6-3【ずっとずっと一緒だよ?】

 ☆ファイター


「ヒヒ、ハハハハハ」


 ゆらゆらとふらつきながら少女は歩いていた。足取りはおぼつかず、今にも倒れてしまいそうなほどの大粒の汗も同時にかいていた。


 彼女は何も考えられないほど、ひどく衰弱していた。もし、一瞬でも気を抜けばがらんと崩れて倒れてしまうだろう。


 だが彼女は倒れない。何も考えていないが、頭の中に一つだけべったりと張り付いて離れないものがあったのだ。


 モニターと共に行く。


 ただそれだけだ。それだけのために歩いている。何でここまでクラクラしてるかは、本人にもわかってない。


「ハハ、ハ……ハ?」


 突然ピタリと歩みを止める。そして彼女は耳をすませる。聞こえてくる足音を数え、ニヤリと笑った。


 大きく息を吸い、吐く。気分を落ち着かせる意味なんてないかもしれないが、これはもう無意識にしていることだ。


「モニター……ハハ、ハハハハハ」


 ファイターは笑う。もう、彼女の目は乾いていた。息を殺しゆっくりと歩き出したのだった。



 ◇◇◇◇◇


 ☆ガンナー


 昔、RPGのゲームをした時、分かれ道に会った時進んだ先が正解ルートなら、もう片方のルートも一応行く。ということをよくしていた。


 片方の道には基本的に宝箱が置いてあり、それを求めて、だ。もちろん、あまりいいアイテムは入ってないことが多いが、満足度はある。


 何が言いたいかというとこのまままっすぐ道なりにいけば、簡単に上に上がれそうなのだ。ゲームなら後戻りをするが、現実だと流石に面倒。


「そういえばガンナーお姉ちゃん?」

「なんだい?キャスター……何が言いたいことがあるのかなぁ?」

「結局、叶えたい願いってなんなの?」


 キャスターにそう言われて、ガンナーは天井を見ながら「そうだねぇ?」と呟いた。叶えたい願い。か。


 ガンナーは……殺し屋だ。独学ではなく、もちろん教えてくれた人がいる。それが、先生である。ガンナーの師匠であり、さらに言えば親代わりでもある。


 その師匠はガンナーに数多くのことを教えてくれた。恩もあり、もちろん情もある。この人と家族になれるとしたら、それはとっても幸せだと思えた。


 しかしその幸せは他でもない自分の手で、壊すことになった。いや、壊せなかったのだが。


 先生が最後にした指導。それは自分を殺せというものだった。一番大切な人間を殺せば、この先誰を殺す時に躊躇がなくなる。だから殺せ。


 しかし、ガンナーは殺せなかった。殺し損ねてしまった。彼女が放った弾丸は、致命傷にならず淡々と苦しみを与えて、そのまま失血で死んでしまった。


 ガンナーの願い。それはその先生に会い、そして殺す。この手で、きちんと。仕事をこなすのが、願いだ。


「会いたい人がいるんだよぉ?」


 そんなこと言えないので、とりあえずそう答える。キャスターは納得してないような顔だったが、それ以上言及はしなかった。


 暫く歩くと曲がり角にぶつかる。キャスターはテラーに向かって偵察してくるように頼んでいた。その言葉にこくりと頷いた彼女はゆっくりと歩き出して過度に消えて行く。


「ガンナーお姉ちゃん」

「……」

「ずっとずっと一緒だよ?」

「……そうだねぇ?それに、私なりの愛し方。まだしてないからねぇ?」


 その言葉に、キャスターは笑顔で頷く。そんな彼女の頭をガンナーは撫でた。目を閉じて、気持ちよさそうにしているのを見て、ガンナーは少しだけほっこりする。


 それと同時に、曲がり角から足音が聞こえてくる。テラーが帰ってきたと思い、受け入れようとしたが、それと同時に血の異臭が漂ってきた。


「キャスター!!」


 キャスターの首根っこをつかみ、ガンナーが後ろに飛ぶのも同時に、先程まで立っていた場所に誰かが拳を振り落としていた。


 煙が舞い、彼女たちの前に何かが飛んでくる。こちらを睨むように見たいはそれは、テラーの生首。


「あは、ははははは!!」


 それと同時に煙の中から、一人の少女が歩いてくる。テラーの体を引きずりながら立っているそれは、とても人間には見えなかった。


「ちっ……面倒な奴にみつかったねぇ?」


 そこには少しだけ血を流している、狂闘士ファイターが狂ったように笑いながら立っていた。逃げることはできそうにない。


 戦うしかない。そう思うと同時に、ファイターはこちらに飛び込んできたのだった。

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