⑤
鼻血が止まらなかった花子と、ずっとトイレ吐き戻し続けていた悠太郎、二人の放課後は散々だったけど、過ぎてしまえば可笑しくて、お互い笑いながら別れることができた。
二人だけの秘密は、ずっと心に残る宝物になるだろう。
……それからもう一つの秘密、こっそりとカバンに忍ばせ持ち帰ってきた『ロリータ』を読む。
これは、ビブリオマニアの悲しい性で、読みだした本を途中で放置することができなかったのだ。
今日中に読み終えて、明日の朝一番に戻しに行こう。
思い、ページをめくる。
内容は、確かに気持ち悪い変態男の内面がびっしりだった。
ただ、こう言ってはなんだけど、直接的な描写はほとんどなくて、想像してたよりも刺激はぬるめだった。
……やっぱ、フィーリングが大事かな。
悠太郎の言葉を思い出してまた花子は顔が赤くなる。
思い返せば自分、すごい攻めてたんだ。と思い、そして楽しかった、とも思う。
今度お薦めする本は、ちょっと過激なものにしようかな、なんて、思いながらあとがきのページまで進む。
と、何かが舞って落ちた。
何気なくそれを摘んで見れば、それは黒く縮れた体毛だった。
もう二度と、他の人、特に男子に人気があるからという理由だけで本を選ぶのは辞めよう、という意思表示も含めて、花子はあらん限りの悲鳴を上げた。
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