1月5日
「ううぅー、眠いぃー」
「昼から仕事ならまだ良いじゃん」
「だからほんとならこの時点でも寝てるハズなんだよぉー」
助手席に座り早起きさせられたことに対する文句をぶつぶつ続ける私。
カチッとしたスーツで身を包み凛々しい表情で運転席に座る親友。
オンオフの切り替えが上手な親友は例え早朝3時から仕事だったりしても十全に対応するのだろう。
私とは真逆と言っていい。
それにしても、二日連続で、それも今日は仕事だというのに親友の家に泊まることになろうとは。
昨日の夕方の私にはとても想像できていなかっただろう。
思い出す限り、親友はお酒を嗜むタイプではなかったから、きっと二人ともお酒は飲まず居酒屋できちんとご飯を食べ、私は車で送ってもらい、自宅でアニメでも見ながら晩酌するのだと思っていたのだろうけれど、蓋を開けてみれば、「このお店の味付けはご飯よりお酒に合う濃さだなー。久し振りに飲もうかな。明日昼から仕事だっけ? 帰り運転してもらっていい?」という有無を言わさない周到な流れで私の退路は断たれ、結局帰りは私が親友の車を運転して家に送りそのまま泊まる羽目になったのだった。
私のお気に入りのご飯屋さんを気に入ってくれたのは私も嬉しいが、そのせいで私の睡眠は中途半端に断続的なものになってしまった。
まあ、帰ったらお昼まで寝てやるけどね。
なんて思いながら、ガサリ、と私の膝の上に乗っているビニール袋の位置をなおす。
親友の家を出る時、親友のお母さんから持たされたお土産だ。どこかで買って来たと思われるパック入りのたこ焼きが入っている。
何故たこ焼き……。
朝起きたらリビングのテーブルにたこ焼き入りビニール袋は既に置いてあったから、昨日の夜のうちに買って来てあったのだろうけれど、親友に聞いた話によると別に私へのお土産に買って来てくれた訳でもないようだった。
親友の妹ちゃん曰く「お母さんはよく分かんないから。私と二人で映画観に行って、私がクレープ買ってる間にお母さんは何故かたこ焼き買ってた。謎」
だそうだ。
察するに『私達だけ出掛けるからお土産くらい買って帰ろう』くらいのニュアンスだったのだろうけれど、まさかその全てが私の胃袋に入る流れになろうとは思ってらっしゃらなかっただろうな。
「たこ焼き? 食べないよ? 持って帰れば?」
「私も食べないです。持って帰って良いですよ」
親友と妹ちゃんの二人にまでこう言われてしまっては持って帰るほかない。
そんな訳で朝7時に冷めたたこ焼きを2パックお土産にもらい、私は帰宅したのだった。
「朝ご飯とお昼ご飯かなぁ」
発進する親友の車を見送りながら、私はたこ焼きの入ったビニール袋を小さく揺らした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます