の掃除は、僕一人でやった。ヤスミンが、厨房の仕事を手伝いたいと申し出たからだ。もちろん大した戦力にはならないだろうが、モリーは嫌な顔はしなかった。

「いつかは覚えなきゃいけない事だからね」

 そして、二階の作業が終わったら、僕にも厨房に来るように言った。僕だって料理は出来た方がいいから、だ。

 異論はない。実を言うと、見た目や味を煩く言われなければ、料理するのはけっこう好きなのだ、僕は。



 目の前の仕事を懸命にこなしていたら、あっという間に五日が過ぎた。まだ五日…だというのに、僕らはもう、ここでの生活に馴染んでいる。

 ギヨームも、あれ以来姿を見せない。一度だけ、ゲイラが電話を寄越したらしいが、モリーが適当にあしらったようだ。

「遊びに来たいって言うからさ、休みの日にしてくれって言っといたよ」

 モリーは呆れ気味だった。

 まぁ実際、遊びに来られたって困るのだ。ここは仕事場だし、僕もモリーも、ヤスミンだって忙しい。夜にはすっかり疲れてしまって、夕食を一緒にしているアデーレやベルタとだって話をすることが少なくなってきている。彼女たちだって疲れているんだ。とても夜から遊びに出る元気は無い。

 本当は、休みの日だって出かけるつもりなんか無いのだが、雇い主をそこまで邪険にするわけにもいかない。

 なので、覚悟はしていたのだが、ゲイラは土曜の夜にやってきた。この日の明け方、いつもの悪夢をみたのは予兆だったのかもしれない。目が覚めた時には具体的な内容は何も覚えていなくて、不快感が残っていただけだけど。

 ゲイラは夕食後、皆でお茶を飲んでいる時に現れて、持参のチョコレートを振舞った。彼女が、光沢のある箱の蓋を開けると、フワッと甘い匂いが漂う。

 ベルタとアデーレは、ゲイラが誰か知っているらしく縮こまってしまったので、モリーはチョコレートを少し持たせて二人を部屋に帰した。

「兄が、ごめんなさい」

 その言葉を皮切りに、ゲイラは長々と自己弁護を始めた。

 僕らが出て行った次の日、ギヨームが僕らについて母親に探りを入れたこと、その母親が、迂闊にも僕らの行き先を彼に喋ったこと、自分は母親に口止めをしていたのに、それが守られなかったこと、ギヨームは腹を立てていたが、父親に怒鳴りつけられて、今は大人しくしていること。

「まったく、何が気に入らないのかしら…この寮に関しては、父と私に決定権があるんだから余計な口を出さないで欲しいわ」

 ねえそうでしょ、と同意を求められ、困った。

 そんなら僕たち出て行きましょうか、と、言いかけてやめる。このくらいで短気を起こしたら、ヤスミンに怒られるからだ。そして恐らく、モリーにも。

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