5-5【ふふんふんふんふふふふふふんふふ〜♪】
☆アーチャー
勝つためにはどうすればいいだろうか。
幼いが、今まで数多くの修羅場を乗り越えてきたアーチャーは、この殺し合いもその修羅場の一つだと数えていた。
死なない。そして優勝を狙う。この二つを成し遂げるために、アーチャーは開始当初から一つの作戦を立てていた。
試合終了ギリギリに一位の選手を殺す。これだけで、アーチャーは栄光を手にし願いを叶えることができる。
このままいけば殺す相手はキャスター。逆に言えばアーチャーはキャスター。そしてもしいたらそのキャスターの同盟相手。これだけが、敵になる。
逆に言えば他の魔法少女と敵対する理由はない。いま、ブレイカーについて行ってるのはそれが理由だ。
いざとなれば話は別だが。
「なに私のスキルを知りたいの?」
そのためには情報を集めないといけないのだ。ブレイカーに話を聞き、そのいざとなればのために備えなければ。
「そうね私のスキルはあまり強いスキルじゃないわよカウンターみたいなもんらしいは使ったことないからなんとも言えないけどね」
「…………」
「……無言なのは少しムカつくわね」
ブレイカーはそう言ってアーチャーの頭をぽかんと叩く。アーチャーはジッとブレイカーを見るが、彼女の指に口を抑えられる。
顎をクイッと動かす方に顔を向けると、そこには一人の魔法少女がいた。ふらふらとした足取りで歩くそれを見て、アーチャーは思わず弓を構える。
「ふふんふんふんふふふふふふんふふ〜♪」
「のんきに鼻歌歌って……あれはファイターね大方パートナーが殺されて乱心ってところかしらとにかくここは見つからないように逃げないと……」
ブレイカーのその言葉とともに、ファイターは歩く足を止める。そして機械のようにグルンと首だけを動かし、こちらに視線を向けた。
目と目があった気がする。ニヤリと彼女が笑ったような気がする。
「みーつけた……♡」
声が聞こえたのはきっと、気のせいじゃない。
◇◇◇◇◇
☆ブレイカー
来る。そう確信した瞬間、ブレイカーはアーチャーの手を握り大きく後ろに飛ぶ。それと同時に先ほどまでいたところの床が大きな音を立てて崩壊していく。
釘バットを構え襲いかかってきた魔法少女を睨みつける。彼女はニヤニヤと笑いながら、ゆっくりとこちらに歩いてきた。
「ふふふふ〜♡」
「随分キャラが変わったわね笑顔が可愛い子はモテるらしいけどあんたの笑顔は恐ろしいだけだわ気持ち悪いったらありゃしない」
ブレイカーの言葉に対し、ファイターは小さく笑うだけだった。しかし、すぐに体制を比較しこちらに飛び込んできた!
ただただまっすぐ突っ込んで来る彼女に対し、ブレイカーは横に飛ぶことを選択する。アーチャーは上に飛んで建物の陰に隠れた。
それでいい。ブレイカーはファイターの方をにらみ、釘バットを構える。アーチャーは遠距離で戦いつつ、ブレイカーが戦う。それでいい。
案の定、ファイターはまっすぐブレイカーに襲いかかる。彼女の拳は速度こそ早いが、単調であり、釘バットで簡単に防ぐことができる。
しかし、衝撃で腕が痺れていく。だが、今は引くわけにはいかない。隙を見つけて、一撃与えなければ、勝つことも逃げることもできない。
ブレイカーは腰を低くしファイターの攻撃を避ける。そのまま片手を上げて、彼女の腕を掴んで、釘バットを振り上げる。
顎に直撃した。ごりっと骨が割れるような音が聞こえ、ブレイカーはさらに追撃と言うように腹を突こうとする。
が、それは止められた。
「な!?」
「ううう〜♡」
顎が割れたはずなのに、ファイターはまだ笑っている。それどころか、ブレイカーの攻撃を抑えていた。
そのままバットをファイターは持ち上げる。掴んでいるブレイカーと釣られて上に上がり、なにが起きたのかわからずに慌てた顔になる。
ファイターはブレイカーを投げ飛ばす。体が空を飛ぶ感覚になり、空中遊泳を無理やり楽しむことになった。
一瞬だけ楽しかった。しかし、その空中遊泳は強制的に終わらせれる。ファイターがブレイカーを蹴落としたのだ。
そのままファイターはまるで空中を蹴るように加速する。ブレイカーの首を狙い、足で踏みつけようとしてきた。
ヒュン
ファアターは突然聞こえてきた音に対し、回し蹴りで対処をする。音を出してたのは弓矢。それはファイターの足でへし折れて彼女は少し遠くに飛ぶ。
「はぁ、はぁ……くっ。一旦距離を取らないといけないわねアーチャー聞こえてるなら後で初めて出会った場所に集合ね!」
その声に反応したかわからないが、アーチャーの弓矢はファイターの片目に突き刺さり、その痛みでかファイターはうずくまる。
顎が割れたのに目はダメージが入るのか。そう思ったブレイカーは、今アーチャーが作ってくれたチャンスを生かすため、駆け足で走り出したのだった。
◇◇◇◇◇
☆アーチャー
なにをしてるのだろうか。弓を構えながら、アーチャーは思考する。なんで私はブレイカーを助けたのだろうか。
まだ私にも情というものが残っていたのか。そんな事実に少しだけ驚きの声を上げそうなる。
まぁ。逃げきれたらいい。あの魔法少女と一緒にいるのは、全くと言って苦を感じない。可能なら、殺したくない。
そそくさとそこを立ち去ろうとする。あのファイターという少女。なんとなくわかるが、おそらく勝手に自滅する。
とにかく今は逃げる。ブレイカーと初めて会ったところに行かなければ、彼女と別れてしまう。置いてかれるのは嫌だ。
屋上から、屋根へ。屋根から、屋上へ。このまま飛んでいけば、すぐに会えるはず。アーチャーは少しだけ速度を上げていく。
5個ほどの飛んだ時、一つの影が視線の中に入ってきた。その影は、この街を堂々と歩いている。
目と目が合う。向こうはニヤリと笑い、アーチャーは足が震える。一瞬で間合いを詰めたその影は、ニコニコと笑いながら、アーチャーに向かって口を開けたのだった。
「お茶でもどうだい?」
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