第20話 後輩(悪魔)の誘い 2

1

真衣の言った通り家の中には誰もおらず、どうやら本当に真衣と二人きりらしい。


僕は2階にある真衣の部屋まで通され、真衣は飲み物を用意して来ると言って出て行き現状、僕はこの部屋に一人だ。


真衣の部屋は必要最低限かつシンプルなデザインの物や家具しかない詩音の部屋とは真逆で、可愛らしいデザインの家具や物が並んでいた。


「はぁ、失敗したな」


そんな中で僕は今更ながら自分の選択を後悔していた、どうしても真衣の微笑んだ顔が頭から離れず、今後起こりうるかもしれない何かしらに不安を感じずにはいられなかった...


「すみません、お待たせしました」


「!」


「ん?何をそんなに驚いているんですか?」


「いや、何でもない」


そんな不安の中でもしもの時はどう逃げるか考えるのに集中し過ぎていて真衣が部屋に戻って来た事に気付かず、急に話しかけられたため思わず驚いてしまった。


「クスッ、もしかして女の子の部屋に感動し過ぎて私が戻って来た事に気付かなかったとかですか?」


「...お邪魔しました」


「もう!冗談ですから!本気にしないで下さいよ!」


真衣ってこんなに冗談なんて言うような奴だったけ?どうにも最近の真衣は少しおかしい...以前に比べて余裕がないというか、どこか焦っているみたいな感じがする。


「なぁ真衣」


「何ですか?」


「お前、最近何かあったのか?」


「!...別に何もありませんよ、それよりも飲み物は紅茶で良いですか?この紅茶おいしいんですよ」


「あ、あぁ」


真衣が淹れた紅茶は確かにおいしいのだが、さっき真衣の顔に一瞬だけ動揺の色が見えた、やはり何かあったのか...だがさっきの感じからして僕が聞いたところで真衣は僕に起こった事を教えてはくれないだろう。


ならせめて、


「僕にお前の力になれるような事があったら言ってくれ、少し頼りない先輩かもしれないだろうが、出来ればお前の力になってやりたい」


「...はぁ、先輩は凄く頼りになりますよ、むしろ先輩以上に頼りになる人なんて他にいないくらいです、私はそんな先輩に甘えてばかりで何も先輩にお返しする事が出来ていない、でも、何をしたら良いのか分からないんですよ...勉強は先輩の方が出来ますし、欲しい物を聞いたら新しい参考書を買ったから今は特にないとか言いますし、それなら私に出来ることは、もう...」


「ん...何か、眠い...」


「準備をしますから少しの間お休み下さい」


チッ、睡眠薬か...駄目だ...まぶたが重くなってきた...


2

「お目覚めですか?先輩」


「ん、これは一体何の真似だ」


目を覚ますと僕は真衣のベッドで寝かされており、縄で両腕両足を拘束されていた、更にそこに下着姿の真衣が僕の体の上にに馬乗りになっていた。


「何って、ダメですよ先輩、女の子のそんなこと聞いちゃ」


「良いから早くこの縄をほどけ!」


「もう、先輩は何をそんなに気にしているんですか?あ、心配しなくても私は初めてですよ」


「違う!僕はそんなこと聞いてない!」


まるで話が通じてない、チッ、どうすれば良い?どうすればこの状況下から解放される?早く考えなくてはまずい事になる。


「そんなに暴れないで下さいよ先輩、それに先輩は何も言わずに私にされるがままにしていれば良いんです、なので、うるさい先輩の口にはお仕置きです、ん、」


「ん!ん~、ん、」


突如として真衣は自分の唇を僕の唇に重ねてきて、更にそこから舌を僕の口内に入れ、まるで貪るかのように僕の口内を蹂躙し続ける。


休むことなくそれは続けられ、真衣の下にされている僕は抵抗も出来ず、ただされるがままに終わるのを待つしかなかった。


続けば続く程に真衣の息は荒くなり、行為も激しさを増していった、途中途中で息こそさせてもらえるが、それは終わらず、苦しさもまた増していき、既に何も考えられずにいた。


「はぁー、先輩、どうでしたか?私は凄く満たされましたよ、先輩もそうですか?」


「はぁー、はぁー、はぁ、そんな...訳、ないだろ」


僕はその逆だよ、早くどうにかしないと、これ以上は本当にまずい事になる...


「すみません、そうですよね、こんなんで先輩が満足する訳ないですよね、それじゃあ次は」


「待て!やめろ!」


そして、真衣は僕のズボンのベルトに手をかけ始めた。


チッ、どうすれば、あれ、両腕の拘束が弱く、そうか散々もがいたせいで結び目が弱くなったのか、これなら...よし解けた!


「いい加減にしろ!」


「え!きゃっ!」


僕はまだ両足の拘束を解けていなかったため、身体を起こして真衣の両肩を掴み、体を反転させて真衣を自分の左側に押し倒した。


「いつ僕がお前にこんなことを頼んだんだよ!」


「仕方ないじゃないですか!私が先輩にあげられるもの何てこれくらいしかないんです!もらってばかりの関係じゃダメなんですよ!私は先輩になら何をされても構いませんよ、さぁ早く私を」


目の端に涙を浮かべ、僕にそう訴えてくる真衣はとても苦しそうで、辛そうに見えた。


「はぁ、僕はお前じゃないからお前の気持ちはよく分からない...だけどこれだけは言える、お前はもらってばかりじゃない、僕だって真衣にもらっているものはたくさんある」


「え...」


「僕が真衣との約束を守っているは僕がお前の事を大切だと思っているからだ、確かに面倒に感じる時もあるが、それでも僕は真衣といる時間が嫌いじゃない、むしろ真衣といる時間はなんだかんだで楽しいんと思える、だから、楽しい時間をありがとな」


図書室で共に勉強する時間がたまに面倒に感じる時もあるが、そんな事を思っていても気付けば忘れている、つまり僕は何かと文句こそ言いはするが、あの時間が好きなのだろう。


「先輩には敵いませんね、私の先輩への思いは強くなっていくばかりですよ、分かりました、もうこんな事はしません、ですが...これからも一緒にいても良いですか?」


「あぁ、好きにしろ」


「ありがとうございます、私は先輩の後輩としてあなたを私の虜に出来るように励んでいきますので、これからもよろしいお願いしますね」


結局それか...でも今の真衣の笑顔はとても幸せそうに見える。


僕は僕のやり方で自分の未来を切り開けば良い、やがて訪れるその時までに、その時が来るまでは僕も多少は楽しもう、楽しんでばかりはいられないだろうがな。


「程々にな、それと僕は簡単にはおちないからな、むしろ超難題と知れ」


「はい!絶対に負けません!」


そして、僕は真衣を解放し、両足の拘束を解き、床に足を落としてベッドに座った、真衣も僕の横に座って来た。


「それと早く服を着てくれないか、目のやり場に困るんだよ...」


「別に先輩なら構いませんよ」


「そう言う問題じゃない、良いから早く服を着てくれ!」


「はぁい、でもその前にこれだけは言っておきますね、先輩、大好きですよ」


僕はその言葉に応える事はできない、もちろん詩音にだって、本来であれば応じたくなどなかった...でもノートを取り返すためには応じる他になかった。


「...僕は何も言えないからな」


「はい、構いませんよ、私が言いたかっただけなので、でもいつかは応えさせてみせますから覚悟しておいて下さいね!」


僕を見つめる真衣の笑顔は思わず見とれてしまう程に綺麗だった。

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