1月6日
「うぅー……頭痛い……。クソぉ、もう1時半じゃねーか……。やることやんねーとって気持ちは分かるけど、1月頭から残業することねぇじゃんかよぉ」
ズキズキと響く頭痛に堪え、布団の上に
明日も昼から仕事なんだからとっとと引継ぎ残して帰って薬飲んでれば良いのだ。
どうせ多少の熱が出たところで、私は立場上おいそれと休んだりできないのだから。
「……まぁ、こうやって責任感を陰日向でアピールしてるお陰で部下からの信頼があるんだから、仕方ないのかね……」
ブツブツと陰口じみた小言を呟きながら、遅めの晩御飯を作ろうか
頭が痛くて動きたくないし、帰りがけにコンビニで買った乳飲料をわずかばかり飲んだら、空腹を誤魔化すくらいにはなった。
軽くシャワーを浴びて、早々に布団に潜ったほうが身体の為だ。間違いない。
間違いないのだが、シャワーを浴びるにしても、着替えるにしても、立ち上り動かなければならない。
しかしそれが頭痛のせいでひどく億劫だ。
「確か年末に喉が痛くなった時に買ったかぜ薬がまだ残ってたな」
そう漏らし、横に転がしておいたバックパックを乱暴に漁る。
一刻も早くこのしんどさをどうにかしたい。
オレンジの半透明なカプセルを二粒口に放り込み、ミネラルウォーターで流し込む。
これで、少しすれば今より少しは楽になるだろう。
そしたらパパッとシャワーを済ませ、頑張ってちゃんと髪を乾かして、少し厚着をして眠りに就けば良いのだ。
明日も仕事なのだから、今無理をする意味なんてない。
仕事柄、平日が休みになることが多いけれど、次の休みは三日後の月曜日だ。
上司の計らいなのか謎の三連休になっていたし、それまでは何とか体調を悪化させないように気を張って、休みに入ったら今度こそ自宅で自堕落で無為な休日を過ごそう。
ズキ、ズキ、と例えようのない痛みが頭の中に響く。
手のひらをおでこにあて、冷えた手で火照る頭を冷やす。
熱があるのが分かる。
私の家には熱を計る為の器機は一つもない。
このご時世、100円ショップにすら体温計くらいおいてあると思うが、敢えてその手の体調管理の道具は買わないことにしている。
具体的な数字を目の当たりにすると、実感してしまい、一気に体調を崩してしまう。
そんな強迫観念じみたイメージを持っているからだ。
いや、こういうのはノシーボと言うのだったかな?
思い込みが強い質ではないつもりだけれど、信じやすいし、言われたことに『そうであれ』と従ってしまう癖がある。
厄介で、面倒な性格だと自分でも思っているが、なかなか抜け出すことができない。
これが抜け出せていたら、とっくに今の会社を辞めて起業でもしているか、自給自足の生活でも送っている気がするが。
「薬効いてきた……かな」
少し痛みが和らいできたような気がする。
いや、和らいできたと思おう。そうでも思い込まないと、いつまで経っても眠れない。ハズだ。
数時間後には起きて、仕事ができるように身体の調子を改めて整えなければならないのだから、今はほんの少しだけ身体に無理を強いて頑張ってもらうとしよう。
「はぁ……。絶対日曜は朝から長風呂してやるからな……」
そう、私は自分に言い聞かせたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます