この物語は、主人公ハロルドが、家族の仇を探してゆくなかで、相棒となるミラやアストラノーツ社の仲間たちなど、様々な出会いを経て、驚き、戸惑い、そして救われていく、そんな物語です。
世界を巡りながら、明かされる謎には驚きもあり、結末はストンと胸に落ちる、そんな素敵な読後感がありました。
個人的におすすめしたいポイントは、舞台となる世界です。
この物語は、舞台となる世界――一度高度な文明が失われ、その残滓を手繰りながら人々が暮らしている――の異質さ、凄さ、不思議さ、面白さを存分に伝えてくれます。
それは、飛空艦「アステラス号」や空中要塞「プロメテス」にとどまらず、
竜がやってくる場所とされる「竜帯」、女王が治めるとされる「聖国」。
「竜」や「自動人形」のような人でない者たちと、彼らの暮らしぶり。
ハロルドとミラの目線から、この世界の広さと、人々の日常のどちらもが丁寧に描かれており、「異なる世界」にまるごとにじっくり味わえる、自分のような世界観フリークには大変幸せな物語でした。
ファンタジーだけれども、SF的な味付けも随所で効いている、そんな世界観にじっくり浸りたい方には是非おすすめしたい作品です。