第19話 後輩(悪魔)の誘い 1
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今日は土曜授業だったため、半日の授業を受け、持ってきていた昼食も食べ終わったので、僕は帰宅するために昇降口に向かっていると、
「先輩」
「ん...」
聞きなれた声が背後から聞こえて来たため、振り返ると案の定、そこには真衣がいた。
「今日って、これから何か用事があったりとかしますか?」
「いや、特にはないが」
「じゃあ、これから私の家に来ませんか?」
「...じゃあな、僕は帰るから」
真衣の家に行く?何でわざわざそんな面倒事を引き受けなければいけないんだか、今日は帰って勉強する。
そして、僕はまた足を進め始めると、
「ちょっと!待って下さいよ!」
花恋は帰ろうとする僕の右腕ににしがみつき、動きを止めようとして来た。
「離せ!僕は帰る」
「いいえ離しません!先輩が家に来てくれるのなら離しますが」
チッ、既に最高にめんどくさいな、それに何よりも真衣は右腕に自分の胸を当ててくるのだ、変に柔らかな感触が右腕に伝わり、非常に落ち着かない。
「良いから離せ!それなら僕がお前の家に行くメリットを提示できたら考えてやる」
「分かりました」
そう言うと、真衣は右腕を離し、改めて僕と向き合う。
「先輩が家に来るにあたってのメリットを提示できれば先輩は家に来てくれるんですよね?」
「まぁ僕が納得すればな」
「あっ!女の子の部屋に入れますよ!」
「帰る」
「嘘です!嘘ですから待って下さい!」
今度は僕の肩を割と強い力で掴んで止めようとして来る、正直言って少し痛い。
「はぁ、冗談はこれきっりにしろよ、時間がもったいない」
僕がそう言うと真衣は手を離し、何やら考えている。
何が女の子の部屋に入れますよだ、そんなのが何のメリットになるんだよ。
「仕方ありませんね、それなら来週は先輩に接触しませんので、今日は家に来てくれませんか?」
つまり来週は僕に時間の空きが結構生じる訳だから、
「...分かった」
「ありがとうございます!」
僕が承諾した事がそんなに嬉しいのか真衣は笑顔で僕にお礼を言ってきた。
まぁ総じてプラスマイナスゼロのような気もするが、来週はいくらか気楽に過ごせると思えば良いか。
それに何よりも、断るのは大分大変な気がする、確実に僕が断って素直に分かりましたとはいかない気がする。
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そして今は、真衣と共に真衣の家に向かって歩いている。
「先輩は私の家って何処か知ってましたっけ?」
「ん、あぁ、前に変になったお前を送っていく羽目になったからな、大体の場所は覚えてる」
「...あ、あの時は本当にご迷惑をおかけしました」
全くもってその通りだ、あの時は本当にひどかった...たかが家まで送って行くだけだと言うのに、道の教え方は下手だし、何故か真衣はふらついていたため僕はおぶって送っていかなければならなかったし、途中で道に迷ったしで大分疲れた。
「もう勘弁してくれよ」
「はい...すみませんでした」
真衣の家は高校から普通に行けば徒歩で大体20分程度の場所にあり、駅の近くに建っているため、僕が自宅に帰るのにそこまでの影響はない。
ちなみに以前、真衣を家まで送って行った時は真衣の家に着くのに50分はかかった。
「ところで真衣の家に行って何をするんだ?」
「え~とですね、先輩と私の家で一緒に遊びたいなぁって思いまして...ダメ、ですかね?」
遊ぶ?僕となんか一緒に遊んで楽しいものだろうか?自分で言うのも変な話だが、こんな勉強くらいしか取り柄の無い奴と遊んで楽しいと言うイメージが自分ですら掴めない。
「別に構わないが、僕と遊んでも別に楽しくないと思うぞ」
「そんな事ないです!きっと何よりも楽しい筈です!」
「そ、そうか、それなら良いんだが...」
あそこまで断言されると、少し気はずかしいが、その期待の応えるためにも出来る事はしよう。
「あ、着きましたよ」
「もう着いたのか」
なんだかんだと話していると、気付けば真衣の家に着いていた。
そう言えば、真衣の両親は今は家に居るのだろうか?以前に真衣を送って行った時は確か居なかったっけな。
もし居るとなると、少し気が重いな、何せ初対面だし、僕は男だしな...何か勘違いをされては困る。
「あっ!そういえば言い忘れていた事がありました、先輩、ちょっと耳を貸してもらえませんか?」
「何で?普通に言えば良いだろ」
「良いから貸して下さい!」
「ん、分かったよ」
何故、真衣がいきなり耳を貸せなどと言い出したのかは分からんが、しつこいので僕は真衣に自分の耳を近づけた。
すると真衣は僕の耳の裏に自分の手を当て、僕の耳に向かって小さな声で
「私の親って何時も帰りが遅いので家には誰も居ませんよ」
と言い、自分の手を離した。
そして、僕は慌ててそんな真衣の方を見ると真衣は静かに僕に向かって微笑んでいた...
僕にはそれが何かを企んでいる様にしか見えず、これから起こりうるであろう何かに不安を隠せずにはいられなかった。
きっと僕は心の何処かでこう思ったのだろう、
真衣ではなく、悪魔が僕に微笑んでいるのだと...
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