第3話 裏ボス?
あー極楽極楽。ふー生き返る生き返る。長生きはするもんだなー。
まだここでは0歳ですけど。何か!キリッ!
そんなことはどうでもいいけど。聖なる泉の横に作った水溜りが俺にとっては、露天風呂になっちゃて・・・いいのかな・・・
気にしない。気にしない。極楽極楽。
ふーいい湯だな。いや、いい水だな。
ふぅー、絶景。絶景。
スライムなので鼻はないですけど、俺は鼻歌混じりに回想する。
俺が初めて見たときは、極寒の荒野を囲むような数千m級の山脈から吹き込む猛吹雪が猛威を振るい、眼も開けられず、生物が生きれぬほどの暗く極寒の暗黒の死者の世界となっていたのが嘘のようだ。
取囲んでいた山脈のいたるところからマグマが溢れ噴火を続けている。おかげで吹雪がおさまり少し温かい雨にかわっていった。そのせいか、氷河が段々と解けて川が出来ている。
でも、火山灰と混じった雨と氷河のせいで川は汚れてしまっていた。
だがしかし、アメーバ?微生物?スライム?にとっては、訂正しよう。綺麗好きな俺にとっては新たな使命感はもちろん、氷河の雪解け水はおろか氷河や近くに凍っていた湖や地下水が湧き出る泉まで綺麗にする。
そう、俺は綺麗好きなのさ。
おいおい、勘違いしないでくれよ。暴食の悪魔の如く、我を忘れ、狂い喰いしたわけではない・・・と思う・・・思うな・・・そこらへんは小さなこと。
荒野一体にあった氷河や氷の大地を覆っていた氷雪まで喰らい尽くした俺は、今、この大地で小春日和の温かさを感じている。
いや、春を感じ始めたといっても過言ではない。
ここは既に、春を待つ越冬地である。間違いない。
このあたたかな露天風呂につかり、もとい、ただの露天風呂という湯船ではなく、清く澄んだ聖なる泉にもまさる露天風呂につかりながら、顔を軽く洗う。
顔を洗うっていっても、手はないんですけどね。スライムジョーク。
だんだんスライムジョークまで使いこなせるようになったな。
自己満。自己満。
汗をぬぐいつつ、お日様を大きく仰ぎ、深呼吸という溜息をする。
俺はこの時こう思った。
誰かに一人露天風呂を堪能していてニヤついてるキモイ奴だと思われそうなこの光景をみられたら、絶対ポッチ認定されるんだろうな~。
友達いないかな~。
そんなことを思いながら、この荒野を囲む山脈に流れ続けるマグマの神秘的な光景を見ていると、また、火山が大爆発をおこす。
ドーン!!
玉屋ー!
続けてまた近くの山脈の中腹部でも噴火する。
ダーン!!
鍵屋ー!
叫んでも声出せないんですけどね。スライムジョーク。和の国のたしなみ、気持ちですから気にしない気にしない。
はぁー絶景。絶景。
この後に起こった事件で、俺はポッチ問題から逃避行を続けていたということを再度認識することになった。
さー今日も頑張ってマグマまで残さず食べよう。
ストレス♪ストレス♪食べないと♬痩せちゃう♬痩せちゃう♬痩せちゃうなー♪
食べたくないけど食べないと♬・・・・・・・・・
・・・・・・ランランラン♪・・・・・・ルールールルル♫
ムシャムシャムシャ、ガリガリガリ・・・・
ペッ!また武器が混じっているな。杖を捨てるなら、クリスタルは外しておけよまったく。
ムシャムシャムシャ、ガリガリガリ・・・・
ゴリッ‼今度も防具かー。ってことは、骨もあるのか・・・骨は食べれるカルシウムカルシウム。
ムシャムシャムシャ、ガリガリガリ・・・・
ウッ‼オリハルコン?ヒヒイロカネ?珍しい鉱石も混じっているな。美味。美味。火山灰がいいアクセントになっているぞ。凍っている魔族の脂身で香りをつけたらもっとおいしくなるかも。いや、魔石を粉にして、まぶしてもいいのかもな。
ムシャムシャムシャ、ガリガリガリ・・・・ゴリゴリゴリ・・・・
今日のマグマは鉄分も多いいのかな。なんて思っていた時だった。
大忙しで仕事(食事)をしていると、聖なる泉が間欠泉のようにふきあがる。
大量の聖水が天空にあがり、噴水で虹が出来た。
直ぐに、聖なる泉はいつもの静寂に包まれた荘厳な雰囲気に戻った。
でも、その湖面にはボロボロ服の修道女らしき女がぷかぷかと浮かんでいた。
多分死んでいる。
しばらく、ほおっておいた。だってオバさんだったからってわけではない。範囲外なのって言われたらノーコメント。
そうだ、訂正しよう。俺は何も見ていない。気付くことさえないのだ。だからしょうがない。知らなかったのだから。
いつの間にか、修道女らしい死体は聖なる泉に沈んでしまった。
良かった。良かった。
そのうち、水の中で分解したら俺の栄養になるんだろうな、なんてことを思っていたら、泉から光り輝く謎の球体の青白い炎が湧きあがり湖面上空で舞っている。
俺はそんな光景を見て見ぬふりをして口笛を拭いて、お仕事(食事)を続ける。
ムシャムシャムシャ、ガリガリガリ・・・・ゴリゴリゴリ・・・・バリバリバリ?
プッブー!!ペッ!ペッ!
今度はアクセサリーをかじり溶かしたようだ。
荒野に吐き出された粘液まみれのアクセサリーは、突然突き刺さっていた大地から弾けるように木っ端みじんになって光り輝く物を飛び出させた。
「封印を壊していただきましてありがとうございます。」
何と、自称精霊という小さな羽の生えた妖精みたいのが頬にキスしてきた。
スライムだから頬はないんですけど・・・頬ということにしてくれ。頼む。少し俺の妄想に付き合ってくれ。
俺はクールにその妖精答えた。
「ベトベトした体でひっついてくるなよ」
ごめん・・・妄想だ。スライムだからしゃべれないけど、クールに言ってみたかったんだ。念を押しておく、ボッチ童貞だからじゃないぞ。本当にクールに言いたかっただけなんだ。信じてくれ。
「ごめんなさい。うれしくてつい。でも本当にありがとう。邪神を倒してくれて!」
なにー!!!俺の心の声が聞こえてるー!!
そんなことより。いつ俺が邪神を倒した!
おいおいおい!情報が多すぎるぜ。
「そんなー謙遜しないでください。私の封印まで解いてくださって、本当にお優しいかた」
ヤバイヤバイ!下手なことを考えるな俺。心を読まれてしまう。
「エー!いいじゃないですか。これは単なるコミュニケーション。単なるお礼の会話ですから気にしないで下さい」
騙されるな。騙されるな。これは何かの陰謀だ。俺からサギっちゃう悪いサキュバスなんだ。
「なんでエロい悪魔と間違わないで下さい。そうだ、向こうをみてください。私の主もあそこの泉の上でお礼を言いたがっています」
やっぱり俺を騙そうとしている。ボッチ童貞だからって大人数で色仕掛けには負けないぞ。ちなみに、俺は自分のことをボッチ童貞なんて思ってないからな。そこんとこヨロシク!キリッ。
「独り言はいいですから、ちょっと待っててくださいね」
飛び立ち、妖精は聖なる泉に着くと呪文を唱えた。
聖なる泉はさらにキラキラ光り出す。
その光輝く聖なる泉に向かって空気が吹き込んでいくようだった。
大気中に含まれた魔素といたマナまで、聖なる泉に浮かんでいた炎に取りこまれてゆく。
すると、聖なる泉に浮かんでいた炎はいつの間にか人の姿に変わっていった。
妖精が呪文を唱え終ると聖なる泉は静寂に包まれた。すると妖精はその場で倒れ込み、呼吸を粗くしている。
人の姿から修道女になり、聖なる泉を歩いて倒れ込んだ妖精をやさしく抱きかかえた。
「ありがとう。わが従僕よ。邪神になった我を救ってくれて・・・我の力を分け与えよう」
すると、抱きかかえられた妖精は小さな女の子、いや、幼女にかわった。
もちろん服は着てない。俺は当然、修道女に駆け寄って、消化されていない防具を吐き出した。幼女が風をひかないために。
でも、ベトベトな状態だから聖なる水で清めてからだ。マグマで乾かせばあっという間にサラサラに乾くだろう。
幼女にローション状態はボッチ童貞の俺にはハードルが高いからな。
繰り返すが、俺は自分のことをボッチ童貞なんて思ってないからな。そこんとこヨロシク!キリッ。
汚れも落ちて新品状態のマントにくるまれた幼女をみて、修道女は微笑んだ。
修道女は幼女を抱きかかえながら、咽ぶように泣き始めた。
「邪神になった私を殺してくれてありがとう。ありがとう。これで、あの人のところに行ける。ありがとう・・・」
なんとなく邪神だったとはおもえない修道女はなんとなく可愛かった。
そんなことより、この前邪神修道女もテレパシーが使えるらしくいろいろとご指導をしていた出した。
「おいおい、こっちはこの世界を創った神様の一人だよ。せっかく、残りの力を使ってスライムから人間にしてやったのに、目上の人が話しているのに落ちてるものを食べようとするかな。ハイ正座。正座。オイ返事は!」
何々、この高圧的な女神は、ヤンキー?レディース?それとも、ワンランク上のプレイ。
どS女王様的な大人の社交辞令。ちょっとうれしいかも。
いかんいかん。話を整理しよう。
・前邪神修道女は男の娘でこの世界を創った神様の一人
・この世界を一緒に創った他の神は戻ってくるといいながらもまだ戻ってこない。
・さすが力が弱っており、炎状態から裸で姿でお礼をできず困っていた
・聖なる泉にはセイントスライム汁からマナが溶けだしており、力の回復を待っていた。
・ある程度の回復が見込めたが邪神だった第一形態の肉体は滅んでいる。今、聖なる泉に沈んでいるのは、過去に使っていた別形態の偽装疑似肉体である。
・妖精だったこの幼女は邪神になる前に使役していた精霊である。
・神だった頃の姿に変身できたのは精霊の力を行使してくれたから。
というところまで理解出来た。
俺は亡くなった時の15歳の青年の裸で、寒風も吹き込むドロドロの大地に正座状態から立とうとした。もちろん勃起ではない。
「ヤダー。だから言ってるでしょう。隠しなさいって!」
「同性だから犯罪じゃないだろう。神様もついてるんだろう!」
そんなやり取りをしているとマントに包まっている幼女精霊が目を覚ました。
幼女精霊は神様に抱きつきながら大泣きする。
どうやら俺の推理が正しければ、異性だと思って一緒に異世界を創ろうとしていたところ、男の娘と判明し逃げたのだろう。もしくはこの世界を作ってから、男の娘だとカミングアウトしたからかもしれない。
俺は逃げた神様達に同情の気持ちが湧きあがっているが、テレパシーが使えるこの神様、いや、駄女神(仮)に悟られないようにしなければいけない。
純情な青年の心から薄汚れた大人の気持ちになる瞬間をかみしめよう。
ヤンデレの男の娘が邪神になるきっかけはどうでもいいが、早くこの駄女神(仮)の話が終わらないかな~。
この状態で小一時間、騙されたといいながら、泣きながら笑いながら叫びながら話を続けた駄目女神はスッキリしたのか大声で俺にお礼を言いながら天に昇っていった。
「私のすべての力をあげるから活用してね。その下僕の面倒も頼んだわよ~」
そして、俺の手を握る幼女が手を振って見送った。
ひと段落をついて幼女を見ると、満面の笑みをした。
「ふつつかものですがよろしくお願いします。旦那様。ニコ!」
何々。ニコって言うの!もしかして結婚させられたの!誰か言ってくれ。これは偽装結婚って、そうだよね。
サー。血の気が引くってこういうこと。
そんなことより、今、誰かに見られたら・・・・
やばいやばい!!
俺、裸!幼女もマントの下はマッパ!!裸だよ!
絶対捕まる。俺‼犯罪者?確定?!
誰か、助けてくれ!これは特殊プレーだといいふらしてくれ。お願いだー!
「あのー、幼女姿でも、テレパシーを使えますから。心の声ダダ漏れですよ。とりあえず服を着ましょう」
精霊精霊は無詠唱で服を着た状態になった。
俺は幼女からスルッて落ちたマントを素早く奪いマントをかぶる。
「あのー・・・余計な事だと思いますが、その格好ですと・・・変質者に見られると思いますよ。良ければ魔法をかけさせてください」
今度は俺の足元にマントが落ちた。何だか恥ずかしそうに、幼女精霊はマントを拾い埃を落としながらたたみ、俺に渡してくれた。
俺はなかなか気の利く女子力の高さを感じ取った。
言っておくけど、俺は惚れっぽくないぞ。ただ俺の心に、この幼女精霊にプラスポイントをつけていた。
さーこれからだ!
リア充経験者の俺はこれから二人の時間をいかに緊張せず、ナチュラルに接するかにかかってくる。ボッチ童貞でない俺なら何とかなるはず。キリッ!
繰り返すが、俺は自分のことをボッチ童貞なんて思ってないからな。そこんとこヨロシク!キリッ。
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