犬をもらった

吉川 卓志

犬をもらった


 昔、僕が子供でまだ実家に住んでいた頃、目が一つしか無い犬を飼っていた。

右目だけしかないとか左だけとかでは無く、その一つの目は、まるで絵本に出てくる一つ目小僧の様に顔の真ん中あたり、額の、そう、普通の犬の右目と左目を直線で結んだその線のちょうどこの辺に有ると落ち着きそうかなという所に、付いていた。


でも、目のサイズは一つ目小僧の様に大きくは無くて、犬の体に対してごく普通だった。目玉は普通に動くし、普通に瞬きもした。おまけに目の上にはうっすらと眉毛の様に見える模様も付いていて、見慣れると昔からそういう動物がいたのだと思えもした。


その犬をくれたのはその時通っていた学校の友達のO君で、はじめ子犬が産まれたから見に来ないかと誘ってくれてそのまま貰って来た。一匹だけ目が変で、それが面白いと思ったから。


O君の家にはたまに遊びに行っていた。そこでは家の中で犬を飼っていた。その犬は毛が長くふさふさしていて、また体が大きくて、前足を僕の体にかけると顔が顔に届く位だった。

ある時、僕に飛びかかって来たその犬のお腹が妙に大きくなっている事に気が付いた。O君に尋ねると、妊娠していると教えてくれた。彼は、普段家の中で飼っているのに妙だと言った。(僕らは当時もう、何をすると子供が出来るのか知っていた)



家に子犬を持ち帰ると、その時はまだ生きていた父親がまず反対した。自分はTVが大嫌いだ。こんな犬を飼ったらTVが取材に来るに違いない。そんな事はご免被ると言った。一緒にいた母も弟も同調した。けれど、母も弟もTVのバラエティ番組は大好きで父のいない時は喜んで見ているのだ。ずるいと思った。


でも結局飼う事になって、家族にはすぐ馴染み、近所の人にも馴染んだ。

性格は良くて、ちょっとした事で凄く喜んで、人間に例えればいつもニコニコしているという感じの犬だった。

3年ちょっとで死んでしまった。朝起きたら死んでいた。

O君にその話をしたら、実はその犬が生まれた時もう一匹目の変なのがいて、それには目が3つ付いていた。その犬は残念ながら生まれてすぐに死んでしまったよ。と、教えてくれた。

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