6-6【こういうのを背負うのが大人の役目ってわけだね】
☆バーグラー
フェンサーに対して、恩を感じている。それは先ほど言ったと思う。この想いに嘘偽りはなく、むしろ今でも思っている。
彼女はきっとカリスマ性の塊だったのだ。本人は、自覚してないだろうが。とにかくそれに一瞬でも救われたのだから。
だから、目の前にいるゾンビと化したフェンサーを助けるのは、それに対する恩返しとも言える……きっとそう彼女も思っているはずだ。
ダンッ
バーグラーは駆け出す。ナイフを使い、フェンサーと距離を詰めて行く。ナイフとレイピアが当たり、火花を散らす。
一発一発。全力を込めて行く。手を抜いて勝てるような相手ではないことは、わかっている。
右足を軸とし、左足を回す。グルンと風を切りつつ、バーグラーの足はフェンサーの横腹に突き刺さる。ぷちりとなにかが潰れたような音がした。
一瞬の嫌悪感。しかしそれは気にする暇はない。瞬時にバーグラーは右足を浮かべて、フェンサーの体を挟む。
身動きはこれで取れなくした。カランと音が聞こえたため、おそらくレイピアを落としたのだろう。そのまま上体を起こし、そのままフェンサーにナイフを突き刺そうとする。
そういえば、こんなに動けるなんて正直予想外だ。魔法少女になると動きというのはかなり早くなるらしい。
筋肉もつくのだろうか?上体起こしやそう言ったことは、バーグラーはあまりしたことがない。体力測定では毎回最下位付近をうろちょろしていた。
しかし動くというものは気持ちがいい。これなら運動はし続けた方が色々といいかもしれない。
——ん?
なんでこんなにいろいろなことを考えているんだろう。こんな状況にあるというのに、頭は恐ろしいほど回っている。これはまるで——
「危ない!バーグラー!」
ランサーの叫び声が聞こえた瞬間、自分の背中に激痛が走った。それと同時にこの思考の正体がわかる。そうこれは。
「まるで……そうま、とう……」
◇◇◇◇◇
バーグラーが倒れた。フェンサーはレイピアをわざと落としたのだろう。落ちているレイピアを蹴り上げバーグラーの背中に突き刺し、そして釘を打つようにさらに蹴り込んだ。
ランサーはバーグラーの名前を呼びながら、フェンサーに近づく。槍を振るい、相手を遠くに吹き飛ばした。
バーグラーの肩を抱き、ランサーは走り出す。先ほどダメージを負った脇腹が痛むが、そんなこと気にしてる暇はない。
なんとか近くの部屋に逃げ込み、そこにあるベッドの上にバーグラーを寝かせる。待っていたら回復するかと思い、とにかく安静にと一言声をかける。
だが、回復すると言ってもなんとなく……ここでは回復量が落ちてきてる気がする。脇腹がまだ痛むのがその証拠だ。
「待ってなバーグラー!すぐに手当てしてやるからさっ」
ランサーはそう言い、バーグラーに手当てを施す。とは言っても、軽い仕方程度だが……これで効果があるかはわからない。
しかし何もしないよりかマシだ。衰弱しているバーグラーを見て、ランサーは槍を握る手を強くする。
外を見るといつの間にか、日が沈んできていた。それを確認した後、ランサーは扉をあけて外に出る。
「……こういうのを背負うのが大人の役目ってわけだね」
扉を閉め、ランサーは走り出す。これ以上の被害をなくすためにも、ランサーは止まるかは許されなかった。
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