第3話 私のお気に入りの女優が猫の役を演じる。

起き抜けの微睡みを存分に堪能するために必要な時間は約90分。

だとするならば、初等教育の悪しき慣例から身を守る術を学ばなければならない。

または、ある種の気づきが必要である。


死と生殖のいたちごっこについて。

飽くなき自慰への探求を続けた、この右手の紡ぐ言説にもたれかかるのであれば、世界にはびこる資本主義に対し意外にも我々の求めるところは過程でしか有り得ないと、右手は語る。それは無為なるピストン運動の果てに加速した右手の得た一つの真理であり、稀なる彼は私を置き去りにして得たソレをいたちごっこと名付けた。破綻した永久機関の還元され得ない無限のエネルギーは歓迎されないのだ。

東洋では逝くが、西洋ではIm coming なのだ。また死は旅立ちであり、死は訪れるものである。ソレは太陽の如くあり、消えない炎は地獄と救いを両立する。

豊穣は大いなる腐敗に匂い立ち、甘い汁は喉を緩やかに焼く。

水は乳のごとく濁り、昼の光は真実の像を歪ませ、夜の鳥は淫らに啼く。

起き抜けの微睡みは死を希求する、背徳の時間は短い。


ソレがソレで在る必要など無いように、私が私である必要は無い。

論理的に個の存在を尊重し、肉体を解体して自由に袋詰された人類の崇高な精神体は大量生産の代用ウミガメの歌う悲哀、人形を設計図ありきの完璧な人間として生産した場合、生臭い精液と肉袋から生産される我々は一体何だ?笑えない冗談だがそのとおりだ。


血の膿の波間にあらざりし自意識の浮上する、顔のないケダモノが自分の名前を思い出すとき、私のお気に入りの女優が猫の役を演じる。





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