第5話 悪夢
食堂
「なんだ?この食べ物」
(カレーって食べ物らしいけど、ボクも詳しくは分からない)
「へー、これがカレー──なぁ!ちょっと変わってくれよ!食いてえ!」
(あ、うん!ちょっと待ってて)
シンジは目を瞑り意識を集中させると次に目を開けた瞬間目の色が変わった。
「いただきまーっす!」
ギシンはカレーを一口食べると気に入ったのかガツガツとカレーを食べ始める。
「シンジ!お行儀悪いよ!」
「あ?うっせぇな!俺は今カレーを──ってアイ!?」
「ギシン!ちょっと!」
「シンジってそんなにカレー好きだったっけ?」
「あ、あぁ!俺はカレー大好きだぜ?じゃなかった、だよ?」
ギシンは凄くアホっぽく振る舞う
「ギシン、ボクそんなキャラじゃない」
(良いんだよ!だいたいお前はいつもこんな感じだ!)
「そうなの!?」
「俺?」
「あ、えぇっと!気にす──しないで!たまに記憶が無いせいで一人称が混乱すんだよ!」
「だんだんなりきり感が雑になってるよ?これ流石にバレたんじゃ」
「へ、へぇ〜大変なんだね」
アイは少し驚きはしたが明らかに疑っている様子はなく返事をした。
「通しきれた!?」
(これ以上やるとボロが出るかもだな、交代すんぞ!)
「そうだね!ギシンは何やらかすか分かんないからね!良いよ!」
(一言余計だ!!)
ギシンは意識を集中させシンジと交代した。
「ねえ、アイちゃん」
「ん?
「この学校にその、アイちゃん以外のボクの幼馴染っているの?」
「もちろん!全員居るよ!」
アイは口に含んでいるものを飲み込むとそう答える。
(ぜ、全員って凄いな、
「えーっとね!ヒヨとミサキがガーディアンで、タクマが聖騎士だよ〜」
「おい!1年で聖騎士って可能なのかよ!」
(うん、ガーディアンには中等部があるからね、中等部で首席クラスの人間とか違う国の王族とかなら聖騎士でスタートってことも可能らしいね)
「要はエリートコースってことか?気に入らないな!」
(でも理には適ってると思うよ?王族の人達をその、エリートコースに入れるってことは外交関係を大切にしたいって事だろうし、中等部首席クラスの人を聖騎士として入学させるのは能力を引き伸ばしたいって意味を持ってるだろうしね!)
「まぁ、そうだろうが王族を聖騎士にするってのは気に入らねぇよ!どうせ技もそれほど無いボンボン達だろ?そんなのただただ傲慢な態度とるだけだぜ?」
(それはもう仕方がないから受け入れるしかないと思うけど)
シンジはため息混じりにギシンへ向けてそう言った。
「それでさシンジ!明日一緒にある所に来て欲しいんだけど!」
「何をどうしたら"それで"になるの!?」
「む〜聞いてなかった?特訓だよ!特訓!」
アイは頬を膨らませてシンジに迫るようにそう言った。
「特訓?」
「そうそう!だってさ!これから私達は円卓を目指すんだよ!そうなるとまだまだ力が足りてないと思うんだ!」
(円卓、確かにボクがかつて目指したのはそこかもしれない、だけど今は違う──ボクだけじゃなく今はギシンがいる)
「別に良いんじゃねぇか?その目標は元々お前の目標、目指してもバチは当たんねぇと思うぜ?」
(ギシン)
「ねっ!行こうよ!」
(ギシンもそう言ってる事だし行くか!)
「うん!」
シンジは部屋に戻ると先についていた荷物に目を通し始め、整理した。
(よし、ちゃんと制服もあるね!)
「そういやなんでアイは制服着てたんだ?」
(さぁ?学生気分をいち早く味わって起きたかったんじゃないの?)
「──あ〜理由はコレだな、多分」
そう言うとギシンは一枚のチラシの方へとシンジの視線を誘導させる。
「制服でご来店の方に限り500ゾル割引?」
ゾルとはこの国の貨幣の事であり、1ゾル=0.75円程である。
「コレって喫茶店のチラシだろ?」
(なるほどね)
「さてっと、明日は出かけるんだろ?そろそろ寝たらどうだ?」
(それもそうだね)
シンジはそう言うとベッドの中へ入り眠りについた。
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「こ──ここは」
ふと気付くとシンジは白と黒の色をした剣を持ち、シンジの周囲は炎の壁に囲まれ、囲まれた部屋の中央にシンジとさほど背の変わらない少女が自分とさほど変わらない大きさの刀を持って立って居た。
「ホムラ!ボク、ボクは!」
「シンジくん、死にたくないのは私も一緒だから手加減はナシだよ!」
そう言い放ちホムラは刀を構えシンジの方へ走る。
("また"ボクはやるしかないのか)
振り下ろされた刀をシンジは剣で受け止めた。
受け止めた刀を振り払うと即座に剣を構え直しホムラを突くが、ホムラはコレを少し体制を低くして避けた。
「フレイム・バースト!」
ホムラがそう叫ぶと右手から火柱が現れシンジの腹部を狙う。
(ギシン!)
「わかってる!」
火柱が当たる寸前シンジは自身の覚醒能力である分身を使い避けると二人はホムラの左右へ回り込み
シンジとギシンが同時に斬りかかると辺り一面が白い光に包まれる。
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目を開けると眠る前と同じく寮の天井が見える。
「はぁ、はぁ──夢?」
「どうしたんだ?」
慌てて目を覚ました所為かギシンがつられて起きるとシンジが息を荒くして居たことに気づき、心配そうに聞いた。
「いや──ちょっと
「そうか、明日はどうせ連れ回されるんだ、早く寝とけよ?」
「うん」
そう言いシンジは目を閉じる。
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