5-9【月が綺麗だけどお茶でも飲む?】
☆ランサー
走る。いつまでも、どこまでも。あの魔法少女を探し求めてだが、姿も何も見えない。
どれぐらい経っただらうが。時計をちらりと見ると、もうすぐ0:00になる。早くしないと、ペナルティが降り注ぐ。
内容は詳しくわからないが、ほぼ確実に言えることはある。それはペナルティを受けたらほぼ確実に死ぬということだ。そんなこと嫌だ。
「ランサーさん!見つかりましたか!?」
「人っ子一人いないね……みんなどこかに隠れてるのかな?」
「そう、ですね……」
バーグラーはそう言って、目を伏せる。探しても見つからない。それならもう諦めるしかないのだろうか。
いや違う。諦めるんじゃない、次に繋がるだけだ。ランサーはそう考え、バーグラーに手を差し出す。
「これは……?」
「ほら、次の地域にワープしたらバラバラになるだろ?だからさ、手でも繋ごうじゃないか!」
ランサーの言葉を聞いて、バーグラーははにかむ。可愛らしい笑顔で、同性なはずなのにどきりとしてしまった。
ギュッとバーグラーはランサーの手を握る。柔らかい。その時ランサーは、この子は少女だと言うことを再確認する。
守られるなんてカッコ悪い。明日からは、あたいがこの子を守ってやる。そんな決意を抱き、握る力を込めた。
だってこの子は暗闇の中からあたいを救い出してくれたんだから。
◇◇◇◇◇
☆セイバー
時計を確認する。時刻はもう直ぐに規定の時間になりそうだ。セイバーは重い腰を上げたゆっくり立ち上がる。
机の上に置いてあった、お茶をグイッと飲み干した。もうとてもぬるくなっていて、はっきり言って美味しくない。
「そろそろ、動かないとね……」
思えばこの短い間にかなりの魔法少女と戦い、そして殺してきたと思う。セイバーの戦闘力自体はそこまでないが、死なないと言う特性を生かして戦うのが、彼女の基本戦法だ。
勿論、痛い。しかし、その痛みに耐えるため、今まで文字通り地獄のような訓練を積んできたのだ。
痛みは耐えれる。首を切られようが、腹を貫かれようが、爪が剥がされようが、毒薬を飲まされようが、全身を燃やされようが。もう耐えれる。
故に死なない。故に無敵。セイバーはこの戦いで優勝することは許されていないが、それでも別にいいと思っている。
空を見上げる。作られているのだろうが、大きく丸く輝いている月が見えた。作り物であるそれを瞳に映し、セイバーは呟く。
「月が綺麗だけどお茶でも飲む?」
その言葉に反応するように、物陰から一人の少女が現れた。彼女はブレイカー。セイバーを殺そうと躍起になってる哀れな少女だ。
手に握りしめている釘バッドを見て、セイバーはため息をつく。また無駄な時間を過ごさないといけないのかと思うと、ヒーラーとアーチャーを殺したのは早計だったのかもしれない。
「で、要件はなに?なにもないなら、僕は早く次のエリアに行きたいんだけど」
「そう。でも残念。あなたの冒険はここで終わってしまうのよ」
「そう。でも残念。君の冒険はここで終わってしまうんだ」
正直面倒だった。死なないのはわかっているが、戦うのは面倒だ。だが、ここで彼女を殺さないと後々さらに面倒になる。
このままだと優勝してしまいそうだ。少しだけにやける顔をなんとか誤魔化そうと口を手で覆う。
さて、ささっと終わらせてお茶でも飲みに行こうか。セイバーは剣を構えて駆け出したのだった。
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