現実
大きな音が玄関からした。
もしかしてと俺は玄関に行こうとしたが、裸ではまずいのでカステラを包んでいた布を腰に巻いて玄関のドアに手を掛けた。
キィと音をたててドアが開いた、やったこれで出られる。
ドアを開き切り見ると太陽の日差しで少し確認が遅れたが俺の部屋の本棚やタンスがあった。
これでドアを閉じていたらしい、そして何かが当たってそれがズレたみたいだった。
俺は何が当たったのかと当たりを見渡すと……。
ドアを開いて右側に奇妙な物体があった。
奇妙な物体とは言いすぎかもしれない、大家の大山さんだった。
大山さんは太った中年男性しかも独身で俺と同じ階層に住んでいた人だが、下半身が無くなり代わりにアメーバのようなものが大山さんをじわじわと包もうとしていた。
「た、助け……あ、朝から急にこいつが!!」
大山さんは全裸だった、正確に言うとアメーバが包んだ所が服を溶かしそのまま大山さんまで溶かしていた、いやこれは溶かしているのではなく……。
「た、食べているのか……!?」
俺はあまりの自体に眺める事しかできなかった。
その間にも大山さんは溶かされていく、アメーバに吸収されていく。これで家賃は払わなくて良くなるのか?
「お、おおぇ……」
あまりの見た目の嫌悪感に嘔吐してしまった、胃酸で溶けたカステラがボトボトと床に落ちる。勿体ない。
ヤバい、これは見ちゃいけないモノだ。
そう考え、やっと出られた部屋に戻ろうとしたのとアメーバが大山さんを捕食し終えたのは同時だった、アメーバがこちらに向かって来る。
俺は急いで部屋のドアを閉めたが一歩遅かった、閉じたドアの隙間からアメーバの体(?)がはみ出していた。
危険を感じ奥へと走る、四畳半なので走るといっても本の一瞬であったが、その動きで腰の布がハラリと落ちた、この際構ってる暇もない。
アメーバがコチラに近づき、足元で止まった。
「え?」
アメーバが床に落ちた布に乗っかり一瞬で吸収した。
その後アメーバは俺の方に向かってくるかと思い体を硬直させたが、アメーバは何事も無かったよに玄関に向かう。
それに俺は面食らい、急いでアメーバの後を追おうとしたが——。
「あっつっっっ!!!!」
湯豆腐のナベに手が当たりひっくり返してしまった。
全裸の俺には熱さが直接伝わり、湯がきすぎた豆腐は床にぐしゃっと落ちてしまったが、それよりもアメーバにもお湯が掛かったらしくグニョングニョンという感じで動きまくっていた、苦しんでいるようにも見えた、しばらくするとアメーバが水のような液体に変わり動かなくなっていた。
「これはもしかしたら……」
俺は玄関の外にあるタンスを開けた。
そこには俺の服は一枚も入ってなかった。
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