『国際結婚、国際結婚』って言うけどね。

@txjp

第1話ばくわら

『じゃぁ、どんなタイプがいい?』

渋谷のスクランブル交差点を急ぎ足に渡りながら、ユカに尋ねる。

『目が青くて、背が高くて…』


朝方4時に近い時間。

久々に会うユカと居酒屋で、話に夢中になり終電を逃した26歳の秋。

『始発の時間までクラブに行こう』

ユカの提案をすんなり聞き入れたのは、何も邪魔するものがなくなったから。

クラブに行くのは何年ぶりだろう…。ずっと誘われても断って行くことがなかったクラブ。だって彼氏がいるのに行く必要ある?って勝手に 恋人がいるなら行ってはいけない場所リスト に入れていたあたし。

でも、今はフリー!7年間の恋愛にピリオドを打って、フリーを楽しもう!!ってことでクラブに向かう。

久々のクラブにウキウキと、予定していなかった急遽のクラブにドキドキと、ジーンズにTシャツにパーカーそしてスニーカーという格好に『…。』複雑な気持ちだけど、そこは初めて行くクラブだし音楽聞けばいいし!と、言い聞かせながら、女子的な会話をしようとユカにタイプを聞いてみていた。


『アスは?』

『あたし??あたし、目が青い人怖いからなー。アンビリーバボーの殺人事件の犯人たいてい目が青くて白人じゃん』

←当時の私的な偏見の考えです。全く、事実無根です。


それに対して留学帰りのユカが

『ねぇ、本当にレイシスト!そんなことないからね』

即答。そして、レイシスト呼ばわり。

確かにあたしは偏見がすごかった。

だって、そんなこと、なかった。

今は、はっきり分かってる。

でも、私の視野は狭くてテレビやラジオ、ネットでしか情報はなくて、世界を知ろうとはしなかった。

興味がなかった。

よく、結婚式でクリスチャンじゃないのに神父様に誓いの言葉を告げているのを見ると 『ねぇ、あんたクリスチャンじゃないじゃん!』 と軽いツッコミを入れていた。

そして、必ず『あたしは神前式!絶対に日本人だもん。白無垢着るのよ』と言っていた。


クラブに入ると、もう時間も時間。

出ていく人もいるし、酔って動けなくなってる人も…DJの流す音楽に楽しんでいる人もさまざまだった。

あたしも楽しもう♪


踊りながら横を見ると、あら!目が青くて背が高い!!ちょ、ユカ!!

人混みの中にユカを発見。目が合う。にっこりするユカ。


はい、りょーかい。

女子校中学、高校と同じ学校。意思疎通のレベルは半端ない。

ユカのあの目と顔の表情は、『よし!いいね!今行くから、繋いでおいて!!』

という意味だ!!


体を張るあたし。

背の高いガタイのいい目の青い白人男性に、勢いよくぶつかる。

これしかない。笑


びっくりしている外国人


『ははは、sorry』

超絶うざい日本人女性、あたし。


『%$#@!*`℃$#^』


ん?何か言ってる…え?英語話せないよ。ちょ、ちょっと待って!今、英語の達者なユカが来ますから!


『sorry I can't speak english!! My friends can speak english !』

そう言ってユカを目で探す。

あーいたいた!

少し先にユカがいる。人混みでなかなかこっちに進めないユカ。

待ちきれないあたし。早くみせたいのよ、あなたの理想がここにいます!と心で叫ぶあたし。

そしてすぐそこまできたユカ。


あと少し!早く早く!…ん?

え?…え!!!


"ユカさん、隣の方誰ですか??!!"心の叫び


何なんだあいつ…。誰あれ?


『アスー!ちょっとこの人よくない?』

隣の方に聞こえないぐらいの声で私にこっそり話すユカ。


まってまて。6年間で培った意思疎通はどこへ…

そしてユカがあたしの隣の方を見て

『あれ?!!あらま!アス!あんたも見つけたのね!やったじゃーん!…ふふふ。じゃぁね!』


隣の方とニコニコしながら去ろうとするユカ

いやいやいや! ふふふ。じゃぁね じゃない!!

『ちょちょ!!まてまて!え?!ユカさん。隣の方、日本人ですよ??!目の色、青はいずこ?!』 

パニックなあたし。

それに対してユカが、

『あー。いや、いいんだって。大事なのはハートだからさ』

と。


そして去ることに成功したユカ。


はい。ユカに去られたあたし。

残ったのは、 

①急に白人男性に体当たりしたヤバイあたし


②白人男性


振り返ってからまた

『ははははは…sorry …ははは』


『$#@%&^$%&%#』

何か話している。…が、分からない。


英語が分からないのか。と分かったのか、少し経ってから何事もなかったように音楽を楽しみだした白人男性。


…あら。ま、いっか!

あたしも踊るか!!


気持ちを切り替えて踊る。


でもね、なんだろ…気になる。

彼の横をキープするあたしがいる。

視線が気になる。別に見られていないのに。

服装が気になる。暗くて分からないし、だから見られてないのに。


きっとこれは、恋愛離れしていたからだ。

急にこういう場に来たからそうなってるだけ。


言い聞かせる必要なんかないのに、言い聞かせる自分がいた。

この時の事をはっきり覚えている。


よく、不思議と運命の人に出会った時は、そのシーンを鮮明に覚えていると言うけれど、本当にそうかもしれない。


私は、今でも覚えている。

この先も、忘れる事はない。


そして、今もこの事を2人で話す時がある。


『最初に会った時、急に体当たりしてきてソーリーソーリー言いながら爆笑してきたよね』


え…。超気持ち悪い女じゃんそれ。


つづく

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『国際結婚、国際結婚』って言うけどね。 @txjp

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