第4話 真実
アイの事件から数分後、ボク達は入寮式に参加するために寮へ帰った。
入寮式という形を取っているが要はただの挨拶会のようなもので寮関係者の紹介と部屋割や寮のルールを知らされるだけである。
(ここがボク達の部屋みたいだね)
シンジは部屋のドアを開ける。部屋の中は7畳ほどの広さでベッドと机が最初から備わっており、机の上には小さなテレビまでが置いてあった。
(さすが国立学校の寮だね!最底辺のクラス寮とは言え設備がすごい!)
ガーディアンには3階級のクラスがあり、上から聖騎士、ガーディアン、ナイトである。
因みにシンジやアイなどの新入生は入学試験の成績や覚醒能力の強さによってランクが変わるが、一般入試組は聖騎士になる事はなく、ガーディアンが限界である。
「それにしても助かったな!部屋が一人部屋でよぉ!」
(確かにそれに関しては助かったね!裏切る予定とは言え仕事をしてないとその計画は泡になるし、
「さてと、とりあえず今日分は報告しとこっと!」
そう言うとシンジは通信機器を取り出し装着すると、周りを確認してから発信ボタンを押した。
「HQ、こちらアーティファクト──これより定時報告を行うよ、オーバー」
「こちらHQ、了解だオーバー」
「ボク達は入寮を済ませた、部屋は一人部屋だオーバー」
「了解した、他には何かあるか?オーバー」
「そうだね──あっ、学業は明後日から、明日はこの国の調査を行うと共に少々買い物を行う、こちらの報告は全部終わりだよオーバー」
「了解した、明日の定時報告は何か問題や発見があった場合のみとする、オールオーバー」
(よしっと!報告終了!)
「それにしてもどうする?夜飯までは時間があるぞ?」
「シンジー!居る?」
ドアの外からコンコンッとノックがした後、アイの声が聞こえる。
(アイちゃん?何だろ?)
「どうしたの?アイちゃん」
シンジがドアを開けると外でモジモジとしているアイが居た。
「あの〜今日はごめんね!色々と」
「いやいや!こっちこそごめん!あの時は流石に言いすぎたと思う、アイちゃんの気持ちも考えずに知らないとばかり言いすぎた」
アイはその言葉を聞き少し黙る、そして2秒ほど経った後に顔を上げると笑顔で口を開いた。
「ならお礼言わなきゃ!ありがとシンジ!お人好しな所は変わらないままだね!」
「お人好しって」
「フッ!お人好しはお前の本質ってこったな!」
「でもシンジが生きてるだけで良かったよ〜!これで他のみんなは絶対に喜ぶし!」
(タクマや他のみんな──多分、初めてアイちゃんと会った時に言ってた人達の事かな?)
「なぁシンジ、今のこいつのセリフ、少し違和感がないか?」
(違和感?)
「あぁ!こいつ今お前が"生きてるだけで良かった"って言ったんだぜ?」
「ねぇ、アイちゃん!生きてるだけで良かったってどう言う事?」
そう言われるとアイは暗い表情をすると、重々しく口を開く。
「シンジ、ガライって街の名前は聞いたことある?」
(ガライ──確か研究所で教えてくれたよね、一年前に一晩で火の海にされ街ごと消されたって)
「あぁ、あの日の前日、ホムラに聞かされたよな?」
「聞いたことがあるよ、でもどうしてガライの街?」
「え〜っとね、シンジが私の幼馴染って話ししたよね」
「うん」
「シンジは、その──12歳の時に引っ越したんだよ、ガライの街に」
(ボクがガライの街に住んでた!?)
「おい!どう言うことだよ!シンジ!」
(知らないよ!ボクだって初耳なんだから!)
「──そういう事か!あの時ホムラの言ってた意味、今分かったぜ」
(あの時って別れた時の事?)
「あぁ、ホムラの奴お前がガライに住んでたのを知ってて言ったんだろ?自分の罪をお前にだけは教えたかったんだろうぜ?」
(そっか)
「で、でも!今生きてるから結果オーライだよね!おばさんやおじさんは元気?」
突然の告白に二人は内心で騒然とし、表には出さぬようにしていたが明らかに表情が動揺していた為にアイは話を逸らそうと気を利かせてそう言った。
(おばさんやおじさんってことはボクの両親のことだよね、記憶がないから生死すら分からないけど)
「ごめん、記憶がないから分からない、でも両親は──その」
「そっか──でも、シンジが生きてるんだもん!生きてるに決まってるよ!」
(だと良いけど)
シンジは内心そう思い、ため息をつく。
「でも、本当に生きててよかった──そうじゃないとタクマやヒヨも浮かばれないし!」
「なんでその、タクマくんやヒヨくんも?」
「だってタクマがガーディアンに行く気にしたのはシンジなんだ!それにつられてヒヨも行く気にしたんだよ」
「へぇ、そんな事があったんだ」
(そういや記憶がないから幼馴染残り3人は知らないんだよな──残り1人に対しては名前も知らないし、この際聞いてみるか)
「ねぇ、アイちゃん!」
「どうしたの?」
「教えてよ!残り3人の幼馴染のこと!」
「シンジ──そうだよね」
アイはそう言葉を零すと笑顔でシンジに返事をする。
「うん!良いよ!でも、今日はもう終わりだね!」
「え?どうして?」
「だってほらもうご飯の時間だよ?」
アイはそう言いながらシンジの部屋にある時計を指差した。
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