6-5【行かなくても行くんだ】

 ☆ガンナー


 カチャリ。


 銃は心地いい。触れると安心感を与えてくれる絶対的な存在だ。これ一つあるとないとでは、心の持ちようが変わる。


 日本は甘い。そう思っている。先生も常にそう言っていた。いつ、どこで襲われるかわからないのだ。自衛のための武器はあったほうがいい。と。


 実物を持ち歩いてはいたが流石に外では出さない。モデルガンを相手に突きつけて、襲ってくるものを撃退していた。


 だが今はどうだ?ガンナーが目の前にいる狂人に向けている銃で、動きが止まるとは思わない。なんせ彼女に銃はあまり効果がないのだから。


 自分たちの戦略を考える。己の力不足を認めたくないのだが……おそらく、2対1でも勝てる気はしない。一度戦ったガンナーだからわかる。


 銃をファイターに向けつつ、キャスターの方をちらりと見る。彼女は戦いたくてウズウズしているようだ。


 だがしかし。彼女を戦わせるわけにはいない。ガンナーはこっそりとキャスターに耳打ちをする。すると彼女は意味がわからないという顔を、ガンナーに向けてきた。


「大丈夫だよぉ?私は強いからねぇ?だから、お嬢ちゃんが来るまで耐えてみせるさぁ?……だから早く」

「で、でも……」

「いいから!行けなくても行くんだ!……大丈夫だからねぇ?」


 ガンナーの言葉に押されて、キャスターは元来た道を走り出した。その姿を見送った後、ガンナーは銃を構える。


 しばしの沈黙。太陽の光が窓から入って来て、彼女たちの世界を照らしていた。


「——っ」


 バン!


 ガンナーの銃口が火をふく。まっすぐ進む弾丸は、ファイターの肩を貫いた。しかし、彼女はそれを気にせずに大きく笑う。


 笑い声が続く間も、ガンナーは何度も銃を放った。しかし、それはファイターの声を止めるには至らず、むしろ声が大きくなって来たように思える。


 ダンッと突然ファイターが走り出した。ガンナーの利点はただ一つ。遠距離で戦えるという事であり、近づかせてはいけない。


 接近戦に持ち込ませないために、弾丸を弾幕のように放つ。だが、それはファイターの動きを止めることはできなかった。


 突如、ファイターは上に大きく飛んだ。天井を利用しこちらに飛び込んで来たのだ。ガンナーは後ろに飛んでその場から離れる。


 ガゴン!大きな音がなり土煙が舞う。やばいと本能的に察してガンナーは右腕を守るように体を回した。


 それと同時に、土煙から飛び出て来たファイターがガンナーの左肩に拳を突き刺した。ゴギリと音が聞こえ、ガンナーは後方に吹き飛ばされる。


 壁に衝突し、口から血を吐く。無事な右手を使い、銃を構えるが、もうすでに目の前にファイターの顔があった。


 ガンナーの顔面に突き刺さるファイターの鋭い一撃。もう一度とファイターがもう一度突き出したが、それは当たらなかった。


 拳に合わせるようにガンナーの銃がそこにあった。ニヤリと笑い、ガンナーは引き金を引く。


 ファイターの手が爆発する。肘から先消えたそこを不思議そうに見る彼女をみながら、ガンナーはゆっくり立ち上がりフッと息を吐く。


「さて、仕切り直しだ。キャスターが来る前に、終わらせてやる……ふふっ、さぁ、はじめるよぉ?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る