三十三の節 働くと言う事。 その一
霧状に立ち篭めつつある
「あのオッサン、置いて来て大丈夫だったのか?」
物音一つ立たない
その背後から付き歩く
「大丈夫ではないが、遣えないようなら後で狩り取るだけだよ」
アラームは、
代わって、普段の調子を取り戻すためだろう。らしい悪態を発揮した。
「どちらにせよ、これで
硬質な靴音と、金属片が重なる音が立つ。同時に、アラームが振り向いた。
「
「はぁ~。例えば、九日が満月だと算出されたとする。九日の夕暮れから、翌日の十日の夜明けまでの月だと勘違いする奴もいる。正確には、前日の八日の夕暮れから、翌日九日の夜明けまでの月の事だ」
埋蔵する知識を暗唱した
「詰まり、満月の夜は始まったばかりだ。フローリオの城壁の外は、ケダモノが
「冗談じゃねぇ。だったら俺は歩いて帰る。俺は、廃業したから無職だ。さっきの
先程の働きに対し先手を打ち、
「職は失っても、積み重ねた修練や
アラームの挑発じみた言葉に、
「知った風な口を叩くんじゃねぇよ」
手持ち無沙汰だった
「自身を、無職だと
アラームは、
「言い換えれば、働けば対価が得られる。そうだな、手伝って
「お前さん、いい加減にしろよ。んな子供の
地上の
「グレゴアールパイ」
深く
途端、
「マリサに頼めば、特別に作って
「ウ、ウッソだろ、お前。皇帝ですら、一切れ食べたら三カ月待たされる
その皇帝の名を冠する
貴重なバターを惜しみなく使用した三層のパイ生地。隙間を埋めるのは、果実酒の香気を
長方形に成形された
「羨ましい?」
「当然」
「食べたい?」
「召し上がりたいです!」
舞い上がった
「何をすべきか、判るかな?
「ケダモノの殲滅に尽力します! 働かざる者、食うべからず!」
アラームは、
この時、周辺の
その
フローリオ全域を覆い、外敵から内側の空間を隔絶する、広大な結界が負荷なく発現した。
◇◆◇
一方、フレデリケ中央通り。
街を夜の
霧状にたゆたう
大きな街中では、
また、外へと排出し
そんな、
その一角には留守番を指示されたが、きちんと働く
実は、現在フローリオを守護する結界を発動しているのは、この三名だった。
メイケイとウンケイは食事を一通り終え、青茶で満たされた腹と精神に〆の合図を送っている。
「黙ってたら、
脚付きの
「フィーツ・ワイテ帝国やフローリオは、
兄のメイケイが、深みがあり渋く説得力のある声で説明する。
「詳しいね、メイケイ先輩」
「
相手の顔と名前を覚えない
鈴蘭が彫られている銀製の匙で、
「風土文化を仲介者が、錬金術師と
「そこまでは分かりません。ただ、
「う~ん。その仲介者って、アラーム様じゃないかな」
匙に盛った真珠のような粒達を、
「
「恩人は例えだとしても、極上の美青年の点ですね。アラーム様は今の所、人前で
メイケイが、
「そう、それだよ。そうなんだけど、でも」
「答えてくれないよね。特にさ、ちゃんとした商人って結託した詐欺師よりも口が堅い。跡取りが、自身の位置に来ないと機密を墓まで持って行くらしいし」
受けたメイケイとウンケイは、無言で首を縦に上下した。それは、肯定を表していた。
机上の空論が、どれ程に不毛なのか思い知った三名は、同時に天井のシャンデリアを
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