5-番外編【二人の行く先は】
☆ブレイカー
ここはどこかしら。
あたりは白い壁に包まれて、その真ん中に私は座ってるみたいね。さて、どうやったら出れるのかしら?
あたりを歩いても何もない。出れるなら早くしてほしいものね……私は疲れたもの。早く目を閉じて眠りたいわ。
コンコン。少し壁を叩いてみても、反応はないみたい。本格的にどうするべきかわからないわ。
「なんなのよこれふざけてるの早く出しなさいよこんな狭っ苦しいところ何も得がないわ早くしなさいよ本当に」
ため息をつく。なんなのよこれ。私はふざけた殺し合いに巻き込まれて、さらにこんなふざけたところに幽閉されるの?
「……ヒーラー」
一人の名前をつぶやく。彼女は私を利用しようとした少女。でも、この子はなんであれ私に手を差し出してくれた。そんな大切な子。
「……アーチャー」
一人の名前をつぶやく。彼女はおそらく私が脅威になれば排除しようとしたのだろう。しかし、そのまえに排除されてしまったのだが。
でも、あの子は悪い子には見えなかった。もし、悪い子だったら、ここにはもっと早く着いていたと思う。
「……」
一つの名前をつぶやく。この名前こそ、彼女が戦おうと決め、そして会いたかった存在。
現実が嫌になり、そこから逃げ出した。そのあとを追えばよかったんだろうけど、私は痛いのは嫌だったのよ。
だから楽に死にたかった。この戦いに参加した理由も、それ。まぁ、叶わなかったみたいだけどね。
でもまぁ。それでもいいか。なんであれ、大切な人に会うことができるのだから、もうなんでもいい。
「……あら?」
ふと気づくと、扉があるのが見えた。この先に行けば会いたい人に会える。そんな気がするわ。
ゆっくりとそこを開ける。その先はただ闇が広がっているだけだ。でも、三つだけ、光が見える。
「ふふっ……しょうがないわね私から会いに行ってあげるわよ」
そう言って私は一歩踏み出した。
◇◇◇◇◇
☆セイバー
「あがぁぁぁあぁあああぁあぁああぁぁ!!!???」
憎むべき相手は一足先に旅立ったらしい。死ぬことができないセイバーは、その痛みを代わりに受けることになっていた。
声にならない叫びをあげる。こんな痛みは感じたことがなく——いや、正確に言えば経験したことはある。
彼女の体に襲いかかるのは、数多くや痛み。それらは全て経験したことだ。だがさかし。それを一度に全て経験したことはなかった。
体が潰された痛みがした。
首を絞められて窒息した痛みがした。
体を真っ二つに斬り落とされた痛みがした。
全身がバキバキに折れた痛みがした。
水の底に沈められた痛みがした。
体を貫かれた痛みがした。
血を吐いた。体がぐちゃぐちゃに潰れてもいくし、目が涙なようなもので霞んでいく。進めない。もう歩けないし走れない。
けれど、彼女は止まらなかった。ただ、前に這う。この姿はきっと滑稽なのだろう。彼女は悲しいことに生に関しては人一倍貪欲だった。
死にたくない。それが今彼女を支配してる感情である。しかし死ねない。それでいい。
2倍のペナルティを受ける。これがわかった瞬間、彼女は流石に死んだと思った。しかし、彼女は現に生きている。これだけでも動く理由には充分だ。
「くそ、クソクソクソクソクソ!!!」
生きてる。それだけで素晴らしいことなのだ。セイバーはそれがわかっている。どれぐらい動いたかわからないが、もう少しで次のエリアに行けるはず。
「は、ははは!!痛みにもなれて来たぁ!!あと、少し!あと少しで僕は——!!」
彼女、佐々木都は、安堵の息をつく。それと同時に違和感に気づいた。しかしもう、それは遅かった。
「は?」
彼女は確認するまでもなく、一瞬のうちに先ほどの痛みが襲いかかってくる。潰され、斬られ、折られ、窒息して……その痛みを今、彼女は耐えられない。
「ヤダァァァアアァアァァアァァ!!!!」
彼女は悲痛な声をあげる。痛みから逃げる方法の一つは、叫び声を上げることで、しかもこれしか彼女にはできなかった。
血があふれ、激しく身体中から出せる液体を全てだす。助けを求めて伸ばす手すら、もうそこにはなく。ただただ彼女は全てを奪われていく。
「ァァァアアァアァァアァァァァァアアァアァァアァァ……アァァ……ァ……」
少女はやがて動かなくなった。そこに残されたのは、あたりを血で包まれて、全てに絶望した顔を浮かべた只の死体だった。
◇◇◇◇◇
【メールが届きました】
【セイバーとブレイカーが禁止エリアで死亡しました】
【とても悲しい結果です】
【残りの魔法少女は 5名です。頑張ってください】
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