第21話 後輩(悪魔)の誘い 3 (真衣視点)
私は先輩に言われた通りに大人しく服を着ました、先輩は着替えを見ないように私に背中を向け、どことなく落ち着かなそうでした。
別に先輩になら見られたところで特に何も思わないと言っているのに見ないようにするあたり、先輩らしいですかね。
クスッ、先輩は可愛いですねぇ
「着替え終わりましたから、もう振り向いても大丈夫ですよ」
「あぁ、まったく...最初から大人しく着替えてくれないか」
「先輩しか居ませんし別に良いじゃないですか」
「良い訳ないだろ」
先輩は私の方に振り向くと何処かばつが悪そうに文句をこぼした。
正直な話が私は何処か焦っていました。
以前に詩音さんが私に直接話をしに来た際、あの人は最後までまるで余裕だと言わんばかりの表情を崩さず、更に私の監視を解き、私を自由に泳がせるとまで言ってきました。
という事は確実にこの人にはそこまでの余裕をもたらす何かがあるという事に他ならない、それが何なのかまでは流石に分からないが、推測可能な範囲で考えると先輩の弱味か、もしくわもう既に先輩とそれ程までの関係に至っているのか…ですが先輩に限って後者はありえませんね、先輩はこういった俗にいう恋愛という行為に対して何処か避けてる感じがあるため、自分にメリットがないと動きませんから。
となると前者という事にりますが、先輩の弱味?まるで思い付きませんね、先輩は勉学においては学年トップですし、運動も苦手という程ではなさそうだし、交友関係も深くは持っていないようだけど周囲とは上手くやっているようだったし、それにあの先輩がちょっとした何かで自分を売るとは思えない...つまりは先輩を縛ることを可能とする相当のものという事になります。
そんなものを前にして今のままで私に勝ち目があるかないかで考えると...おそらく無いでしょう、それ故に私は少しでも先輩の気を惹こうとしました、ですが結果は、私が更に先輩の事を好きになるという真逆な結果になってしまいました...
「そういえば先輩は彼女さんとはどうなんですか?」
「何でお前にそんなこと言わなきゃいけないんだよ」
「良いじゃないですか、答えて下さいよ」
「...さぁな、それは僕にも分からないな、なにせ向こうが何を考えているのかさっぱり検討がつかない」
つまり先輩にも詩音さんの考えが分からないって事ですから、恋人として深い関係まで進んでいるという考えはは確実に違うって事になりますね。
安心しました、ですが詩音さんが握っている先輩の弱味が相当のものであるという事も確定しました、先輩は弱味を握られてしまったがために詩音さんと交際することになったのは先輩が交際している事を知った時から把握していた事ではありましたが、正直言ってここまでの力を持つ弱味であるとは思ってもいなかったため、今になって考えると非常に厄介ですね。
もっと冷静になって考えるべきでしたね、元々先輩を縛れる程のものだったのですから、相当の力を持っていて当然なものであると...
ですが、こうも考えられます、弱味の力だけで成立している交際関係なら先輩の恋愛感情は詩音さんにはまだ向いていない筈ですから、私にもまだチャンスがあるっていう事ですよね。
でも、先輩はそんな中で何を思って生活しているんでしょうか?楽しいと思えるのでしょうか?
「先輩は今の生活が楽しいと思いますか?」
「...」
「先輩?」
「ん、あぁ、楽しいよ」
あれ、少しだけ先輩の顔色が曇ったような...でも直ぐに普通に戻ってしまった。
楽しくないのでしょうか?でも、だとしたら何故?
「大丈夫ですか?」
「え?何が?」
「いえ、少しだけ先輩の顔色が優れないようでしたので...」
「あぁ、僕は大丈夫だから」
何だか少し取り繕っているような感じがする、どうしてだろう?
「本当ですか?具合でも悪いんですか?」
「本当に大丈夫だから!真衣が心配する必要なんてないから!」
本当にそうでしょうか?何処かおかしい気がする、まるで必死に内心を悟られないようにしているかのような...
あの時、私が先輩が交際している訳を見抜いた時と同じ感じがする、先輩は何かを隠していますね。
「でも、今日はそろそろ帰る、また学校で」
「え?!ちょっと待ってくださいよ!」
私が止める暇もなく、先輩は足早に私の部屋から出て行ってしまった...
先輩...あなたは一体何を隠しているんですか?
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