6-2【それに一回みぃちゃんの代わりに魔法少女殺したから】

 ☆ガンナー


 軽く調べたが、ほとんどの部屋は何もなかった。子供部屋、客室……そして、キッチン。しかし、他の部屋はがらんとしていた。


 つまり、部屋は広いのだから、殺し合いはここでやれと言うわけか。確かに、これなら場所に困ることはなさそうだ。


 こんこんと壁を叩く。壊れそうだが、ガンナーの銃だと一苦労だろう。それ以上に、杖で突き殺すことが限界のキャスターじゃ、なおさらだ。


 しばらく歩くと、今度は分かれ道に出会う。右に行くか左に行くか……どちらがいいか、全くわからない。


「二手に別れるかなぁ?どうしようかぁ?キャスター?」

「んー……じゃあ、みぃちゃんとテラーお姉ちゃんとガンナーお姉ちゃんで右に行こう!フェンサーお姉ちゃん、左でお願いね?」

「ヴァ……アァァ……」

「大丈夫かなぁ?フェンサー一人で……」

「大丈夫だよ!フェンサーお姉ちゃん強いし、それに一回みぃちゃんの代わりに魔法少女殺したから!それじゃ、フェンサーお姉ちゃん?!」


 その言葉とともにフェンサーはゆったりとした足取りで左の道を歩いて行く。残された三人は、右の道に行く。


 この先に何があるかわからない……がしかし。ここまできたら立ち止まるわけにはいかないのだ。進み続けたらいつかきっと、叶う筈だ。



 ◇◇◇◇◇



 ☆バーグラー


 2人は窓から離れ、近くの扉から外に出る。ここがとにかく城のようなところであり、外に一歩出たらそのまま下に落ちてバイバイ。だ。


 壁はランサーが全力を出せば破壊できそうだが、しないほうがいいに決まっている。よくはわからないが、上に上がるべきだと直感した。


 タッタッタッタッ……


 走る足音が辺りに響く。二つ重なるそれは、なんとなく。しかしそれでいい。とにかくバーグラーに勇気を与えてくれる。


 走りながら、少し考える。バーグラーがここにいる理由……それはもちろん、大切な彼氏が死にかけているから。それを治すために。


 しかし今の彼女は——彼のことを諦めたわけでないが——彼女は、生きることを選択した。生き続ければ彼にも会える。意識がないなら、それを取り戻すように願えばいい。


 ここを乗り越えたら、奇跡ぐらいなら起こせそうな気がしたから。それに、一時期とは言えは共にいたフェンサーに恩も感じ、その彼女が命をかけて守ってくれたおかげで、今がある。


 ゆえに生き残る。ゆえに戦う。フェンサーの存在がここまで大きくなるなんて、はっきりいうと予想外だった。最初は、隙を見てランサーを殺そうとも思っていたのに。


 もしかしたら彼女はリーダーとして大きな存在になり得たのかもしれない。そう思い、手を強く握る。


 彼女は死んだんだ。


 でも、彼女は今、生かされている。おそらくキャスターの能力によって、だ。そんなこと、残酷すぎる。


 それに死者の冒涜ともいえる。フェンサーを助ける殺すことがきっと、意味があることだ。それがたとえ本当に残酷だとしても。


「……っ!止まってください、ランサーさん」


 ランサーの前に右手を出して動きを止めたのち、耳をすませる。確かに聞こえる足音は、先程までの自分たちのものが反響してるわけじゃなく、ただ近くを何者かが歩いてあるということを表していた。


 バーグラーはナイフを構える。一人で歩いているということは、そこにいるのはファイターだろう。今、彼女が何をしてるかはわからないが、もし願いを叶える立場にいたなら、ここでの戦いは避けられない。


 様子を見ようときた矢先、彼女たちの鼻に、ツンとした刺激臭が漂ってきた。腐った肉のような匂いは、それだけでランサーがバーグラーの前に出るのには充分すぎた。


 ランサーが前に出て、槍を構える。そして、バーグラーも同じように一歩踏み出して、目の前にある人物の名前をつぶやいた。


「フェンサー……さん……」


 この出会いは必然か。それとも、偶然か……どちらかは、誰にもわからない。ただ一つ言えるのは、ここにはかつて穏健派だったものたちが集められていた。


 ランサーとバーグラー。そして、フェンサーに彼女が殺したガードナー……なにか、糸で繋がれていたと言われても誰も不思議に思わない。


「……あ、あぅあ……」


 フェンサーはそう呻き声をあげる。そして、手にしたレイピアをバーグラー達の方に向けたのだった。


 その時の彼女はとても悲痛な雰囲気を持っているような。そんな気がしたのだった。

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