④
「本田さん大丈夫?」
悠太郎が優しく声をかけてくれる。
それはそれで嬉しいけれど、今の花子はそれよりも消えてしまいたい気持ちでいっぱいだった。
「まぁ、その、あれだよ。女子はこういうのは無縁だからさ」
フォローされてる。それがいよいよ顔を真っ赤にさせられて、ほんとにもう、だった。
「ほら、これ」
悠太郎が差し出してくれたポケットティッシュに花子は左手を伸ばす。
右手は自分の鼻の上、溢れ出る鼻血を一生懸命押さえていた。
ロリータを読んで鼻血が止まらなくなった図、文面そのままで即死しそうなパワーワードだった。
末代までの恥、もうお嫁に行けない。
死にたい気持ちでティッシュを取り出し鼻に当てる。
「あ」
花子は思い出してまだ血塗られてない左手で本を開き、最後のページの貸出カードを見る。
本田花子、自分で書いた名前があった。
どうしよう。
この本は男子に人気がある。
どうしよう。
きっとすぐに誰かが借りる。
どうしよう。
女子の名前は自分だけ、調べればすぐに自分にたどり着く。
どうしよう。どうしよう。どうしよう。どうしよう。どうしよう。どうしよう。
頭が真っ白にになる花子の目の前で、悠太郎はその貸出カードを引き抜いた。
そして食べちゃった。
パクリと口に入れて押し込んで、モグモグとする。
それは花子のために証拠隠滅してくれてるんだと察して、嬉しさにいっぱいになった。
そしてゴクリと飲み込んだ悠太郎が、その顔がみるみる青くなって、口を押さえながら図書室を飛び出していって、嬉しさは心配となった。
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